2004/9/28 ベルリンから凱旋帰国
マラソン日本新
渋井、成田空港で帰国会見


◆日本記録というより16分30秒でどこまで行けるかに集中
Q.日本記録を出した実感は?
渋井 あんまり、ないです。
Q.こういった多くの報道陣を前にする気分は?
渋井 久しぶり、ですね。
Q.ベルリン優勝の感想を改めて。
渋井 とりあえず、マラソンを走れたことにホッとしています。そして、結果が出たので嬉しいです。
Q.走る前から日本記録が出ると言われていましたが、どの時点で手応えを感じましたか。
渋井 今回、私としてはあまり記録を気にせず、(5km毎を)16分30秒でどこまで行けるのかを気にしていました。行ったら、記録が出ちゃいました。
Q.記録が出た要因は何だったと思いますか。
渋井 走ることだけに、すごく集中できたからです。
鈴木監督 名古屋の土佐(礼子)が終わって、オリンピック、オリンピックと(世間が)やっている4月の時点で、記録を狙ってやっていこうと話をしました。その時点でもう、ベルリンに出ると決めていました。やってやるぞと、本人にもやる気が出てきたのが要因です。そのなかで、本人に日本記録を破れるのはオマエだけだぞ、と話しました。本人もある程度、その気持ちを持ったと思います。

◆来年は世界選手権?
Q.日本記録を出して追われる立場になったという意識は?
渋井 ないです。周りは気にしていません。
Q.これからも攻めていくと?
渋井 はい。
Q.渋井さんのマラソン歴の中で、今回のベルリンはどんな位置づけになりそうですか。
渋井 ステップです。今回は復活を見てもらうことでした。
Q.今後は何を?
渋井 マラソンを走ります。いっぱい。
Q.来年のプランは?
渋井 (鈴木監督と顔を見合わせながら)秘密です。
Q.世界選手権を狙うという話も聞きましたが。
鈴木監督 そういうことに、なると思います。レース後にまだ、改めて本人と話していませんが、その方向でチラチラ話しています。
Q.帰国して何を一番やりたいですか。
渋井 明日、マネジャーの結婚式なので、そこでどれだけテンションを上げられるか、ですね。マラソンを終わった直後なので、まだ見せられる体なので、余興を頑張ります。主役は奪いますよ。
Q.部員の皆さんには何と報告しますか。
渋井 別に…。見てもらって、感じてもらえれば、いいと思います。
Q.賞金は何に使われますか。
渋井 貯金です。

◆2時間17分台も
Q.2時間20分を切った感覚は? この先、どのくらいまで記録を伸ばせそうですか。
渋井 走り終わったらまだまだ行けそうな感じがありました。もっと上の記録を目指したいですね。
Q.2時間20分の壁は大きかった?
渋井 それは、シカゴのとき(2002年)に切れるかな、と思いました。
Q.自分のなかでどこまでタイムを伸ばせそうですか。
渋井 ……
鈴木監督 今回、タートラインに着くまで100%だったとは思っていません、身体的には。精神的には集中のできる選手で、それはできたと思いますが、(全体的には)100%とは言えません。その状態で2時間19分台が出せた。もうちょっと行けるでしょう。現時点でも、2時間17分台は行けます。これから北京に向け、徐々にやっていきます。
Q.今の100%で2時間17分台なら、今後さらに伸びたら、どのくらいの記録に?
鈴木監督 これから100%にしていくということで、そこまで行ったらまた、その過程の練習でどう変わってくるかで、違ってきます。

◆北京で金メダルを
Q.高橋尚子さんや野口みずきさんと直接対決をしたいと、考えていますか。
渋井 あんまり、人を気にすると走れなくなってしまうので、できるだけ考えないようにしています。
鈴木監督 いつも話していることですが、今回ベルリンに高橋尚子選手が出ると聞こえてもきました。でも、(仮に出場していても)自分の走りができれば満足できたと思います。あまり、意識はしていません。
Q.*******自信が芽生えましたか。
渋井 はい。自信はつきました。
Q.2年前、シカゴを一緒に走った高岡寿成選手が再来週のシカゴに出ますが。
渋井 頑張ってください。
Q.改めて、今後の決意を。
渋井 無事、復活できました。これからガンガン走ります。
Q.最終的には北京五輪が目標ですか。
渋井 オリンピックの終わった後とか、次の年にピークが来ているんで…頑張ります。
Q.お2人の最終的な目標は北京五輪だと…。
渋井 (頷きながら監督と目を合わせ)はい。
鈴木監督 日本選手がみんな強いですから、代表になるのがまず大変です。簡単に行かないでしょうが、北京で金メダルを取りたいと、本人もそう思っていると、思います。

◆集中とリラックスの両方ができていた
Q.先ほどお話しにあった走りに集中するという部分ですが、それができるときとできないときでは、動きがどう違ってきますか。
渋井 今回、沿道を見ていないんです。下(地面)と、あとは上の時計を見るくらいで。本当に走ることだけに集中しました。そこが今までと違いました。どうですか(と、監督に振る)。
鈴木監督 リズムが最後まで変わりませんでした。着地も変わらなかった。それで、最後まで16分30秒でもって行けました。オートバイで先回りをして、5kmのなかで2〜3回本人を見られましたが、本当に走りに集中していました。それでいて、こちらの声も聞こえていたようです。集中とリラックスの両方ができていました。
Q.大阪ではそれができなかった?
渋井 その前に、余裕がなかったですね。今回は30kmを過ぎて腕を振ってやろうと思いました。
Q.これまでのマラソンで、一番いい動きだった?
渋井 それと、体力ですね。ラストまで何とか粘れました。いつもは30km過ぎで力が入らなくなってしまいますが、今回は力が出てくる感じでした。そのあたり、食事面に気をつけた効果が出たのかな、と思います。
Q.具体的に、食事面で何に気をつけましたか。
渋井 ちょっと、カーボローディングをやってみようかな、と。それに、3カ月前からずっと、栄養学の本とか読んだりして。体にいいものを食べました。
Q.体調や栄養面は今回が一番だった?
渋井 はい。これまで、やせることだけ考えて、食べなかったりすることもありましたが、今回はしっかり、いいものを3食、太ってもいいからと食べました。
Q.これを食べた、というものを挙げられますか。
渋井 納豆を、よく食べましたね。その日の朝も食べていました。だから粘れたのかも。
Q.でも、実際の体重は絞れたんですよね。
渋井 全然、絞れていません。大腿とか、取れていないですね。だいぶデブです。
鈴木監督 節制しても、取れない部分もありますから。早かったり遅かったり、個人差もあります。それでも、今回は故障なしで練習ができました。今までにない自信になった部分です。

◆新しい練習パターン
Q.監督が言われた、100%でない状態で19分台が出せたのは、スピードを元々持っているからということでしょうか。少し解説をお願いします。
鈴木監督 スピードは元々、素質の部分であるので、練習内容を長いのを中心にしました。トラック練習の本数を少なくして、次の日に長い距離を楽に行けるように、セットでやってきた。これまでは、離してやっていたんですが。それも上手くいった、な(と渋井の方を見る)。
渋井 (頷く)
Q.渋井さんだからその練習を?
鈴木監督 そうですねえ。土佐がそれをやったら、自信をなくすかもしれません。
Q.距離走は45kmとか。
鈴木監督 40km走が1回くらいで、あとは35kmが多かったですね。
Q.夏のマラソンでも同じパターンで練習しますか。
鈴木監督 今回こういう結果になったので、ある程度、同じパターンで行くと思います。

◆心も鍛えた
Q.走っている最中に、自分を奮い立たせるものが何かありましたか。
渋井 今回はすごくリラックスしていました。前日の夕食のときも、みんなで大笑いをしながら食事をしました。だいたい、気持ちで走るタイプなので、その辺の状況が良かったのだと思います。
Q.レース終盤で高橋尚子さんの記録とのタイム差を知って、抜こうという意識はどのくらいあったのですか。頑張らないと*******。
渋井 本当に記録は考えていませんでした。本当に走ることだけに集中していました。ゴール300m前で2時間19分10秒と見えたので初めて、これは行かないといけないと。ハーフくらいでちょっと*******が、あまり意識しませんでした。
Q.最後に頑張ろうと思った場所での、思いのほどはどうでしたか。
渋井 記録は、ゴールしてインタビューを受けるまでわからなくて、走り切れたことに満足していました。
Q.日本新でも、とりたてて喜びはなかった?
渋井 聞いてからは、ありました。
Q.もっと縮められた、と?
渋井 それはまた、今度にと。
Q.どのくらいのタイムが出せたと思いましたか。
渋井 (2時間19分)30秒台が出たかな、と思ったのですが、41秒で。
Q.今回のような気持ちで、世界選手権や五輪選考レースを走れそうですか。
渋井 はい、たぶん。この3カ月で心を鍛えましたから、それを崩さないように頑張ります。


寺田的陸上競技WEBトップ