2004/8/1 2004スプリントチャレンジカップIN山梨
為末、400 mで47秒16、大学3年以降では自己最高
のレース後にアテネ戦略の一端を披露


「3位に入ることや、サンチェスに勝つ戦略を考えるのは、この3年間なかったことですからね。手応えがあるってことです」
●スプリントチャレンジカップの走りについて
 きつかったですね。スタート直後のところで、もっとすごく(スピードが)出るかな、と思いましたが(いまひとつで)、その後は凡レースでしたね。フロートみたいなレースになってしまいました。(山口に)付いていけるところまで、と思いましたが、(陸連合宿で)冬に一緒に練習して、前半型にしているレース展開はわかっていましたから。
●パリ・ゴールデンリーグ
 ローザンヌ(48秒63で3位)は800いくつかの標高ですし、トラックの硬さもあります。その点、パリは昨年、世界選手権の準決勝でボコボコにされたスタジアムでもあります。その選手たちを相手に3位というのは、すごく自信になりました。サンチェス(ドミニカ)とは毎回0.6〜0.7秒差。最後のパリでは、10台目を一緒に越えることができました。さすがに、そこからは踏ん張れずに差が開きましたが、これで本番では、10台目まで世界一で行ける自信がつきました。今季初めてですね、10台目まで行けたのは。100%じゃありませんが、イメージしたことは全部できました。まだ350mHですが、残り50mは精神と根性でなんとかします。
●ヨーロッパを転戦しての手応え
 タイムはどこまで伸ばせるかわかりませんが、順位は想像しやすい結果でした。ビデオを見てわかったことですが、サンチェスといえども先行されるとハードリングが乱れます。先行した選手を見ますからね。早めに、もう5m先にいられたらいいのですが。(オリンピックではサンチェスより)外のレーンにいるのもいいですけど、内側のレーンで隠れていて、(ホームストレートで)驚かすのもいいかも。決勝に残る戦略は考えていましたが、こうやって3位に入ることや、サンチェスに勝つ戦略を考えるのは、この3年間なかったことですからね。手応えがあるってことです。
●ライバルたちについて
 95%、サンチェスが勝つと思います。2位に入る可能性のある選手たちと、勝ったり負けたりですね。ローリンソン(英)とハーバート(南アフリカ)とカーター(米)と。フランスの奴(Keita Naman )には勝てると思いますが。サンチェスからは「良くなってきたな」とか声をかけられて、余裕を見せられてしまいましたが、いつか必死で僕を追い抜く顔や、スタート前に緊張している顔を見てみたいですね。

「エドモントン以上に前傾姿勢をとるためには、よっぽどトランス状態にならないと」
●高校時代にインターハイ(46秒27で優勝)、世界ジュニア(46秒03で4位)、地元国体(45秒94&49秒09の2種目ジュニア日本新)と結果を出し続けたことは、今のやり方と同じだったのか?
 高校のときは緊張はしましたが、追い込まれたあれはなかったですね。トレーニングを見ても、そのくらい想定できるほど速いタイムでできていました。魂で行った感じがあるのはやはりエドモントンですね。オリンピックはそれが、一番適用しやすいと思っています。サンチェスにとっても、4年に一度の舞台。オリンピックは心が揺れやすい場だし、ハードルを引っかけないとも限らない。腹を据えて勝ちたい。
●前傾姿勢について
(ゲーツヘッドを欠場することになっ)腰痛は大丈夫です。つねに再発を警戒し、特に移動後の練習は控えめにしました。ハードリングも完全にイメージができました。(インターバルの走りも含め)本番はもっとすごい角度で前傾をかけるかもしれません。エドモントンと同じくらいの角度は取れると思いますが、人間、元の場所よりもう一段上に来られたと思いたいもの。そのためには、よっぽどのトランス状態にならないと。走り終わって真っ白になるくらいの。そのとき初めてできるでしょう。
●アテネに向けて
 エドモントンの年もヨーロッパを連戦して帰国して、数日後にここでレースをして49秒台とかだったと思います。(トレーニングとしては)冬期練習が充実していて、(動きとしては)3年間低迷したことで“これだっ”っていうのを見つけて、精神的にはプロになったことに支えられています。細かな部分の話で心を乱さないことですね。400 mのタイムで一喜一憂しないとか。

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