2004/7/23 MTCアテネ五輪壮行会
末續が現状とオリンピックへの抱負を激白

@ヨーロッパから帰国後の改良点について
「力を使わないという方向性で今年はやってきましたが、でも僕の場合は元の力が、押す力がほとんどない。ある程度のパワーを付けて、余裕をもつべきだと考えました」

Q.(7月16日の公開練習日に発熱したことについて)
末續 帰国した次の日から練習して、つらかったことは、つらかったですね。限界に来ていたのかも。鍛錬期を2週間やって、筋肉のケアはしていましたが、体力的にガタが来ていたのかもしれません。
Q.帰国後また、新しい“坂練習”を取り入れた?
末續 やっていましたね。課題が出てきたので帰国してすぐに取り組みました。なんで今まで気づかなかったんだろう、という部分です。(今年やってきたことの)応用といえば応用ですが、もっと*********。
Q.(具体的にどう、変更したのか)
末續 力を使わないという方向性で今年はやってきましたが、でも僕の場合は元の力が、押す力がほとんどない。黒人選手や筋肉のある選手と戦うことを考えたら、ある程度のパワーを付けて、余裕をもつべきだと考えました。
Q.ベースを上げようという狙い?
末續 はい、全体的に。ゲーツヘッドもザグレブも(両大会を思い起こして考えた場合)、もう一段ヨイショと上げられるくらいになりたい。
Q.それが後半にもつながる?
末續 80mまでは行けましたが、ラスト20mも残っていましたからね、課題が。
Q.スタート3〜4歩目を踏む感覚的なもの?
末續 なんて言うんですかね。力を使っていない意識はありますが、元の力があれば、(力を使っていなくとも)出る力が変わってきます。その力をちょっと付けようと。いいところを残しつつ、弱点を克服しようということです。
Q.それは3歩目とか?
末續 コリンズに(ゲーツヘッドで)あそこまで行かれたのがショックでした。1・2歩目でやられたかなと思ったですから、そう思うのはよくないんですが、2歩目ってことかも。

A動きの自動化が必要な理由とは?
「100 mって究極なんですね。ちょっとでも考えたら負けになります」

Q.高野進コーチは(16日に富士北麓で)まだ10のうち5しかできないと話していましたが。
末續 レベルアップすると成功の頻度が少なくなりますが、それを高めていかないといけません。かなり短いスパンでレベルアップしてますからね。本当は2年スパンくらいでやっていいことなのかもしれないのに、半年でやっていますからね。
Q.それを次に試せる機会がオリンピックになるのは、不安ではないですか。
末續 ないですね。僕の場合、基本的に自動化するのがテーマなんです。試合になって考えて変えるようなことはやりません。試合で出なかったら力がないということ。(試合になって考えていたら)勝負もできません。100 mって究極なんですね。ちょっとでも考えたら負けになります。やってきたことが無になるんです。180°変わってしまう。逆にそれが楽しい部分でもあるんですが。だからコリンズには負けたくない。術(すべ)を知っている人間になりたいですね。決勝に残ったら、皆さんの期待しているようにメダルが取れるかもしれないし、ドベになるかもしれない。
Q.200 mだと考えているヒマがある?
末續 ありますね。考えても大丈夫です。余裕があるからできるのでしょう。ナンバも走り終わった後に、話せますからね。その点、100 mは覚えていないですから。逆に“暴れ馬”(2年前の水戸国際のときなど)とか、抽象的に言っているときの方がいいのかもしれません。

Bオリンピックでは100 m優先
「100 mは2本脚で歩く人類全部がやる競技です。そのなかで一番というのは“華”ですよ。その100 mをやってみたい」

Q.100 mを優先したことで、何か周りの反応は?
末續 ありましたね。親戚から「なんで200 mを優先しないのか?」って。100 mは2本脚で歩く人類全部がやる競技です。そのなかで一番というのは“華”ですよ。その100 mをやってみたいんです。別にメダルを取れたから言うわけじゃありませんが、200 mは(競技者の)誰でもやる、(世間の)誰でも知っているという種目ではありません。その点、100 mは全人類がやっていて、そのなかで一番を決める種目なんです。その100 mに出るのを避けては通れません。
Q.決断に迷いはなかった?
末續 気持ちは、冬から決まっていました。それまでも、出たい気持ちを我慢していました。パリの200 mが終わった後、どこか後ろめたさもありました。「200 mで3番でも、100 mならどうだっただろう?」って。200 mでいい位置にいるかもしれませんが、燃えてこない。だから、敢えて100 mに飛び込もうと。メダルより価値のあることをしたい。
Q.1つのことを達成したら、次のことをやりたいという気持ちもあった?
末續 それも(「も」にアクセント)ありますよね。まだ短距離というもので、やるべきことがあると。メダル取れたら終わりでなく、常に挑戦者でいたいと。
Q.オリンピックの100 m決勝と、200 mのメダルではどちらが価値があると思いますか。
末續 メダルも、ファイナリストも価値があります。僕は(高野進)先生がファイナリストという言葉を使った(91世界選手権・92バルセロナ五輪)意味が、よくわかるんです。本当に簡単なことじゃない。(昨年の世界選手権200 mは)メダルを取りたいと、取れる自信があったから言ってよかったが、軽はずみに言っていたら、とんでもないことでした。陸上競技というのは、ものすごいもの。終わって価値があることをやれればいいのですが、それがメダルなのか9秒台なのか、よくわからない。それに向かっていくこと、それ自体に価値があることなのかもしれません。

Cラウンドの進め方とオリンピックの位置づけ
「1次予選・2次予選はいい具合に行くでしょう。準決勝・決勝をどうするかを考えるのが楽しい」

Q.ラウンドの進め方で何か考えていることは?
末續 1日2本ずつでしょう。僕はだいたい、2本目がいいんです。1次予選・2次予選はいい具合に行くと思います。ヨーロッパでは1本ずつでしたが、従来の僕は1本だけだったらもっと悪かった。日本選手権のように追い風いっぱいいっぱい(+1.7)で10秒1台とか。そのレベルが確実に上がっています。でも、次の日の1本目が準決勝です。ザグレブで、もう1本あれば何とかなると感じましたから、それを準決勝、決勝に持っていく作戦をうっすらと考えています。
Q.準決勝のアップで追い込むと、決勝がきつくなるのでは?
末續 それはきついですね。でも、どうにかします。それが楽しいんです。試行錯誤して行く過程が。
Q.スタートをパリの決勝みたいに注意されたら?
末續 100 mだったら影響が出るでしょうね。致命的でしょう。そんなことはないでしょうけど。あれは作戦じみていてイヤでしたね。なんで決勝なんだ、って。
(中略)
Q.オリンピックは4年に一度の大試合と考えるのでなく、毎年行われる一番大きな国際大会という位置づけと以前話していましたが、もう少しオリンピックの位置づけを詳しく聞かせてください。
末續 4年前はオリンピックに出ることだけで嬉しくて、伊東(浩司・当時富士通)さんに付いて学べることを学べば、結果も付いてくると思って。今回は、もっと楽しめると思います。正直、ヨーロッパに行く前は(楽しむとは別のニュアンスで)特別視していたように思います。でも、そう思えるのもオリンピックだからかな。オリンピックじゃないと、こういう気持ちにならないのかもしれません。


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