2005/10/9 シカゴ・マラソン
今回は不発も2時間23分台を狙っていた早川
その特徴とは?


 早川英里(アミノバイタルAC)のレース経過や、成績(2時間28分50秒で5位)が期待を下回った理由については、陸上競技マガジン11月号に記事にした。その中でも触れたが、今回の早川は2時間23分台を目標とできる仕上がりだったという。中島進コーチは「今回が初マラソンみたいなもの」と話した。レベルの高い記録を狙うのは今回が初めて、という意味だろう。昨年の名古屋国際女子マラソンはレースの朝、38℃近い発熱があった。それ以外のレースはすべて、暑さの中で行われたホノルルである(シカゴ出場日本選手+ジェンガのマラソン全戦績参照)。

 2時間23分台というのはそれなりの根拠があったはず。練習の様子で判断したのだろうが、詳細はわからない。40km走で2時間20分を切っているという情報があったが、中島コーチ自身は「練習中の記録を言っても仕方がない」と、根拠としているわけではない。ちなみに千葉真子は、旭化成時代の2時間21分台が40km走での最速タイムだったという。
 2時間23分台を目標とできる直接の根拠とはならないが、中島コーチに挙げてもらった早川の特徴は以下のようなものだ。

 まずは、元々の素材として優れている。学生時代、市民ランナー的に走っていたのでスピードに難があると思われがちだが、3年時に1年だけ学連登録をしたとき、日本インカレ5000mで9位になっている。現在の公認ベスト記録は15分51秒*だが、何かのレースに出るため公認記録が必要となり、急いで記録会に出て走ったタイム。練習では15分30秒台で走っているという。
「サッカーをやっている高校生で、陸上競技をやっていれば、という選手はいっぱいいます。早川もそういう素材だったということでしょう」(中島コーチ)
 次に、走る姿勢や体型が「ケニア選手のよう」(中島コーチ)というほど、これまでの日本選手とは違う。今回、初めて早川の走りを見たが、確かに日本人とは異なる前傾姿勢とリズムで走っていたように感じた。写真を見ると、太腿はそれなりに太いが、膝から下はケニア選手のように細い。
 そして、動脈酸素飽和量の数値が優れているという。中島コーチの説明によると、その値が35kmを過ぎると大きく落ちるのが普通だが、早川はその落ち方が少ないのだという。
 何より、トレーニング法に自信を持っている。早川は中島コーチや谷川真理(アミノバイタルAC)が運営する「ハイテクスポーツ塾」で練習を積んでいるが、東大の小林寛道教授の理論に基づいたトレーニング方法。月間走行距離も500〜600kmと、従来のマラソン選手とは違ったトレーニング方法を模索している。

 しかし、今回は結果が出なかった。給水のアクシデントという事情があったにせよ、そのことは真摯に受け止めている。
「終盤、体がまったく動きませんでした。今回は順位よりもタイムが目標でしたから、満足していません」
 次は2カ月のインターバルでホノルルに出場する。2003年に日本人として同大会に初優勝したのが早川。2度目の優勝もあり得るが、注目しないといけないのは、その次のマラソンだろう。
「大阪の世界選手権を狙う」と、昨年の名古屋のときから明言している早川。確かに大阪は、彼女が力を発揮できる暑さが予想されている。


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