2003/6/4 日本選手権
WEB版種目別注目ポイント
男子短距離編
100 mの朝原は“きっかけ”をつかんだのか?
200 m2位争いを面白くするのは学生陣か?
400 mは今大会短距離最大の激戦種目か?


■100 m
 陸マガ6月号には“2強対決”と書いたが、様相が変わってきた。末續の独壇場となるか否かは、朝原の状態にかかっている。大阪GPでは10秒16(−0.3)の末續に対し朝原は10秒38。昨年の大阪は末續10秒13と朝原10秒20。昨年は、大阪の後、関西実業団できっかけをつかんだ朝原が日本選手権本番では10秒05の国内日本最高(当時)で快勝した(末續は200 mのみにエントリーしたが故障で欠場)。
 ということで、朝原の関西実業団が注目されたが、100 mには出場せず(あるいは予選だけ)200 mに21秒26(−1.5)で優勝した。試合を重ねて調整していくのが朝原のやり方のはず。不安を残す朝原の動向だが、すでに練習中に技術的なポイントを掴めたのかもしれない。あるいは、200 mで調整する新たな方法を見つけた可能性もある。その辺が明らかになるのが、日曜日の横浜国際競技場。
 さて、3位争いとなるか、2位争いとなるのか、見通しが立てにくいが、いずれにせよ混戦模様だ。織田記念を自己新で制した土江、水戸国際で日本人2位の菅野優太(終盤、かなり速かったように感じた)、東日本実業団で土江を0.01秒差で下した川畑伸吾らが候補。土江の島根県記録を破った石倉一希も要注意。復調した北国の貴公子スプリンターこと田村和宏も、200 mには出ずに100 mに絞るという。スズキのサイトを読むと、安井章泰(スズキ)もかなりの手応えを得ているようだ。
 混戦になると、土江のベテランの味が威力を発揮するか???
※ここまで長く書くのは100 mだけの予定
◎世界選手権標準記録突破者
A:10秒03 末續慎吾(ミズノ)
  10秒05 朝原宣治(大阪ガス)
  10秒12 田島宣弘(日体大)
B:10秒23 土江寛裕(富士通)
  10秒24 石倉一希(島根大院)
  10秒25 菅野優太(下総町役場)
  10秒26 川畑伸吾(群馬綜合ガードシステム)
  10秒28 宮崎 久(東海大)

■200 m
 陸マガに書いた内容から大きな動きはない。「末續の優勝は動かない。興味はタイム。自己記録の20秒26は3年前に出したものだが、力は数段上がっている。本人いわく「“100 mの記録×2”が200 mの記録」。同じ横浜のトラックで、3年分の進歩を表現できれば、伊東浩司の持つアジア記録(20秒16)更新は十分に狙えるはずだ」と陸マガに書いた。
 藤本が東日本実業団を制し、記録は21秒26(±0)。低温と調整なしということを考えても、客観的にはもう少しいいタイムが欲しかった……が、本人は2位への手応えは感じていたようだ。100 mの何位まで、200 mの何位までがメンバー入りするのか、4×100 mR代表の条件は、まったく不明。A標準(20秒59)を突破して個人でも代表入りするしかない。本人も、2年前のように200 m6位で代表入りする幸運はあてにしていない。
 この種目の2位争いを面白くなるかどうかは、院生も含めた大学生の走りにかかっている。今季リストでは吉野達郎(東海大)が20秒68で1位。昨年の覇者・宮崎久(東海大院)がどう出てくるか。関東インカレを制した(100 mと2冠)新井智之(筑波大)と、静岡国際で21秒を切った平野龍(熊本大院)、2年前に20秒29で走った大前祐介(早大)らも学生の有力候補。ジュニアの高平慎士(順大)も関東インカレ2位と力を発揮し始めていて、ダークホース的な不気味さがある。
 大前が2年前の調子に戻れば、その年に続いて日本選手権2位となれると思われるが…。2年前も、関東インカレ後に調子を上げ始めた。今季はさて。
  100 mの9秒台よりも、200 mの19秒台の可能性の方があるように感じている。
※ここまで長く書くのは100 m・200 mだけの予定
◎世界選手権標準記録突破者
A:20秒37 末續慎吾(ミズノ)
B:20秒65 宮崎久(東海大)
  20秒67 林 直也(****)
  20秒68 吉野達郎(東海大)

■400 m
 今大会で一番、優勝候補の多い種目だろう。“優勝者予想”欄には山村貴彦(富士通)の名前を書いたが、かなり山勘に頼った予想である。“優勝候補”欄の小坂田淳・田端健児・佐藤光浩・冨樫英雄・奥迫政之の誰が勝つか、まったくわからないくらい甲乙つけがたい状況だ。
 山村としたのは、学生時代の試験のように鉛筆を転がして決めたのだが、東海大・日大対抗のオープン200 mで見せた走り(最後は20mくらい流した)、水戸国際の350mまで見せた走りに勢いが感じられたから。横浜国際競技場は00年に45秒03の日本歴代2位を出したトラック。山村の走法とトラックの反発が、マッチしているという説もある。それなら、同じレースで45秒05を出した小坂田も同様との反論もあるが、セカンド記録以下との差が山村の方が大きいのである。
 小坂田は今季も、水戸国際の最終組、大阪GPと小坂田はきっちり日本人トップ。関西実業団でも独走で46秒62の大会新。安定感は日本人選手では一番となりつつある。
 しかし、田端健児もどのレースでも最後にきっちり追い込んでいる。持ち味が失われずに、課題のスピードに進歩の跡があり、前半もかなり速く入れるようになった。今季の終盤では硬さが出ていると自己分析し、対策もぬかりなさそう。
 奥迫政之の前半も相変わらず鋭く、アジア大会など国際大会で見せる粘りが日本選手権でも出せれば、初優勝み十二分にあり得る。
 今季急成長の冨樫も、織田記念でトップを取り、記録だけでないことを実証。タイムレースの水戸国際を制した佐藤光浩は、織田記念でも2組トップ。今季、日本選手に直接対決で負けていないということになるのでは?
 上記6人が揃って決勝に残れる保証があるわけではない。邑木隆二(富士通)も今季は気管支炎の影響で不本意なレースが続いているが、東日本実業団で田端に次いで2位と調子を上げている。世界選手権代表となった2年前よりも、練習ではいいタイムが出ているという。昨年、日本のトップクラスに加わってきた松本卓(スズキ)も、スズキサイトの記事を見ると、小坂田と競り合った大阪GPの4×400 mRで前半からいいリズムで行く感触をつかんだようだ。昨年の日本インカレ優勝者の山口有希(東海大)、関東インカレを制した伊藤友広(法大)と、決勝が8レーンではもったいないくらい。
 たぶん、今大会の短距離6種目中、最も混戦になるのではないか。100分の10秒の間に5人くらいがフィニッシュすると思う。優勝記録は当然、B標準の45秒95を上回り、優勝者は世界選手権代表にその場で内定するはずだ。
世界選手権標準記録突破者
※ここまで長く書くのは100 m・200 m・400 mだけの予定
◎世界選手権標準記録突破者
B:45秒78 冨樫英雄(東海大)
  45秒90 田端健児(ミズノ)


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