2004/7/26 国近友昭と瀬古監督共同会見
瀬古監督のキャラと国近の落ち着きが表れた和やかな会見

「これからは、こっちの心の余裕がないと。監督がかっかすると選手に移るから」(瀬古監督)
「阿蘇のクロスカントリーや網走の起伏を使った合宿は収穫があった」(国近)

Q.代表に決まってからの練習の流れと、手応えは?
瀬古監督 4月にアテネを試走してシミュレーションをし、合宿に入りました。4月は走り込んで、5月も走り込んでゴールデンゲームズ(と6月の日本選手権)に出て、終わって阿蘇でクロスカントリーを中心に10日間、6月は網走・千歳でここに戻ってくるまで合宿していました。走り込んだ量は4月が1000km以上、5月も1000km以上、6月が1300km以上。順調に来ていますね。
Q.季節は違いますが、優勝した昨年の福岡と比べてどうですか。
瀬古監督 同じ感覚で練習が進んでいます。でも、要はこの後の1カ月。練習を積み重ねてきてもピークを合わせられなかったら意味がない。今後やりすぎてもダメだし、抑えすぎてもダメ。本人との会話を密にしてやっていきます。
Q.国近選手自身は練習の出来具合をどう思っていますか。
国近 4月に視察して起伏がすごいと感じて、監督もおっしゃっていたようにクロスカントリーとか網走の起伏を練習に取り入れて、脚をつくっていくことを考えました。福岡とはコースも季節も違うので単純比較は難しいのですが、アテネのコース対策として阿蘇のクロスカントリーや網走の起伏を使った合宿は、収穫があったと思います。
Q.残り1カ月をどうしていきますか。
国近 この1カ月でピークをつくっていくことが大事です。ただ、もう少し走り込みをしますが、その期間はまだ、何も考えずに練習をするだけ。その後、自分を見ていく(作業)に入ります。今はまだ、最終の詰める段階じゃありませんし、心境としてもまだ、そこまでいっていません。
Q.暑さ対策は?
国近 今のところやっていません。それも調整段階になって、監督の経験を聞きながらやっていくことになります。
Q.瀬古監督はご自分の経験をどう生かそうと?
瀬古監督 (オリンピックでは)失敗の経験しかないからね。名前は成功だけど(笑)。これからは、こっちの心の余裕がないと。監督がかっかすると選手に移るから。そういうことが、私がないようにして。練習は放っておいてもするから、止めるほうにならないと。手綱を緩めたり、叩いたり。
Q.そういった部分が、経験ですか?
瀬古監督 そうそう。暑い中、東京で笑いのない練習をしていましたから。あれがもうちょっと笑いがあれば、8位くらいになれたかもしれない(瀬古監督の五輪最高順位は9位)。入賞の仕方はわからないが、何となく秘策はあります。坂口(エスビー食品の後輩で中国電力監督の坂口泰氏)にばれちゃうから言わないけど。
Q.まだ、緊張はそれほどしていない?
国近 まだ、練習(だけ)で、緊張する場がありません。調整段階になってテンションが上がってくると、余計なことも考え始めて緊張してくるでしょう。それを、監督に和ませてもらって…。
瀬古監督 私も真面目にやっているんですよ、馬鹿なことを言うだけで。

「32kmまでの下りで脚を使わずに余裕を持つことが重要」(国近)
「今回が唯一、競技実績で監督を抜けるチャンス」(国近)


Q.レース展開や駆け引きを、練習でイメージすることはありますか。
瀬古監督 世界選手権(97年)でもそうでしたが、あのコースを見て、32kmまで残っていなかったら話にならないと思った。32km以降は下るだけですから、追いつくのは無理。いかに脚を溜めて32kmまで行くか。25kmでスパートできたら一番いいが、とにかく32kmまで残っていること。残ってしまえば、何とか行けると思う。
※会見後の囲み取材で「32kmで残っているのは5〜6人、優勝タイムはよくて2時間13〜15分」とコメント。
国近 夏ですから前半はスローになって、後半にペースの上げ下げがあり、篩(ふるい)にかけられていくと思う。そこまで意識しての練習はなかなかできませんが、32kmまでいかに脚を使わずに行けるか。起伏の大きいマラソンを経験していないので、下りで脚を使わないような練習をしました。展開は、レースの流れに身を任せるしかありませんが。先頭について行ければいいかなと。いい状態をつくって臨めれば、どんなレースになっても付いていけると思います。
Q.網走の起伏は*******。
国近 上りはそんなに難しいとは思えません。それほど脚に来ることはありません。下りでいかに、脚を使わないようにするか、です。32kmまでにも、上った後に下りがある。そこで脚を使うと話にならなくなってしまう。中盤の下りでどこまで余裕を持てるか。15〜26kmではスピードを上げられないでしょうから、スピードを抑えて、かつ、いかに脚を使わないか。僕はストライド走法ですから前と詰まっちゃうんですが、でも、ブレーキもかけないような走りをしないといけません。それは、克服できたと思います。
Q.監督から見ても、上手くできたと?
瀬古監督 上り下りの練習を(重点的に)してきました。「上りを意識して走れ」とか「ここでペースを上げろ」とか。上りを足したら富士山よりも上がっているでしょう。リズムが遅いので、ストライドでは行けないでしょう。たぶん(前半は5km毎が)16分台になるでしょうから。スローになったとき、いかにリズムを崩さないか。
Q.本番での自信は?
瀬古監督 やる以上は1番を狙う気持ちは変わりません。福岡で勝ったときと(同じイメージで)練習をやっていますから。
国近 練習の手応えもありますし、これでアテネで勝てると思って練習をしています。それを信じて、練習は間違いじゃないと思って、これからも練習していきます。
Q.お互いに、自分と似ているところと、似ていないところはどこだと思われますか。
瀬古監督 似ている点は、指導者に対して素直なところ。私も中村(故中村清エスビー食品前監督)に「ノー」と言ったことがなかった。似ていないのは脚の長さ。後は一緒にいて疲れないですね。
国近 監督もが中村さんをすごく信頼されていたように、僕も監督のことはすごく信頼しています。走りは、監督は高校時代からいつもトップで勝負強さがあり、日本記録も何度も出されている。僕はそういう選手ではありません。勝負強さがないと言うのは嫌いで、そうなりたいとは思っていますが。今回が唯一、監督を(競技実績で)抜けるチャンスです。いつも「オリンピックで結果を出していない」と言われるので、相当に悔しいのだと思います。
瀬古監督 でも、オリンピックで金メダルを取っていたら、きっと監督はやっていなかったでしょう。神様が「瀬古、取るな」と言っていたんだと思います。


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