2005/1/1 箱根駅伝前日企画
往路は主力4選手を投入した東海大か?
12月13日の共同取材時のコメント


伊達秀晃(1年)
「全日本で試合の感覚を取り戻して、上尾の記録につながった」
 11月21日の上尾ハーフマラソンで1時間02分08秒のジュニア日本最高で優勝。2位の岩井勇輝(日大4年)に51秒もの大差をつけた。
「自分の中では大学に入ってから一番、印象に残っているレースです。目標は中井(祥太・3年)さんの記録(1時間02分14秒)でした。5kmが14分41秒で、次の5kmが14分30秒台だったと思います。15kmはわかりませんが、15km過ぎから岩井さんを離して独走になりました。自分のリズムで走っていたら、離れてくれた感じです。上尾はロードでしたけど、トラックの感覚がまだ、残っていました。全日本大学駅伝の2区は故障明けのレースで、あまり調子も良くありませんでしたし、試合の感覚も鈍くなっていました。そこで試合の感覚を取り戻して、上尾につながったのだと思います」
 尊敬するのは2学年先輩の中井。大牟田高時代、箱根駅伝にまったく興味のなかった伊達が、2年前にたまたまテレビをつけたら、箱根の5区で区間賞を取った中井(当時1年)が走っていた。
「背が自分と同じように小さいのに、ハーフマラソンや箱根駅伝でしっかり走られていた。(実際に同じチームになって)面白い人です。色々な面で。何より、人よりも努力をされています。真剣に。ポイント練習以外にも、個人的に補強をされたり、いろいろやっています」
 ゴールデン世代と呼ばれる1年生のなかでは、日体大の北村聡を最も、ライバル視している。その北村が1万mで28分12秒81を記録会でマークした。
「すごいなあと感じましたし、僕も出したい。何より、勝ちたいという気持ちが強くなりました。自分と同じ小さい選手が、同じ学年で頑張っているのですから、一番負けたくありません。(上野裕一郎・中大にも)同じ年代ですから、負けたくはないです。自分の特徴は後半の粘り。上野や松岡(佑起・順大1年)はスピードがありますが、そういった選手にも勝ちたいと思います」
 伊達の武器は関東インカレなどでも見せた、思いきりのいいスパートではないかと思い質問してみると……(後略)。

大崎栄コーチ
「残りの10日で、練習を自信に変えられるかどうかが、勝負」
 この共同取材日に、大崎コーチが盛んに口にしていたのは、4年生が練習の力をレースで出せていない、ということ。
「夏休みを利用して、いくつかの実業団チームの合宿に振り分けて、参加させてもらいました。自分たちがやってきたことと全然違うと、選手たちが感じてくれたのは良かったと思います。それなりのプラスアルファがあった。
 伊達は入ってきた時点でタイムが違いましたが、周りの1年生たちがいい方向に影響が出ています。上級生も気づいて、しっかりやってほしいのですが。意識していないといったらウソでしょうから、だったら何を行動するかを考えて欲しい。
 4年生はまだ、レースで力を出すやり方がわかっていないようです。守りに入ってしまっている。選ばれて走ることが第一条件かもしれませんが、走って何をやれるかという部分ができていない。練習と試合が噛み合うような練習を用意してやらないと。残りの10日で選手に***の気持ちを持たせたい。練習を自信に変えられるかどうかが、勝負かな」

越川秀宣(4年)
「全日本の4区は積極さがなかった」
 キャプテンの越川は日本インカレ3000mSC優勝、出雲では3区で区間4位。全日本は4区で区間4位で、同じ4年生の田中宏樹(駒大)と高橋憲昭(中大)には約1分差をつけられてしまった。大崎コーチから4年生の消極性について指摘があったので、その部分が話題となった。
「去年の4年生と比べると、消極的だったかなと思います。今、考えると、自分の意見をしっかりコーチに伝えるべきでした。レースも、去年の4年生は箱根で区間賞を取るくらいでしたが、自分は出雲・全日本と消極的なレースをしてしまった。全日本の4区で高橋君に追いつかれたとき、1kmくらいはついたのですが、上りの途中であきらめてしまいました。積極的な気持ちがなくて、弱かったなと反省しています。練習してきたことを信じて、走ることが必要だと感じました。自分のペースを守ることも必要ですが、ガンガン行く気持ちも忘れてはダメなんです」

丸山敬三(3年)
「1区は好かれない区間だからこそ、自分が行く」
 箱根駅伝でも予想通り1区にエントリーされた、1区のエキスパート。しかし2年前、1区走者としてのスタートは決して良くはなかった。箱根で1区に起用されたが、エース格の米田(現コニカミノルタ)の代役で区間12位。
「スローペースで、『どこで、誰が仕掛けるんだろう、5kmかな、6kmかな、7kmかな』とずっと緊張していましたね。18kmでいざレースが動くと、気持ちもグチャグチャになって、対応できませんでした」
 2年時は駅伝に出場できなかった。
「自分が走らなくても、チームの結果は良かった。エースだったら何か言ってもらえるのでしょうが、自分が走らないくらいでは、誰も、何も言ってくれません。(1年で箱根に出て)調子に乗っていたんでしょう」
 しかし、今季は出雲の1区で区間2位、関東勢ではトップだった。全日本では佐藤慎吾(駒大3年)のロングスパートで一気に引き離されたが、京産大・井川重史とともに徐々に差を縮め、12秒差の区間3位。
「最初の5kmからきつかったですね。14分30秒くらいかと思ったら、実際は14分50秒。最低でも10kmまでつかないことには、話になりません。10kmでは佐藤に、急にスパートされましたが、こっちまで一気につめたらダメだと思って、徐々につめていきました」
 1区はその重要度、緊張度から敬遠される区間でもある。
「あまり好かれない区間ですよね。大きく遅れたら絶対にいけませんし、2区以降で遅れたら、ちょっとの遅れでも1区で流れが悪くなったと言われる。そういう区間だからこそ、自分が行きますと言えるようにしたいんです」
 この考えの裏には、「人の痛みがわかる人間になりたい」という、丸山の競技観、人生観があるのだが、そのあたりの話は1年後、丸山が4年生になるまで取っておこう。

一井裕介(3年)
「“往路のつなぎ”の走りをしたい」
 前回2区で区間3位と好走した一井だが、自身の評価は低く、今回も2区に意欲的というわけではなかった。
「2・3・4区のどこかで、“往路のつなぎ”の走りをするのが目標です。仮に2区を走ることになっても、“つなぎ”ですね。花の2区といっても、そこがゴールじゃないんです。前回は、周りが速いなかで、惑わされずに自分の走りをしたいと思っていました。しかし結果は、区間3位といっても、4位5位とは数秒差しかありませんでした。もうちょっと頑張れば、差を開けられたと思います」
 今季は出雲7区、全日本8区と、ともに最長区間のアンカー。出雲で区間7位で順位を1つ、全日本では区間10位で順位を3つも落としてしまった。大崎コーチは「一井の“俺がなんとか”という焦りに気づいてやれなかった」と言う。「オマエ1人でやらなくてもいい。本来の走りをすればいいんだ」とアドバイス。それで肩の力が抜け、上記のような「つなぎでいい」というコメントになって表れたのだろう。
「東海大はいつも、3・4区で流れが悪くなるんです。1・2・5区はけっこう走れるのですが。3・4区を少しの差で乗りきらないと、逆転は無理ですから。そこを強化すれば、勝機も出てくると思うんです」と一井。
 11月下旬に東海大の多くの選手が上尾ハーフに出たが、一井は「スピード感覚を取り戻そう」という意図で、日体大記録会の1万mに出場。28分58秒19の自己新をマークした。一井に言わせれば“つなぎ”かもしれないが、東海大の4区は“攻め”の区間となるのではないか。


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