2003/6/6 日本選手権
第1日全種目戦評と懺悔
小野が日本新、吉田は日本歴代2位
福士、金沢、小野、三宅
4種目で世界選手権代表が内定
男子110 mH
谷川聡(ミズノ)に脱帽しないといけないレースだった。3強と目された内藤真人(ミズノ)、田野中輔(富士通)、谷川の3人が予選1・2・3組で各組のトップ。タイムは内藤13秒68(+3.3)、田野中13秒85(−0.5)、谷川13秒85(+0.5)で、追い風参考とはいえ13秒6台を記録した内藤と、向かい風で13秒8台の田野中の争いと予想するのがごくまっとうな考え方。
ところが、決勝の谷川は得意のスタートでリードすると、中盤で内藤にリードされたが、終盤で再逆転。9台目で内藤がハードルを引っかけてバランスを崩したのも逆転の原因だが、銀メダルだった昨年のアジア大会といい、桜井健一(ミキハウス)との0.01秒差の勝負制した昨年の日本選手権といい、谷川の大一番や接戦での強さが発揮された。
B標準突破者の内藤が敗れ、優勝記録がB標準に届かなかったため、月曜日の代表決定はできない種目となった。
1日目で優勝者予想が外れた唯一の種目。谷川の勝負強さを、素直に称えたい。
男子やり投
昨年以降、日本人選手間で無敗の村上幸史(スズキ)が、リードされる場面があった。藤原康喬(大体大)が4投目に74m04を記録し、3投目に72m39の村上を逆転したのだ。しかし、底力があったのは村上で、5投目に74m61で逆転すると、6回目には75m38と記録を伸ばし4連勝を達成した。この種目の4連勝は最多タイで史上2人目という快挙。優勝者予想も的中。
この日は横風が強く、投てき種目は全般に記録が低調だった。村上も世界選手権標準記録(80m80)を狙い過ぎていたせいか「風を気にしてしまった」と、ひたすら反省していた。期待の村上がB標準に達せず、世界選手権代表は村上が後日、標準記録を突破した時点で初めて検討される(即、決定ではない)。
それにしても、他の選手が苦しんだ悪条件の中で自己記録を関西インカレに続いて更新した藤原の評価は高い。同じ日に行われた女子の関川由美(大体大)は、残念ながら今ひとつだったが、男女やり投の大体大勢の充実ぶりがこのところ目立っている。藤原のコメントの中にあるヒントが隠されているようにも思ったが、具体的には機会を改めて。
女子1万m
スタートから渋井陽子(三井住友海上)が先頭に出て、復帰2戦目の福士加代子(ワコール)がそれにつける展開。1000m毎のスプリットタイムは以下の通り。
1000mまで3分05秒2
2000mまで3分07秒7
3000mまで3分07秒6
4000mまで3分11秒4
5000mまで3分15秒0
6000mまで3分15秒8
7000mまで3分06秒8
8000mまで3分13秒6
9000mまで3分15秒0
10000mまで3分09秒1
6000mで福士がスパートすると、渋井が後退。下のような結果となった(予想的中)。
福士 加代子(82)
フクシ カヨコ
|
京 都 |
ワコール |
31:47.15 |
|
田中 めぐみ(75)
タナカ メグミ
|
埼 玉 |
埼玉りそな銀行
|
31:55.24 |
|
藤川 亜希(78)
フジカワ アキ
|
宮 崎 |
旭化成
|
31:59.06 |
|
野口 みずき(78)
ノグチ ミズキ
|
京 都 |
グローバリー
|
31:59.28 |
|
渋井 陽子(79)
シブイ ヨウコ
|
東 京 |
三井住友海上
|
32:15.88 |
|
小鳥田 貴子(77)
コトリダ タカコ
|
広 島 |
デオデオ
|
32:16.94 |
|
川島 真喜子(77)
カワシマ マキコ
|
愛 知 |
UFJ銀行
|
32:18.08 |
|
弘山 晴美(68)
ヒロヤマ ハルミ
|
東 京 |
資生堂
|
32:24.56 |
|
A標準突破者の福士が優勝し、世界選手権代表に内定。マラソンで失敗し、トラックでの代表入りに照準を切り替えた田中めぐみ(埼玉りそな銀行)が2位となり、彼女も代表有力。5位の渋井が選ばれるかどうかが注目される。5人のA標準突破者のうち、山中美和子(ダイハツ)と市川良子(テレビ朝日)が欠場。渋井がA標準突破者の中で3位となり、選ばれても筋は通っているが、3人目を今大会終了直後に選ぶか、7月に持ち越すかは、月曜日にならないとわからない。
女子100 mH
4レーン金沢イボンヌ(群馬綜合ガードシステム)、5レーン藤田あゆみ(穴吹工務店)、6レーン池田久美子(スズキ)と、予選各組の1位通過選手が並んだ。
スタートから1台目は藤田と池田が好ダッシュ。藤田が若干、前に出ていたように思うが、2台目では池田がリード。しかし、3〜4台目で金沢が早くも出てきて、以後は差を広げてフィニッシュ。2位の池田が予選に続いて自己新(13秒34・−0.5)を出したが、金沢とは0.28秒差。やはり、まだ金沢との差は大きいと言わざるを得ない。この辺は予想通りだった。
金沢の13秒06は自己4番目タイの記録で、向かい風の日本最高。唯一のB標準突破者の金沢が優勝し、世界選手権代表に内定。2度目のB標準突破も果たした。
女子棒高跳
優勝者と予想した小野真澄(札幌陸協)が4m21の日本新で優勝したが、4m00で2回失敗と危ない橋を渡った。この高さで「ポールを3回換えた」とのことで、調子がよくなってポールが軟らかくなってしまったようだ。
唯一のB標準突破者の小野が優勝し、世界選手権代表に内定した。
女子三段跳
日本記録保持者で4連勝中の花岡麻帆(Office24)が、この日の朝に欠場を最終決断。成田高の後輩にあたる吉田文代(中大)が13m50と大幅に自己記録を更新して優勝した。
優勝者予想が的中した形となったが、この件に関してはタイムテーブルの不備を指摘したい。仮に、花岡が世界選手権を狙うメイン種目である走幅跳が先に行われるスケジュールであれば、花岡は三段跳にも参加できたはずである。走幅跳の踏切脚ではないが、三段跳のホップ&ステップ脚のアキレス腱に不安のある花岡としては、三段跳が先にあったら、慎重策を取らざるを得ないのだ。そのくらい、陸上記者なら誰でも想像できることだ。
日本選手権のタイムテーブルは完全不変の雛形があるわけではない。その時々の有力選手に合わせたタイムテーブルを考える必要があると思う。確かに1人の選手の事情を優先すると、だったら池田久美子(スズキ)が出られなくなるとか、複雑になってくることも考えられる。
だが、ここ数年の日本選手権タイムテーブルを見ていて、その時々の有力選手が上手く種目を兼ねられるスケジュールは立案できた。そこはしっかり配慮しないと、陸上ファンがお目当ての選手を見られないことになり、ただで低い陸上競技の人気が、さらに低くなってしまう。関係者には一考をうながしたい。
女子円盤投
中西美代子、室伏由佳(ミズノ)の中京大OGコンビで7連勝が続いているが、今回は織田記念で55m台を記録した山口智子(呉市陸協)が連勝阻止に挑んだ。が、まだ“毎回勝てる”力はなく、室伏が54m24で2年連続4回目の優勝。予想も的中。
女子やり投
三宅貴子(ミキハウス)が予想通り4連勝(6回目)。トラック&フィールド種目の世界選手権代表第1号に内定した。ただ、三宅自身は今季をフォーム改良の年と位置づけ、来年のアテネ五輪に間に合わせようとしていた。そのため、優勝記録は52m96と、規格変更後5年間で最低記録となってしまった。追い風が記録低下の一因となったのも確かのようだ。
日本選手権トップページ 寺田的陸上競技WEBトップ