2004/2/7
東京国際マラソン直前特別企画
ワイナイナvs.ジェンガ
何から何まで対照的なケニア2選手が
アテネ五輪代表を懸けて初対決


記者会見時のツーショット

◆詳細記事
 エリック・ワイナイナ(コニカミノルタ)とダニエル・ジェンガ(ヤクルト)。在日ケニア選手でマラソンで実績を残しているビッグ2である。ケニア・ニャフルル市出身の同郷選手で、ともに滞日年数も長く(日本語を流暢に操る)、“クレバーな選手”と評されていることも共通点だ。ところが、その競技歴・マラソン歴となると見事なまでに対照的なのだ。
 ワイナイナがケニアの高校を卒業後、コニカミノルタ(当時コニカ)に1993年に入社したのに対し、ジェンガは仙台育英高入学のために1992年に来日。流通経大を経て、99年にヤクルトに入社した。
 ワイナイナは来日当初からマラソンを目指し、入社2年目に北海道・東京とマラソンで連勝し、早くからマラソン選手として頭角を現した。対するジェンガは高校・大学時代にはトラックと駅伝が中心。高校3年時(94年)には3000mSCで当時のジュニア世界新記録をマークし、翌95年には福岡ユニバーシアードに同種目で優勝した。全日本実業団駅伝の成績も、表1のように対照的である。

表1 ワイナイナとジェンガの比較
ワイナイナ   ジェンガ
ケニア・ニャフルル市 出身 ケニア・ニャフルル市
30歳 年齢 27歳
175cm・59s 身長・体重 176cm・61s
1993年 来日 1992年
1万m28分40秒60 トラック 1万m27分51秒83
高3時に3000mSCで8分19秒21のジュニア世界記録(当時)
全日本実業団対抗駅伝に6回出場も区間7位が最高成績。ガソ入社後は出番なし 駅伝 全国高校駅伝初の3年連続区間賞。全日本実業団対抗駅伝では区間賞3回、ごぼう抜き20人の大会最多記録保持者
2時間08分43秒(02年東京) マラソン最高タイム 2時間06分16秒(02年シカゴ)
日本国内のマラソンで成功し、五輪2大会連続メダリストに 傾向・特徴 日本国内のマラソンでは失敗続きも、シカゴで02・03年と2回連続快走

 マラソンとなるとさらに、2人の違いが興味深い。
 ワイナイナは表2のように日本国内のマラソンで優勝し、ケニア代表として五輪2大会連続メダリスト(アトランタ五輪銅、シドニー五輪銀)となった。しかし、記録を出すチャンスに恵まれず、2時間10分を切ったのは自己ベストの2時間08分43秒をマークした2年前の東京国際1回だけである。2時間10分台が5回あることから、機会があればそれ以上の記録を出す力があると推測できるが、その記録でこれだけの実績を残すのだから、勝負強さを示しているともいえる。
 一方のジェンガは表3のように、マラソンに取り組み始めた頃は苦しんだ。初マラソン(高校卒業直前に小さな大会で走ったもの)はともかく、2回目以降は失敗続き。02年の別大2位も、30kmまでは1時間30分34秒で独走しながら、S・コリル(ケニア・03年ベルリンで2時間04分56秒の世界歴代2位)に逆転されての2位。30kmまでの5kmスプリットは15分01秒だったが、35kmまでは16分01秒もかかってしまった。2カ月前の福岡国際マラソンで失敗(2時間20分53秒で17位)したことを早めに払拭するため、短いインターバルで出たのがスタミナ切れの要因で、それまでの失敗原因とは異なったのかもしれない。
 ジェンガは同じ02年10月のシカゴ・マラソンから変わった。2時間06分16秒と自己記録を5分以上も縮めて2位(優勝はハヌーシ・米国、3位の高岡寿成に同タイムで競り勝った)。翌03年もシカゴで2時間7分台と好走。国内のマラソンとは打って変わって、海外の高速レースで本領を発揮し始めた。一方のワイナイナは海外では、オリンピック以外はこれという結果を残していない。

表2 ワイナイナのマラソン全成績
月 日 大会名 成績 記 録
1994 8.28 北海道 1 2.15.03.
1995 2.12 東京 1 2.10.31.
1995 8.12 イエテボリ世界選手権 18 2.19.53.
1996 3. 3 びわ湖 2 2.10.37.
1996 8. 4 アトランタ五輪 3 2.12.44.
1997 2. 9 東京 15 2.16.42.
1997 8.31 北海道 1 2.13.45.
1998 12. 6 福岡 dnf 27km
2000 4. 9 長野 1 2.10.17.
2000 10. 1 シドニー五輪 2 2.10.31.
2001 2.18 東京 1 2.13.38.
2001 4.22 ロンドン 15 2.15.43.
2002 2.10 東京 1 2.08.43.
2002 7.28 英連邦 4 2.13.27.
2002 12.01 福岡 3 2.10.08.
2003 4.20 長野 1 2.12.00.
2003 8.31 北海道 1 2.13.13.

表3 ジェンガのマラソン全成績
月 日 大会名 成績 記 録
1995 2. 5 上尾 1 2.20.28.
1997 2. 9 東京 dnf
1999 12. 5 福岡 10 2.11.49.
2001 3. 4 びわ湖 dnf
2001 12. 2 福岡 17 2.20.53.
2002 2. 3 別大 2 2.12.43.
2002 10.13 シカゴ 2 2.06.16.
2003 10.12 シカゴ 3 2.07.41.

 とはいえ、国際的な実績という点ではワイナイナがジェンガを上回っている。ケニア本国での評価もワイナイナが上と推測される。ケニアにおいてさえ(現役マラソン選手の)五輪連続メダリストは他にいないが、2時間06分30秒未満の記録を持つケニア選手は6人いるのだ。現時点では昨年のベルリンで2時間04分55秒の世界最高を出したポール・テルガトがアテネ五輪代表に決定済みで、残りは今後のマラソンの結果次第。ワイナイナは東京で“勝負強さ”が健在であることを示せば可能性が高まるが、ジェンガが代表となるには、そのワイナイナに今大会で勝つことが最低条件だろう(“ケニア代表を懸けて”と見出しにしたが、正確にはこの大会の結果だけで決まるわけではないので要注意)。
 東京のレース2日前会見のジェンガの発言からも、以上のことが裏付けされた。
「ワイナイナさんと走るのが一番楽しみ。2年前までは日本でなかなか結果を残せませんでしたが、一昨年アメリカで2時間6分台を出し、去年も2時間7分台で走ることができました。タイムには満足していますが、日本で、応援してくれる人の前でいい走りをしたい。会社もコースから近いですし。私も2回連続でいい走りをしていますが、ワイナイナさんと比べたら、ワイナイナさんが上です。まず、この大会で勝つことです」

 クレバーで真面目な選手という評価は共通しているが、キャラクターは違う印象がある。それを示すエピソードの紹介は別の機会に。また、2人のマラソン歴がここまで対照的となったのは、走りのタイプや練習方法の違いに起因していると思われるが、現時点では仮説段階。今後の取材を通じてもう少し確証が得られたら、記事にできると思っている。

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