2003/9/23 スーパー陸上
スーパー陸上 全種目戦評・女子編
なんでもかんでも意味を持たせるのも、どうかと思いますが
今大会の戦いの結果を少々考えてみました


200 m
 ゲインズ(米)vs.ユルティ(仏)。ゲインズがワールド・アスレチック・ファイナル100 m優勝なら、ユルティは世界選手権200 m銅メダル。今大会屈指の好対決(の割には、主催者側のアピールが今ひとつだったような)は、22秒67(+1.4)のゲインズに軍配。ユルティは22秒96。“重戦車”とあだ名されたブロック(ウクライナ)は走りが重く、23秒53の4位。
 日本人トップは7月に23秒99をマークしている松本真理子(福島大TC)で24秒48の5位。花岡麻帆(Office24)の追い上げを0.02秒差でしのいだ。吉田真希子(FSGカレッジリーグ)、林由佳(中大)、笠原瑞世(同大)とバラエティーに富んだチャンピオンたちが参戦したが、純粋スプリンターの松本が意地を見せた格好に。

800 m
 世界選手権銀メダルのホームズ(英)が2分01秒46で優勝。日本人トップは30秒0、1分02秒8、1分33秒8の200 m毎の通過で、最後は松島朋子(UFJ銀行)が西村美樹(東学大)、桑城奈苗(筑波大)を引き離し、2分04秒76で5位。記録は今ひとつだが、今季初めて西村を破った松島の好走は評価できる。

5000m
 世界選手権5000m金メダルのディババ、1万m銀メダルのキダネのエチオピア・コンビと、福士加代子(ワコール)と渋井陽子(三井住友海上)の両日本記録保持者が大会前の話題だったが、ともに主役の座を譲ってしまった。
 優勝争いはエチオピア2人とルーシー・ワゴイ(ケニア)の争いとなり、ラストに強いエチオピア勢がワゴイに競り勝つかと思われたが、ラストの直線でスパートを決めたのはワゴイだった。15分10秒23の自己新。ケニアの世界選手権トライアル3位の実績は伊達ではなかった(A標準未突破のため代表にはなれず)。
 ただ、ラスト400 mのタイムは今大会のワゴイが65秒だったのに対し、世界選手権のディババは61秒71。世界選手権後も「アメリカの大会で走ってきた」と言うディババは、はっきり言って調子が落ちていた。
 日本選手トップは福士でなく、世界選手権では代表トリオの中で3番目だった田中めぐみ(しまむら)で15分29秒57の4位。福士がトラックで敗れたのは、01年の日本選手権以来2年3カ月ぶりのこと。

400 mH
「8台目のハードル位置に手違いが判明したため不成立と致します。」と、主催者が発表した。公式コメントに謝罪の言葉は記されていない。はるばる海の彼方から来日した選手たちはもちろん、公式記録を1つふいにした選手たちに、なんと謝罪したのだろう。記録一つで、競技人生が変わってくることもあるのだ。
 スーパー陸上のような選手権でない性質の試合だったから、それほど選手たちも怒らなかったのだろうが(実際は怒り心頭だったかも)、インターハイ予選や日本選手権だったら、間違いなく再レースが必要となった。しかし、日本選手権の最終日の最後の方に行われていたら、どうしただろう。競技場の使用時間が決められているため(いつも記者は追い出される)、短いインターバルで再レースを強いられるのは間違いない。そこでオリンピック標準記録突破を狙っていたら、泣くに泣けない。
 その前に、ハードルの位置が違っていたら、事故の可能性だって大きくなる。安全管理に腐心すべき運営者側が、事故の起きやすい状況を作ったわけである。選手生命を断たれるようなケガをしたら……。

走高跳
 自己ベストの2m05はスーパー陸上の大会記録。優勝記録の1m99はババコワ(ウクライナ)にしてみれば会心の跳躍ではないだろうが、他の種目に比べるとレベルは高かった。
 ハニカット陽子(ミキハウス)が今季初の1m90に成功して日本人トップの3位。1m93を2回失敗後、1m96の日本タイに挑んだ。今季前半の不調からは脱したと判断できそうで、秋シーズン、ちょっと期待したい。

走幅跳
 池田久美子(スズキ)が6m48(+0.7)で優勝。世界選手権8位のアップショー(米)、花岡麻帆(Office24)と6m40台を記録したが、池田が勝負強さを発揮した。スーパー陸上史上初の女子走幅跳日本人制覇。6m15で予選落ちした世界選手権から、すぐに立ち直りを見せたのはさすが。

砲丸投
 世界選手権の金銀銅メダリストが勢揃いした種目。銀メダルのオステプチュク(ベラルーシ)が最後の6回目に19m56をプットして逆転V。銅メダルだったパブリシュ(ウクライナ)が2位、金メダルのクリベリョワ(ロシア)は3位。
 直前のアジア選手権で17m80の日本新をマークした森千夏(スズキ)だったが、16m63と世界選手権(16m86)を下回る今季自己最低記録。市岡寿実(国士大ク)が1cm差の16m62と、森にとっては危ないところだった。

円盤投
 世界選手権金メダリストが勝った2種目のうちの1つ(もう1つは男子400 mH)。ヤトチェンコ(ベラルーシ)が63m40で優勝。日本人トップは52m69の室伏由佳(ミズノ)で4位。自己の日本記録からは4m15の差があるが、日本人2位以下の選手は、自己記録との差がもっと大きかった。


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