2004/10/17
クラブチーム主催のユニークな競技会
かわさき陸上競技フェスティバル
10月16・17日の2日間にわたって開催された第3回かわさき陸上競技フェスティバル。クラブチームのアンビバレンス(会長・桜井智野風氏、事務局長・森泰夫氏)が主催し、通常の競技会とは開催趣旨が若干異なる。その具体的な内容はアンビバレンスのサイト、かわさき陸上競技フェスティバル大会サイトをご覧いただくとして、ここでは、日本のトップ選手が参加した招待種目の様子をレポートする。
男女800 m
筑波大4年生コンビが快勝
竹井が今季4回目の1分49秒台
筑波大の桑城奈苗と今入由記、アコムの満園奈津美が出場し、スタート直後から桑城が1人、ハイペースで飛ばした。非公式の途中計時は以下の通り。
200 m 29秒1
400 m 1分00秒8
600 m 1分34秒9
800 m 2分10秒8(正式計時は2分10秒79)
1500mで4分14秒5の学生歴代2位の記録を持ち、800 mでも今季2分06秒03の好タイムを持つ桑城だが、1人で800 mを押し切ることはできなかったようだ。最初の200 mの力の入れ方から、もう少し速いタイムかと思ったが29秒台。見ている側が後続との差に惑わされたのかもしれないが。
男子800 mは地元神奈川県出身、日本選手権優勝の鈴木尚人(自体学)が最後まで走りきるが、1周目を52秒台で通過するという条件でペースメーカーを務めた。実際の通過タイムは以下の通り。
200 m 25秒1
400 m 52秒9
600 m 1分20秒5
800 m 1分49秒9(正式計時は1分49秒85)
550m付近で日本インカレ優勝者の竹井康彦(筑波大)が鈴木をかわしてトップに立つと、佐藤広樹(福島大)、下平芳弘(早大)の追い上げをかわして逃げ切った。竹井は今季4回目の1分49秒台。2位の佐藤は自己記録に0.21秒届かなかったが、3位の下平は1分50秒25の自己新をマークした。
「(入りが25秒1だったが)200 mを過ぎてペースが落ち着きましたし、25秒台の入りもそれほど速いとは思いませんでした。400 mを51秒台前半で入ったレースも1〜2回は経験がありましたから」
今季はこれで4回目の1分49秒台(5月のゴールデンゲームズ、9月の釜山国際、10月の筑波大記録会)。4月からは中距離の強化にも積極的なアコムに入社する(女子の桑城も)。実業団で続けるからには、世界が目標となる。
「大きいことを言っていいのかわかりませんが、1人でも多く1分47秒のB標準、さらには1分46秒のA標準を突破して、少しでも世界との差を縮めたい。(相乗効果で)みんなで切れれば、みんなで行けますから。決して無理ではないと思います。世界選手権とオリンピックを目指して、まずはB標準の1分47秒を目標にします」
男子走高跳
醍醐が5年ぶりの2m20
好調の要因は“高さ慣れ”
醍醐直幸(東京陸協)が、オーバーな表現をするなら“手を伸ばせば届きそうな”場所にいるギャラリーたちの手拍子に乗り、2m20をクリアした。成功した3回目は、2m23〜25あたりまで身体は浮いていたかもしれない。昨年の日本選手権も制している(2m18)醍醐だけに意外な感じもするが、東海大1年の99年以来、実に5年ぶりの2m20台だった。
醍醐の年次別ベスト
96年(高1) 2m08
97年(高2) 2m19
98年(高3) 2m18
99年(大1) 2m21
00年(大2) 2m10
01年(大3) 2m19
02年(大4) 2m15
03年(社1) 2m19
04年(社2) 2m20
記録を出せる手応えがあったのだろう。今大会の走高跳は醍醐の希望で実施が決定したという。「2m15を5試合くらいで跳ぶことができて、“高さ慣れ”したのでしょう」と醍醐。
日本選手権は8位(2m10)と失敗。「日本選手権後にがむしゃらに跳び込んで」(醍醐)、アジアGP3連戦は全て2m15をクリアした。
「感覚もよくて2m20も間違いなく行くと思いました。あとは、タイミングをとるべきときに上手くとれれば跳べると」
“高さ慣れ”という部分を詳しく解説してもらった。
「日本選手権前は短助走で1m90とか、低い高さで練習しすぎました。日本選手権後は全助走で2m10とか2m15を跳ぶようにしたんです」
大学1年時の2m21は「勢いだけで、何も考えずに跳べた記録」(醍醐)だったが、今回は「こうやれば」という部分がわかって跳んだ記録だという。
「今日の2m20は今までにない感覚でした。国体では最低、自己記録を跳びたいですね」
10月25日の熊谷が面白くなりそうだ。
男子走幅跳
32歳の森長が今季2番目の7m62
気になる来季のプランは?
日本記録保持者の森長正樹(ゴールドウイン)が、藤川健司(筑波大)、今井雄紀(日大)、安部翔太(中大)といった学生勢、田川茂と渡辺大輔のミズノ勢を相手に快勝した。2位の藤川に16cm差の7m62。今季、自己2番目の記録だという。7m66は4月のマウントサックで出した。それが、一昨年のスーパー陸上以来のまともな跳躍だったという(釜山アジア大会は故障で“駆け抜けた”だけ)。しかし、日本選手権は7m42で14位と大敗。
「ハムストリングを痛めて、ズルズルと…。春先は走れていて、アメリカでは踏み切れてもいました。夏もいい練習ができていたのですが、全日本実業団のアップでまた脚を痛めてしまって。先週の試合は流しもやらないで7m55でしたが、2〜3cmのファウルで7m80くらいは距離が出ていました。今日も疲れをとっただけで臨みましたが、1本目で7m62。2本目以降はスピードを出しすぎました」
来年3月で33歳。来年以降のプランはどうなっているのだろう。
「全てがダメだったらあれでしたが、ケガが原因ですから…。今井の専属コーチというのもありますから、あと一冬パートナーとしてやって、もう1年は頑張ります。8mは越えられると思うんですけどね」
世界選手権は? と質すと、「寺野(伸一)が8m20を跳んでいますからね」と、そこまでは執着していないようだ。だが、寺野たち後輩がもたもたすると、ひょっとする可能性も…。
トップ選手を中心とした写真集
クラブチームのアンビバレンスが主催する、特徴のある競技会。今年で3回目の開催。場所は川崎市等々力陸上競技場
人影はさすがにまばらですが、特大スタンドではないので閑散とした雰囲気はなし
走幅跳のピット。左右に設置されている柵まで観客が近づける
招待4種目のうち走幅跳が一番の豪華メンバー。左から森長正樹、今井雄紀、渡辺大輔の日大OB&現役トリオ。最年長の森長が7m62(+0.8)で貫禄を見せた
走高跳もこの柵まで観客が近づける。ギャラリー数を考えると、この位置からの手拍子で正解。醍醐直幸が2m20で優勝
男子800 mに優勝(1分49秒85)した竹井康彦(筑波大)と、来春の入社先であるアコムの平野了コーチ。筑波大の先輩後輩であり、同郷でもある間柄。今年、平野コーチの福岡県記録を竹井が破った
400 m元中学記録(48秒52)保持者の堀越勇介(アンビバレンス)は運営スタッフ
ショートスプリントデュアスロン(100 m&200 m)にはバルセロナ五輪4×400 mR代表だった簡優好(右・横浜教員ク)が出場。森長とは同学年で2人とも89年高知インターハイ優勝者
右から渡辺、簡、堀越の400 mビッグ3が揃った。元高校&ジュニア記録(46秒37)、元学生記録(45秒71)保持者の渡辺高博氏はプレゼンターと陸上競技教室講師を務めた
跳躍系の陸上競技教室講師を務めたのは七種競技アテネ五輪代表&日本記録保持者の中田有紀(栄クリニック)
渡辺氏はトラック種目の陸上競技教室講師。現在はワールドウィングの東京支部所属
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