2004/7/16 陸連短距離合宿
末續が100 m優先を公表
「目の前の100 mをどうやるかを重視して、200 mに出るのは4×100 mRにも必ず出られる(確証がある)とき。100 m後の状態次第では、4×100 mRだけになります」


末續 …………100 mが先に行われるので、それに集中しようということです。200 mは100 mが終わってみて、状態が良かったら出ますが、今回は4×100 mRを絶対に走りたいと言うことで。
Q.全米選手権で9秒91も出ています。あえて、強敵の多い100 mで勝負しようというのは?
末續 ヨーロッパに行ってわかったのですが、いくら9秒台と言っても、一緒に走ってみないことにはわかりません。勝負ですから。
Q.目標は?
末續 目標というか、黒人選手のなかに日本人が1人だけ、という光景を僕自身、見てみたい。やっぱり、100 mは“華”ですから。それに、(今年)取り組んできたことを出す場にもなります。
Q.特にこれからの1カ月ですることは?
末續 一日一日がものすごく大切なんですが、日々追い込んで、今日の朝みたいに発熱することのないよう、そういうことに気をつけてやっていくことと、その上で、楽しみながら練習することを心掛けたい。
Q.スタートの3・4・5歩目と最後の10〜15mが、ヨーロッパから帰国後の課題ということですが。
末續 そこを徹底的にやっています。正直、レースをやってみないとわからない部分もありますが、やり込んでいく自信はありますし、その自信を生かしたい。
Q.今年取り組んでいる“だらー”っとしたスタートの考えが、少し変わった?
末續 力を使わないという部分はあまり変わりません。ヨーロッパに行って軽くスタートして、**************オリンピックでは勝負できないと、ちょっと改良をしています。
Q.200 mはそのときの状態ということですが、4×100 mRには必ず出る?
末續 もちろん、リレーには絶対出ます。今回は最後までキチンと出て、帰国するのが目標です。まずは、目の前の100 mをどうやるかを重視して、それから200 mです。200 mに出るのは、4×100 mRにも必ず出られる(確証がある)とき。100 m後の状態次第では、4×100 mRだけになります。
Q.全米選手権はチェックしていますか。
末續 していないですね。100 mは初めての種目だし、(今年のヨーロッパ・グランプリで)一緒に走った選手がいるわけでもない。目標の選手は色んな国にいます。
Q.100 mでオリンピックに出るのは、子供の頃からの夢だった?
末續 はい。小さい頃、外人が200 mを走るのを見て速いと思ったわけではありません。100 mで世界記録を出しているのを見て、速いと思った。そういうのを見て僕も、と思ったわけです。だから、どうしてもやりたかった。
Q.(質問不詳)
末續 すべてにおいて、今年やってきたことを試したい。
Q.オリンピックで一番の武器となるものは?
末續 ヨーロッパで試合をして、けっこう変わったこともあるんですね。メダルを取りたいとか、ファイナリストになりたいとか**************ではなく、この選手と走りたいとか、もっとシンプルな気持ちで臨めるようになりました。ある意味、野性で臨もうとしている点が武器です。
高野進コーチ 捕捉しますと、100 mでヨーロッパの試合に出て、喜びを痛感しました。それと同じようにオリンピックを楽しみたい、勝負をしたいと思えるようになった。その気持ちが武器だと思います。本人、私、日本人の夢を背負って100 mに挑戦したい。本人が一番、楽しみに思っているんじゃないですかね。シリアスに「100 mか、200 mか、うーん」とか考えるのでなく、シンプルに100 mを楽しみたいという言葉が、普段の会話の中で出てきました。ただ、リレーへの責任がありますから、それはきっちり果たさないといけません。
Q.最後にもう一度、目標は?
末續 去年、200 mで「メダル、メダル」と目標にしましたが……なんでしょうね、目標は。みなさんがやって欲しいと思うことです。たくさんあるので、ありまへーん。

高野進コーチのコメント
「200 mの方が安全と思ってらっしゃるのでしょうが、彼の中では100 mをずっと準備してきて安全という感覚」


高野 100 mに出る。4×100 mRにも出る。200 mは向こうに行って、そのときの状態を見て判断する。みなさんは200 mの方が安全と思ってらっしゃるのでしょうが、彼の中では100 mをずっと準備してきて安全という感覚だと思います。
Q.この構想はいつからあったのですか。
高野 パリの200 mを走った後からです。翌年のゴール設定をどうするかを考えたとき、今回(パリ)は200 mで結果を出せたが、100 mをどうとらえるか。本人には100 mを走りたい気持ちがある。200 mはわかってきたけど、100 mはまったく知らない世界だった。それをどうするか。
Q.2年前、高野さんはアテネで画期的なことをやりたいと話していましたが、それは昨年、前倒しできたということになりますか。
高野 3位に入るとは思っていませんでしたから。前倒しというか、決勝に残ることと、決勝に残って勝負することの、2段階になると思っていました。本人の中ではずっと100 mという気持ちがありましたし、200 mで守りに入るよりも、新しいことに挑戦していきたい年頃ですから。メダルの(可能性の大きい)方を、という考えもありますが、もう少し大きい考えです。100 mの8人のファイナリストの中に日本人が入る、黒人ばかりのところに1人そうでないのが入る。本人が客観的にそのシーンを想像して憧れた。それを自分ができるかもしれないと思ったとき、みんなが憧れていることを達成できるかもしれないと敏感に感じ取ったのでしょう。本人がそこに立てる手応えを感じた。でなければ、挑戦しないと思います。
Q.ヨーロッパで結果が良くなかったら、それは違っていた?
高野 それはないと思いますが…。勝負事ですから、戦意喪失をするような結果だと、厳しかったかもしれません。しかし、地味な結果ですけど、マニアックな期待を胸に秘めて帰って来られましたから。もっとああいった連中とやりたいと。帰りの飛行機の中で課題を話して、坂だったらこんな坂をやろう、などとパッと浮かびました。それで休まずにここまで来て、今日まで引っ張って明日は休みと考えていましたが(発熱してしまって)。でも、発熱はよくあること、日常的なことです。
Q.ザグレブでもゲーツヘッドと同じような内容で終わっていたら?
高野 100 mはウォーミングアップとして出て、200 mで勝負となったかもしれませんが、そういうことは一度も考えませんでしたね。その質問を受けると、どうかと考えますが。ザグレブがオリンピックの2次予選レベル。そこで2位になって、準決勝を真ん中のレーンで走って、決勝にと。しかし、一歩間違うとゲーツヘッドのようになりますから、引き締めないといけません。でも、ゲーツヘッドの後も落ち込まず、ポジティブでした。ザグレブが良くなくても、100 mを楽しむモチベーションはできたと思います。仮に私が自信喪失しても、彼がポジティブでやると決めたら、やるんじゃないですかね。
Q.全米で9秒台が4人出ていますし、去年よりも100 mのレベルが上がっていますが。
高野 大阪とヨーロッパ2試合、グランプリを走りまして、ザカリ(ガーナ)も言っていましたが、末續があと2〜3戦すれば記録はもっと伸ばすことができたと思います。そこまでやりこなそうとは思いませんが。1次2次予選、準決勝で体の切れが**********、200 mよりもう少し調整が必要かもしれませんので、仕上げていかないといけません。
Q.100 mと200 mでは違いが出てきますか。
高野 練習はほぼ同じですが、ボクシングで言うなら200 mは12ラウンドあって後半勝負ですけど、100 mは2ラウンドか3ラウンドから勝負になる。スタートの一歩めからかなりの集中が必要になります。200 mは(差がある状態のスタートで)2〜3歩失敗しても、それほど気になりませんが、100 mは最初から。(それでスタートで力を使いすぎないように“力を使わない”スタートに改良して)春先は5割、2本に1本の成功率でしたが、日本選手権の頃は8〜9割にまで高くできました。ヨーロッパから帰国後はさらに(スタートを)改良していて、今は4回に1回の成功という状況です。
Q.3・4・5歩目の変更は午前中にお聞きしたように“足の置く位置”変えて、トルクの大きな力を伝わりやすくするということで、今季のこれまでと違って“力を入れる”ということではないと解釈していいですか。
高野 基本は一緒で、マイナーチェンジしたわけです。重力やその反力を上手く利用して、スピード曲線(の最大スピード)を維持しようという基本線は同じです。足の付き方やタイミングを変えて、太いトルクになるようにして、ギア比を変えるような変更ですね。ガツガツ行こうということではありません。
Q.9秒台が出る可能性は?
高野 記録を狙っては走りません。結果として出ることはありますが。決勝進出を狙っている選手はみな9秒台ですから、その力がなければ残れません。決勝に残る力を持って2次予選、準決勝と戦えば、結果的に9秒台は出ることになります。あくまで順番。結果的に10秒を切れば、日本選手として画期的なことではあります。


寺田的陸上競技WEBトップ