2003/7/13
静岡県選手権1万mで
土井が実業団初レース

 男子1万mはライバルのスズキ勢が出なかったこともあり、さながらホンダ浜松勢の社内ペース走といった趣き。そのなかの1人、長身選手に見覚えがあった。今年、法大から入社した土井洋志である。3000mを8分48秒で通過すると、間もなく独走となり、5000mを14分46秒。以後の1000m毎を3分00秒、3分03秒、3分03秒、3分00秒、2分53秒でカバーし、29分44秒57でフィニッシュした。

 土井といえば昨年の日本インカレ・ハーフマラソンと、箱根駅伝予選会20kmに優勝。箱根駅伝本戦でも2区の区間賞候補だったが、箱根を走ることはできなかった。予選会後にヒザを痛め、2月中旬には手術に踏み切った。当初は3月から練習を再開できる予定だったが若干の痛みが残り、走っても軽めのジョッグを80分ほどやる程度。本格再開は5月中旬にずれ込んだ。岐阜県の高所で軽めの合宿をし、6月には約3週間のボルダー合宿。ここで、一気に走れるようになった。
 ホンダ浜松のボルダー合宿は7月6日の札幌国際ハーフマラソンと、8月31日の北海道マラソンに出場する2組に分けてメニューが組まれた。土井は北海道マラソン組とほぼ、同じ練習をすることができたという。走行距離にすると約800 km。スピードは上げられなかったが、距離走はこなすことができた。

 6月25日に帰国。試合に出るといっても、全国レベルのレースに出られる状態に仕上がったわけではない。出られたのは、プレッシャーのかからない県選手権だからだろう。レース2日前の3000mで8分55秒で走り、それが今季の最速タイム。実業団初レースとなった今大会では、前述のようにそれを上回るペースで3000mを通過した。

 ホンダ浜松の渡辺利夫監督は、この日の土井を次のように評価した。

「本来のスピードはまだ戻っていません。脚の返しとか、まだまだ不十分ですね。それにしても、1人であそこまで走ったのは大したもの。ボルダーでいきなり走れたのは、学生時代に月間1000kmを超える練習を3カ月もやったことが下地となっているのでしょう。8月7日の十和田八幡平駅伝に出たあとは、じっくりやって、9月末の全日本実業団の1万mに出ます。29分4秒がベストですが、28分40秒台は軽く行くんじゃないですか」

 今回の記事は全て、渡辺監督から話を聞いて構成した。箱根駅伝予選会後に直接、話を聞いたときは、一見、冷めたようなものの見方をするなかで、芯のしっかりした考え方を持っていると感じた選手。熱く語る選手はそれなりに多いが、土井のようなタイプはあまりお目にかかれない。全日本実業団でどんな走りをし、何を話してくれるか楽しみになった。


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