2004/12/4 福岡国際マラソン前日
福岡国際マラソンを楽しく見るためのキーワード

@ 山梨学大

 今大会の招待選手に山梨学大OB3人の名前がある。
尾方剛(中国電力)   1973年5月11日生まれ
大崎悟史(NTT西日本)1976年6月4日生まれ
尾池政利(大塚製薬)  1979年3月5日生まれ

 なんでも箱根駅伝を尺度に使うのはどうかと思うが、箱根駅伝の成績は以下の通り。
尾方:94年(2年時)10区区間1位(山梨学大優勝)
大崎:98年(3年時)10区区間1位(山梨学大3位)
99年(4年時)10区区間2位(山梨学大6)
尾池:98年(1年時)2区区間12位(山梨学大3位)
00年(3年時)9区区間12位(山梨学大9位)
01年(4年時)9区区間5位(山梨学大9位)

 一番のエース区間である2区を尾池が1年時に走っているが、代役として急きょ、出場区間が変わったため。尾方は高校時代に国体1万m2位、大崎もインターハイ1500m5位とエリートと言われる存在ではあったが、学生時代にスーパーエースと言える選手ではなかった。
 そういった点を踏まえて、大崎は「3人とも苦労をしていますね」と、話している。2年時の箱根駅伝優勝後は調子が上がらず、ストレスで脱毛症になった尾方の話は有名だし、大崎もずっと、フルタイム勤務後の練習で頑張ってきた。大崎もそうだったが、尾池も「キャプテンで苦労したはず」(大崎)だという。
「3人とも卒業後も伸びていますね(招待日本選手マラソン全成績参照)。苦労をしたのが今になって、実を結んでいるのだと思います」と大崎。「尾方さんとトラックでは何回か走っていますが、マラソンでは初対決。相手が先輩でも負けたくないですね」
 尾方の絶好調が伝えられる今回、山梨学大OB間でトップを取ることが、世界への道が開けることになる可能性も高い。

A ベルリン

 03年のベルリンはポール・テルガト(ケニア)が人類初の2時間4分台、2時間04分55秒の世界最高をマークした記念碑的なレースだった。しかし、同じレースに出場していた3人が、1年2カ月後の今回、福岡で再度び一緒に走る。
 まずはサミー・コリル(ケニア)。ベルリンではテルガトのペースメーカーを務めたが、最後まで走りきって2時間04分56秒。フィニッシュ前でテルガトがコースがわからなくてペースダウンするアクシデントがあったとはいえ、1秒差の2位と健闘した。
「練習内容はベルリンやロンドンと同じかそれ以上。体調も良好だ」と、共同会見では自信を見せた。ベルリンではペースメーカーということで、気軽に走れたのではないか、という意見もあるが「ペースメーカーはリラックスするというより、むしろ神経を使う」と反論する。
「1km3分ペースで引っ張るのは神経を使うし、リラックスできるというよりも大変と言える。普通に走っていたら勝てたかもしれない。トレーニングが上手くできたことが、記録に結びついたのだろう」

 ベルリンには大崎悟史(NTT西日本)と梅木蔵雄(中国電力)の2人も出場していた(招待日本選手マラソン全成績参照)。2人ともコリルらの先頭集団に果敢に付き、大崎は中間点手前で、梅木も24km付近で引き離されてしまった。しかし、マラソン転向に苦しんだ梅木は初のサブテン(2時間09分52秒で7位)となったし、大崎は後半崩れて2時間12分08秒で12位だったが、スピードの必要性を再確認した。11月末の日体大長距離競技会で28分34秒63の自己新をマークし、翌年2月の東京国際マラソンにつなげていった。
「ベルリンでは半分までしか付けず、力の差を感じました。そのときよりも力を付けて挑むことができるので、勝負するのが楽しみです」と、大崎は目を輝かせた。

B 防府

 国内3大マラソン(福岡・東京・びわ湖)よりランクは落ちるが、近年、新人やレベルが若干下の選手たちの登龍門となっているのが、12月後半に行われている防府マラソンである。その防府マラソンをステップとした選手が、今年の福岡には多い。
 ヌグセ(エチオピア)は01年、02年と防府を連覇。02年には2時間08分16秒の自己ベストをマークした。初マラソンの00年上海優勝、03年には廈門優勝と、やや格下のレースを主戦場としていたが、昨年の福岡でメジャー大会初制覇を目指した。しかし、2時間08分21秒で5位。今年4月のボストンも5位と、世界のトップを相手には、なかなか勝てない。今回、福岡でどんな結果を残せるか、注目度の高い選手である。

 大崎悟史(NTT西日本)と梅木蔵雄(中国電力)も、防府がステップになった。ともに02年大会に出場し、大崎が2時間09分38秒でヌグセに次いで2位。梅木は2時間14分50秒で5位。
 大崎は自身初のサブテンで、フルタイム勤務の環境でも、勝負をしていける自信を得た。梅木は防府がマラソン4レース目。結果を出せずに、自身のマラソンへの適性に不安を感じていた時期。2時間14分台は「ギリギリ、マラソンをやっていける線」(坂口泰監督)だったのである。次のレースの03年ベルリンで、自身初のサブテンに結びつけた。

 実は、防府をキーワードとしたのには他にも理由がある。防府を拠点とする選手も数人、今回の福岡に出場を予定しているのだ。
 01年防府で2時間13分44秒をマークして4位となった伊藤健太郎は、協和発酵防府の所属。九州の関係者によれば、一風変わったフォームで走るらしく、一見の価値ありとのこと。同じく01年防府6位の三浦寛司(大野郡陸協)は、以前は防府に本拠地を置く鐘紡で走っていた選手。鐘紡在籍中は2時間20分が切れなかったが、大分に戻ってから力を伸ばし、防府マラソンで第2の故郷に錦を飾った形に。
 さらに、元鐘紡の早田俊幸も今大会に参加予定だったが、本日(4日)、残念ながら欠場となった。

C レース連続

 ここまで読んでくれば、(AとBから)鋭い読者はおわかりのはず。02年12月の防府と03年9月のベルリンを、大崎悟史(NTT西日本)と梅木蔵雄(中国電力)の2選手が、ともに走っている。そういえば、今年の東京国際マラソンでは、ともに五輪代表を狙っていた。さらにさらに、02年2月の香港マラソン(アジア選手権か?)にも一緒に遠征していた。つまり、過去4レース同じマラソンを走っているのだ(招待日本選手マラソン全成績参照)。
「嫁さんから、また梅木さんと一緒なの、と言われました」と大崎。
「1回しか勝っていないんですよね」と梅木。
 5回連続同時出場の結末はいかに。

D 年前…

 外国招待選手のウアディ(フランス)の経歴を調べていたら、5年前、99年の福岡国際マラソンで2位になっていることがわかった。そのときの上位成績は以下の通り。

1)2.07.54. G・アベラ(エチオピア)
2)2.07.55. M・ウアディ(フランス)
3)2.08.40. V・リマ(ブラジル)
4)2.09.09. 小島宗幸(旭化成)
5)2.09.36. 森下由輝(旭化成)
6)2.10.10. 国近友昭(NTT西日本)
7)2.10.38. 早田俊幸(ユニクロ)

 ウアディに1秒差で勝ったアベラはシドニー五輪金メダル、ウアディが破ったリマは、アテネ五輪で一躍、時の人に。6位の国近もアテネ五輪代表となり、早田は今回マラソンに復帰となるはずだった(本日、欠場が決まった)。

 35歳のウアディにとって、今回が5年ぶりの福岡。元々はモロッコ出身で、95年に26歳で渡仏した。「走って給料がもらえ、フランス国籍も取れる」と、同国の外人部隊に入隊した。初マラソンで2時間9分台をマークし、5年前の福岡の記録はフランス記録だった。
 02年に除隊し、完全なプロ・ランナーに。しかし、ひざを故障して03年に手術に踏み切った。復帰戦の今年4月のボストンは途中棄権。思い出の福岡が再起の舞台となるか。

 なお、5年前の福岡にはアトランタ五輪金メダルのチュグワネ(南アフリカ)も出場し、2時間17分01秒で26位。その2つ前の24位(2時間15分22秒)だったのが、初マラソンの尾方剛(中国電力)だった。今回、有力優勝候補に挙げられている尾方は「苦しかったことしか覚えていないですね」と、当時を述懐した。


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