アテネ五輪7日目(8月25日)寸評 

■決勝種目
<女子>
・200 m
・400 mH
・ハンマー投

女子400 mHとハンマー投で五輪新
 女子200 mは予想通りにV・キャンベル(ジャマイカ)が優勝。カーブでフェリックス(米)に1〜2mの差をつけると、直線でもその差を維持した。
 女子400 mHはピットマン(豪)の優勝を予想した。今季、大会前の記録は悪かったが、ワールドユース、世界ジュニア、英連邦、そして世界選手権と制してきた勝負強さを買ったのである。しかし、準決勝でギリシャのハルキアが52秒77のオリンピック新記録をマーク。決勝は前半をピットマンが飛ばしてリードしたが、300mまでにアップアップの状態に。聞けば、今季はケガで練習ができていなかったとか。賭けに出たのだろうが、そういう状態での賭けは失敗に終わることが多い。8台目ではもう、ハルキアに逆転されていた。
 ハルキアの本番での記録の伸び方は驚異的だ。大会前の自己ベストは53秒99だったのである。最後までまったく乱れない走り。筋持久力が急激にアップしたのだろう。地元五輪ということがプラスとなったのだろうが、それにしてもすごい。
 女子ハンマー投も、五輪前の状況ではモレノ(キューバ)以外は考えられなかったが、クゼンコワ(ロシア)が75m02の五輪新で金メダル。と思ったら、クゼンコワは8月9日に74m98を出していた。今回、ロシアは本当に直前に国内選考会を行なっている。それも、調子のいい選手を選ぶ1つの方法だろう。展望記事を書くマスメディアは困るだろうが。

■日本選手
<男子>
・110 mH2次予選 内藤真人 谷川聡
・棒高跳 沢野大地
<女子>
・走幅跳 花岡麻帆

沢野、20年ぶりの予選突破
粘って5m70の海外日本人最高

 沢野大地(ニシスポーツ)がまた違った強さを見せた。昨年のパリ世界選手権と今回の試技内容を比べると、その辺がはっきりする。
2003パリ世界選手権
5m35 ○
5m50 ○
5m60 ○
5m70 ×××
2004アテネ五輪
5m30 ○
5m50 ×○
5m60 ×○
5m65 ××○
5m70 ×○
 世界選手権は5m60まで全ての高さを1回でクリアした点が重要だった。同じ5m60でも、2回目以降のクリアの選手は落選したのだ。勢いもあったのだろう。
 今回は粘り強さ、修正能力の高さを見せた。世界選手権よりもレベルが高くなることを見越し、5m60の次の高さを5m70とせず、5m65にも挑んだ(パリとはバーの上げ方も違ったのだが)。それを3回目に、バーを揺らしながらもクリア。5m60の際に脚を痛めていたというのだから、驚きである。昨年、自身が世界選手権でマークした5m60を上回る海外日本人最高でもあった(室内では今年、沢野自身が5m70をアメリカで跳んでいる)。
 しかし、それでも予選通過ができないとわかるや、気持ちをきっちりと切り換え(元々、気持ちは緩めていなかったかもしれない)、5m70も2回目で成功した。本番に弱い日本選手が多いなか、沢野は力を出し切る術を身につけているように見える。
 どうして沢野は海外の大試合で力を出し切れるのか。地力があるのはもちろんのこと、沢野の表情がポイントだろう。ポールを持ってピットに入ったときも、マットに落ちたときの表情も、国内で見せるものと同じなのだ。「国際舞台を楽しみたい」と口で言う選手は多いが、身体で楽しめる選手は少ない(ただ、笑えばいいという意味ではない)。それができる数少ない選手の1人だと思う。
 あとは、世界選手権のように決勝で身体が興奮しすぎて、故障につながらないように注意して欲しい。注意してどうにかなるものではないのかもしれないが。
 女子走幅跳の花岡麻帆(Office24)は沢野の成田高の先輩に当たるが、残念ながら力を発揮できなかった。
 男子110 mHの2人はともに2次予選を突破できなかった。谷川聡(ミズノ)は13秒70と、1次予選でマークした13秒39(日本記録)よりも0.31秒も遅かった。脚の違和感を知らないうちにかばってしまったかもしれない、と自己分析。隣のブラジル選手と接触してリズムを乱した可能性もある。
 内藤真人(ミズノ)は同社ホームページで自身が語っているように、1次予選で13秒5台のシーズンベストをマーク。そこでつかんだ感覚をもとに、2次予選で13秒4台を出す予定だった。タイムは短縮したものの、13秒56から13秒54に縮めたのにとどまった。予定した13秒4台は出せなかったが、感覚としては13秒4台だったのかどうか。実際の動きはちょっとの違いでも、感覚としては大きな違いで、そこを上手くつかめば飛躍のきっかけとなることもある。帰国したら質問してみたい部分だ。


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