2003/7/12 静岡県選手権1日目
松本が200 mで20秒92の好タイム
女子200 mは静岡市立高がワンツースリー
ハンマー投・池田は20回目の優勝

 静岡県選手権第1日目が、今秋の国体会場でもある袋井市の小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われた。心配された天候は晴れ。ただ、高温の上、湿度が高く、東アジア特有の肌にまとわりつく湿気には閉口させられた。

 この日一番の好記録は男子200 m。昨年のアジア選手権400 m代表の松本卓(スズキ)が、同僚の馬塚貴弘(同)を抑え、20秒92の大会新で優勝した。2位の馬塚も20秒95。松本のこれまでの自己ベストは中京大4年時の21秒23。日本選手権で予選落選最高タイムの46秒29を出した選手だが、課題は前半を速く入ることだった。
 これまで、200 mのスピード不足からなかなか思い切って前半を走れなかったが、46秒32を出した6月末の大阪府選手権では小坂田淳(大阪ガス)を上回る前半だったという(小坂田が少し抑えたらしい)。200 mの20秒台突入でさらに、課題克服の道筋が見えてきたと言えそうだ。

 女子200 mでは鈴木亜弓(スズキ)が予選で24秒06(+0.2)と大会記録を1秒以上も更新した。2位の望月美希(静岡市立高)とは1秒77の大差。まるで大人と子供のレースという印象だったが、鈴木は明日の100mに備えるため、この日は予選1本で終了する予定ということもあったのか、最後まで走りきった。それに対して2位以下の選手は、準決勝・決勝と3本走ることを想定して流したため、より大きな差となったのかもしれない(予選は3着+6)。
 その決勝では静岡市立高が1〜3位を独占。1位の長倉由佳が24秒82、2位の小澤洋子が25秒14と、前回までの大会記録25秒20を上回った。長倉は昨年の全日中200 m5位の選手。24秒82は今季高校リスト10位の好タイムだが、長倉はインターハイ静岡県大会3位だったものの、東海大会を突破できなかった。その東海大会の会場がエコパだったので、1カ月も経たないうちに雪辱を同じ場所で果たしたことになる。もしかすると、エコパのトラックに適した走り方を体得していたのかもしれないが、単にこの1カ月で力がついたということなのかもしれない(伸び盛りの1年生である)。

 スズキ勢では男子400 mHの河村英昭は予選で50秒83と、鈴木同様大会記録を1秒近く(0.98秒)更新。来週の松任での世界選手権選考レースに備え、この日は予選1本だけ。来週に向け、感触は悪くないとのこと。安井章泰も明日の100 mに備え、200 mは予選1本だけだったが、21秒34(−0.1)とまずまずの走り。

 男子800 mは準決勝を省略するため、決勝は12人で行われた。日本インカレ予選で1分49秒30の静岡県東部地区出身選手最高記録をマークした斎藤皓亮(明大)が1分51秒73で余裕の勝利。インターハイ東海地区優勝者の安西アルトウ(藤枝明誠高)に格の違いを見せた。
 男子5000mWでは河合将貴(国士大)が20分52秒11の静岡県新。学生勢では、今大会が引退試合との情報も聞かれた男子走幅跳の井ノ口雅浩(中大)が7m18(+1.2)で優勝。日本インカレ3位の志鎌秀昭(筑波大)は2本目の踏み切りで脚(足首のように見えた)を痛め、3本目以降を棄権した。

 女子400 mHは東海インターハイの両ハードルを制した櫻井里佳(富士見高)が注目されたが、優勝したもののタイムは63秒04と、自己記録更新はならなかった。もう1人の高校生優勝者は女子800 mの橋本ゆか(常葉菊川高)で2分16秒98。東海インターハイ6位の選手だが、最後の直線で同僚の居村沙依と他を引き離す走りは、さらなるタイム短縮が可能であることを示していた。

 ところで、静岡県選手権の最大の特徴は、投てき種目の話題の豊富さだろう。この日も、特徴ある選手が次々に登場した。
 男子砲丸投は静岡高−慶大と(世間的にも)名門校出身の對木隆介(日立)が14m24で6回目の優勝。年次ベスト記録こそこのところ15m台に乗せていないが、県選手権優勝記録は大学2〜3年時と変わらない。
 女子円盤投は影山富子(スズキ)が11年連続14回目の優勝。1980年以降、鈴木治美(大昭和)と影山の2人しか優勝者がいない種目である。
 女子ハンマー投は1995年から実施と歴史が浅い種目。鈴木文が初代選手権者かと思ったが、昨年まで山内七重(常葉橘高教)が8連勝と選手権者欄の名前を独占していた。しかし、今年はスズキの新人・森千夏が45m59を1回目に1回転ターンで記録。山内の連勝をストップさせた。
 そして真打ちは、男子ハンマー投に20回目の優勝を飾った44歳の池田明由(ジャトコ)。過去3年間出場していなかったのは、JFLに所属する自社のサッカーチーム事務局の仕事を優先しているから(公式戦が重なったら陸上競技の試合には出場できない)。今季も中部実業団に続いて2度目の試合。中部実業団の円盤投で肉離れをした影響が長引き、その後の投てき練習は試合3日前の1回だけ。54m45の優勝記録は、過去3年間の年次ベストと変わらない。「このレベルなら、感覚が覚えているんです。(5投目と)思い出すまでに時間がかかりましたけど」と池田(池田選手に関しては、室伏父子との大変に興味深いエピソードも聞くことができたので、別記事をどこかに書ければと思っています)。
 女子円盤投の影山も現在は、チームのマネジャーが本業で練習時間はかつてのようにはとれなくなっているが、「ある程度の技術があれば投げられるレベル」と、同じような意味のことを話していた。對木、山内も同じように思っているから、ここまで続けられているのかもしれない。ベテラン・スローワーたちは奥が深いというか、奥ゆかしいというか…。


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