2003/6/5 日本選手権
WEB版種目別注目ポイント
男子跳躍編
走高跳は東京トリオvs.福岡大OBトリオ
棒高跳の3強は個性が明確
走幅跳の連続代表は?
三段跳は杉林の代表入りなるかが焦点

■走高跳
 前回優勝者でアジア大会代表の内田剛弘(福岡大ク)が踏切脚踵の痛みで、春季サーキットだけでなく九州実業団も欠場。日本選手権がぶっつけ本番となる。さすがの内田も厳しい状況であることは否定できない。ということで、内田は故障者リストで回復具合次第。
 となると、優勝争いは水戸国際同様、醍醐直幸(東京陸協)、野村智宏(堀越高AC)、君野貴弘(ゴールドウイン)の東京トリオの争いとなりそう。水戸での順位と記録(1人だけ2m18に成功)を尊重して醍醐を優勝者に予想したが、やってみないとわからない、というのが本当のところ。
 東京トリオに割って入るのは、水戸国際4位の宇野雅昭、豊嶋茂樹、内田の福岡大OBトリオ。内田は8割くらい回復していれば当然、そのくらいの力はあるということで(単に、東京トリオに対抗する必要上、○○トリオとしたかっただけだろう、とうがった見方をしないように。そうでないことは、次の文章ではっきりする)。
 水戸国際で2m15の5位となった真鍋周平(阪大)が唯一の関西勢ということになるが、阪神が絶好調なだけに要注意である。某専門誌の選手が自身のプライベートを紹介するコーナーに阪神ファンと……一言も書かれていない。実力で何位に食い込んでくるかが注目される。
◎世界選手権標準記録突破者
B:2m27 内田剛弘(福岡大ク)

■棒高跳
 棒高跳の選手・関係者の間でも“別格”という評価を受ける沢野大地(ニシスポーツ)が、東日本実業団でやっと5m60を跳んだ。世界選手権のB標準でもある。
 しかし、静岡国際・大阪GPと日本人トップは前回優勝者の安田覚(三重県教員ク)。2大会とも5m50の自己タイで、97年以降7年連続で5m40以上を跳んでいる安定性が武器。昨年のアジア大会でも特徴を発揮して5m40の銀メダル。
 その点、A標準突破者の小林史明(日体大AC)は、同郷(三重県)の安田と比べると波が大きい。昨年、自身3回目の日本新となる5m71をクリアしたが、アジア大会では5m20(銅メダル)にとどまった。技術的にも体力的にも、レベルが高いところを目指しているだけに、小さな故障が動きに影響しやすいのかもしれない。
 面白いのは、1学年下の安田が小林のことを「こばやん」と呼ぶこと。同郷ということに加え、同じ日体大。付き合いは長く、親しみを込めての呼称だ。だが、ライバル意識は相当に強い。
「こばやんとの違いは身長差もありますが、スピードと踏み切り(小林の方が上という意味)。自分が勝っているのは技術的なところです。こばやんには絶対に負けたくない」
 ところが、沢野に対する意識は、かなり違う。
「大地は持っている潜在能力が全然違います。(本来の力を発揮されたら)負けても仕方ない」
 とまで言うのだ。ただ、この言葉を真に受けるほど、我々もお人好しではない。次の言葉が本音だろう。
「条件がいいとは限りませんが、5m60で優勝が決まると思います。理想は3人がA標準(5m70)を跳んで、揃って世界選手権に行きたい。そうしたら、日本にとっても快挙ですから」
◎世界選手権標準記録突破者
A:5m71 小林史明(日体大AC)
B:5m60 沢野大地(ニシスポーツ)

■走幅跳
 日本の期待種目である。というのも、世界選手権は第1回大会を除いて、つまり、87年のローマ大会以来、代表を派遣している種目なのだ。選手たちには頑張ってほしいが、期待の選手が3人も故障者リスト入りしていることもあって、標準記録突破者はゼロ。
 田川茂(ミズノ)が織田記念で2位(7m79)と復調したと思ったら、そこで故障してしまった。同僚の渡辺大輔は東日本実業団が復帰戦だったが、7m29(+2.0)の5位と、完全復調にはまだまだといったところ。
 日本記録保持者の森長正樹(ゴールドウイン)は疲れのピークということで織田を欠場したが、その直後に踏切脚のハムストリングを肉離れ。日本選手権がぶっつけ本番になる。体力・走力では過去最高の状態だったというので、期待が持てたのだが。
 元気なのは学生の荒川大輔(同大)で、織田記念を制した。記録は7m83にとどまったが、室内でも7m77を跳んでいるので、本番で大きく記録を伸ばしてきそうな雰囲気がある。あとは東日本実業団優勝の稲冨一成(富士通)が、かなりの手応えを得ている様子。そして、昨年の優勝者の寺野伸一が、織田記念の7m69からどこまで記録を伸ばしてくるか。関東インカレ優勝の安部翔太(中大)と、東日本で自己記録を14cmも伸ばした内田玄希(モンテローザ)がダークホース。

■三段跳
<<織田記念は杉林が2度目のB標準突破となる16m80で優勝。今季、16m64を記録している石川和義(筑波大)は、1回目に16m28を跳んだが、ホップ脚の踵を痛めて以後の試技を棄権。関東インカレも欠場予定で、日本選手権に間に合うかどうか。
 昨年のような失敗(15m75で3位)をやらかさなければ、唯一のB標準突破者の杉林が優勝して、世界選手権代表を決めるはずだ。織田で16m40(+4.5)の渡辺容史(一宮運輸)や、昨年優勝の小松隆志(高地陸協)がB標準以下で優勝するようだと、“会議室での選考”に持ち込しとなる。>>
 と陸マガに書いたが、その後の動向として挙げられるのは、井上大資(東海大)が向かい風1.2mの中で16m03を跳んで関東インカレに優勝したことくらいか。杉林は東日本実業団で2位と敗れたが、15m55の記録から推測するに、練習という位置づけだったのだろう。
 昨年の杉林は、7月の最終選考会で16m80の世界選手権B標準を跳びながらアジア大会代表になれなかった。日本選手権で3位と大敗したことが響いた、というのが、唯一推測できる代表漏れの理由(それでも納得できるものではないが)。今年は意地でも優勝するだろう。今年は優勝すれば、自動的に代表に内定する。
◎世界選手権標準記録突破者
B:16m80 杉林孝法(ミキハウス)


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