2004/7/23 MTCアテネ五輪壮行会
室伏重信コーチへの一問一答
「技術が左右する種目ですから、いい感覚を持って本番を迎えることが大事」

Q.室伏広治選手の現状は?
室伏コーチ 去年は1カ月前に腰を痛め、その後、ヒジもケガをしてしまいましたから、とにかく間近になって故障しないように願っています。今のところ練習もしっかり積めていますし、調整も順調です。
Q.今季はシーズンベストをオリンピックで出そうという方針ですか。
室伏コーチ 私も何回か経験していますが、ピークを持っていくというのはなかなか難しいこと。何が一番大事かというと、技術が左右する種目ですから、いい感覚を持って本番を迎えることなんです。技術が定着していれば(パフォーマンスも)安定します。今、何m投げたとかは参考になりません。一番肝心なのはこれから。2週間前から本当の感覚をつかんでオリンピックまで持っていければ。高いところで安定させられるのが一番です。まずは故障をしないことですが、高重量のウエイトなどもしないといけない。娘にも言えることですが、張り切りすぎているのが本人にわからないことがあるんです。強い練習が故障につながりやすいのは、本人もわかっています。去年のプラハ(84m86の世界歴代3位)の後も、疲れているのを忘れるくらいの精神状態になっていた。ただ、本人もいい状態を感覚的にわかっているので、やってくれると期待している。
Q.ティホンとアヌシュが83m台を投げてきました。
室伏コーチ ティホンは動きがいい。アヌシュの動きはよくないが、一発引っかかると飛ぶ。それにカルヤライネンとベラルーシの若い選手。広治を含めた4〜5人が有力だが、そのなかでもティホン、アヌシュ、広治の3人が抜けている。3人のなかで誰が“一発”を投げられるか。
Q.世界選手権や4年前のオリンピックを******。
室伏コーチ それはあまりしない。切り換えている。今が大事。あまり振り返ることはしない。
Q.オリンピックを******。
室伏コーチ 意識するなと言っても、してしまう。意識過剰だと悪い方向に行ってしまうが。とにかく技術種目。動きを確立することが一番。それに尽きる。
(中略)
Q.由佳さんの今の状態は?
室伏コーチ ハンマー投を始めたのは大学を卒業してから。経験が浅く、いろいろとクリアしないといけない部分も多い。だが、一応、記録を出せる(伸ばしていける)技術はつかむことができた。来年、再来年と伸ばしていける。近い将来、70mは絶対に行くと思う。世界のハンマー投は問題点のある選手も多い。いずれ世界は75m、80mと伸びていくと思うが、今は70mでメダルのチャンスもある。
Q.これまでアジア大会などを経験してきた円盤投から種目が変わって、精神面、技術面が本番で********。
室伏コーチ オリンピックは規模が規模だけに初体験となるが、私も初めてのオリンピックだったミュンヘン(72年)が一番いい順位だった。どれだけ自信を持てるかにも左右される。というのも、予選は通過ラインが1本引かれているだけなんです。通常、記録の感触は、ラインでつかむ部分がある。それが1本だけだと、遠く感じられることもある。選手数も多くなることが予想されます。予選の1つの組が25名近くなって、インターバルが20分近く空くこともあるでしょう。そこをどう乗りきるかも重要になってきます。
Q.ハンマーの軌跡のローポイントが左にずれていた部分は、もう問題ない?
室伏コーチ 以前はローポイントが左に来ていました。右足を着いたとき、ハンマーが正面に来ていて、角運動量を減らしていました。世界のトップ選手になるには、そこ(の修正)は通らないといけない部分。まだ出てしまうこともあるが、かなり良くなって、回転が安定してきた。
Q.そうすると、今後1カ月の課題は?
室伏コーチ まだまだ全部が安定しているわけではない。確実にできるようにして、調整は強弱をつけてトレーニングをしていくことになる。疲れすぎると、できなくなってしまうから。体調、技術、精神面と噛み合う必要がある。心・技・体です。
Q.偉大な父と兄を見ていて、辛かった様子が感じられましたか。
室伏コーチ あったかもしれないが、私にはわからない。この競技は(精神的な)辛さというより、技術的にクリアしていけばいい部分が多い。記録が伸びれば幸せだし、技術さえクリアすれば伸びてくると思っていた。


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