2004/6/4 日本選手権
全種目三行記事と懺悔 1日目
女子1万mで福士が五輪代表内定、田中&弘山も好走
110 mHは田野中がA標準コンビを撃破
村上は男子やり投最多連勝記録「5」


■男子110 mH
 田野中輔(富士通)が前半からリード。終盤にミズノ・コンビがじりじりと差を詰めたが、2位に0.02秒差の13秒65で逃げ切った。谷川聡(ミズノ)は得意のスタートに失敗してリードを奪えず、今季、明らかに強くなった後半で差を詰めたが、レース後に数えられただけでも6・8・9台目を倒すなど、ハードリングが乱れて力を発揮できなかった。内藤は予想以上の復調ぶりを示し、13秒68と今季初めてB標準を上回った。田野中は予選で13秒63と五輪B標準を突破する大会新。
 今大会最初の五輪代表選手誕生と思われた種目だが、代表選出は6月14日に持ち越された。1週間後にも決められない可能性すら出てきたが、考えられるのは以下の2つのケース。
1)B標準で優勝した田野中を代表に選び、今後A標準を田野中が突破したら、A標準の谷川(と内藤)も代表入りする。
2)A標準の谷川(と内藤)を選び、田野中がA標準を破ったら追加する。
▽懺悔
 田野中をほとんど優勝候補としてはいたが、本当に谷川に勝つとは思っていなかった。昨年、谷川が内藤に勝ったときにも脱帽したが、今年は田野中に脱帽だ。

■男子走高跳
 関東インカレに2m22で優勝している江戸祥彦(東海大)が2m10で2度失敗。ひときわ短い助走から(短距離助走ではない)、3回目に成功する危うい橋を渡った。しかし、2m15をパスすると、2m18は2回目だが跳躍順の関係で一番最初にクリア。優位に立ったかと思われたが、この日、一番体の浮いていた内田剛弘(福岡大クラブ)と久保田聡(順大)も同じ2回目にクリア。
 2m21に上がると内田だけが、足首でバーを落とす惜しい跳躍だったが、江戸、内田とも3回失敗。最終跳躍者の久保田が失敗すると、内田と久保田の優勝決定試技にもつれたが、久保田が3回目にきれいなアーチで成功。決着をつけた。
▽懺悔
 入賞者全員が同記録になったら珍しいが、願い下げでもある。などと失礼なことを書いてしまった。想定していたのは2m15が8人だったが、2m18をクリアした3選手の頑張りで、最悪の事態を避けられた。といっても、2m18で優勝が決まったら五十歩百歩だと思っていたら、久保田が2m21を跳んで見せてくれた。選手の底力を見直した一方、コンディションが良かっただけに、“もうちょっと”の気持ちもしたのは確か。

■男子やり投
 村上幸史(スズキ)が1回目と4回目に77m台、6回目に79m00をマークして快勝。この種目の連勝記録を単独トップに立つ「5」と伸ばした。2位には関東インカレを欠場した山本一喜(中大)が、4回目に74m52の自己サード記録を投げて入った。地元の石破清志(TTC)が72m99と、近年では最高(手元の資料で判明している範囲では、96年以降では最高)の72m99で3位に入った。
▽懺悔
 今季66m99の石破の快投を、誰が予想できただろうか。鳥取開催効果だろう。

■女子1万m
 ワゴイ(スズキ)らケニア2選手が欠場したため、福士加代子(ワコール)の独走優勝は予想通りだった。中盤で後続集団との差が縮まり始めたが、集団の中でも牽制が始まり差は広がり始めた。しかし、残り2000m付近から弘山晴美(資生堂)が集団を積極的に引っ張り始め、その差は再度縮まり始めた。最後の1周で一段と追い上げ、福士に2秒差と迫ったところがフィニッシュライン直前。弘山を追走した田中めぐみ(しまむら)が最後の最後で弘山を0.07秒かわして2位。
 福士が今大会初の五輪代表に内定し、2位の田中の2大会連続代表も確実。弘山もそのレース内容と、2位と僅差だったことから(対して4位とは4秒51の差があった)、3大会連続代表に推されるのではないか。
 弘山同様、3大会連続五輪代表を狙った市川良子(テレビ朝日)はスタート直後の数人の転倒に巻き込まれたのが影響し、途中棄権。日本記録保持者の渋井陽子(三井住友海上)が、事前の情報とは違って参戦したが9位と見せ場を作れなかった。

■女子100 mH
 池田久美子(スズキ)が予選で13秒09と、五輪B標準の13秒11を上回ったが、追い風2.1mで参考記録に。決勝は飛び出した池田を、終盤で金沢イボンヌ(群馬綜合ガードシステム)が追い込んだが、池田が13秒20の日本歴代3位で逃げ切った。
 川上小百合(千葉陸協)と石野真美(日女体大)の千葉県コンビが3・4位。

■女子棒高跳
 今季4m30、4m31と2度、日本新をマークしている中野真実(三観陸協)は3m80から跳び始め、その高さを1回目、4m00を2回目、4m10を1回目にクリア。1週間前に4m35と中野の日本記録を更新した近藤は、水戸国際同様、4m10から跳び始めた。これを1回でクリアし、失敗回数の差でその時点でリード。
 ところが、4m20を中野が1回目でクリアしたのに対し、近藤は2回目と情勢は逆転。しかし、4m30は3回目に近藤が成功したのに対し、中野は3回とも失敗。B標準での優勝で、近藤が五輪代表に一歩前進した。
▽懺悔
 水戸国際の直接対決で勝っていた中野の優勝を予想したが(関西実業団は近藤が勝っているが)、近藤の巻き返しの勢いが勝った。

■女子円盤投
 室伏由佳(ミズノ)が3年連続5回目の優勝を飾った。56m36はパフォーマンス日本歴代4位、自己3番目の好記録だった。

■女子やり投
 三宅貴子(ミキハウス)は結局、故障から回復できず43m82でベスト8に残れなかった。その結果、1位から4位までが1m47差という接戦。4回目に54m48をマークした山本晴美(長野市陸協)が優勝し、自身のジュニア日本記録を54m13と更新した吉田恵美可(京産大)が2位。
▽懺悔
 こうなる結果は覚悟した上での、三宅を優勝者に予想した。他にオリンピックを狙える選手層の薄い種目ということで致し方なし。フィールド種目全般に言えることだが、「この選手以外は、期待してもこのあたりが限界」という状況を脱してもらいたい。

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