2003/10/12 日本選手権リレー&群馬リレーカーニバル
敷島スプリントA
高平が20秒63のジュニア歴代3位
2大会連続日本人トップ
「20秒63は上出来。脚が痛かったのでタイムは考えずに、完走することを考えていました。コーナーで川畑さんが前にいて、やばいと思って予選より早めに上げました」

 男子200 mは予選からまずまずのタイムが続出。1組では地元の川畑伸吾(群馬綜合ガードシステム)がトップ通過。100 mを得意とする川畑だが、20秒90(+0.8)と久しぶりにこの種目で好走した。「シーズンベストは21秒4(台?)でしたが、地元ですからね」と、してやったりの口調。200 mの自己ベストは20秒78。五輪代表となった2000年5月の関東インカレでマークしたものだ。ちなみに順位は2位。1位は20秒67の学生新で走った末續慎吾(東海大、現ミズノ)で、シンゴがワンツーを占めたのだった。
 続く2組では高平慎士(順大1年)が20秒72(+1.4)で、20秒96の世界選手権代表・松田亮(広島経大)を抑えた。高平は自己記録を0.08秒更新し、アテネ五輪のB標準(20秒75)を初めて突破。
「前半のカーブは走っていて重く感じました。乗り切れませんでしたが、後半がよかった。落ち着いて走れました。高校の頃は前後半差がなかったのですが、最近は後半という感じ。今日は上手く後半につなげられたと思います。B標準は狙っていました。200 mは今日が最後なので、出しておきたっかったんです」 決勝でA標準・20秒59も? という問いには「そこまではイメージしきれません。筋力がついていかないでしょう」と、懐疑的な見方。「ユニバーシアードよりも今回の方がきついんですよ。400 mと100 mは走りを切り換えればなんとかなりますが、200 mと100 mはきついです」
 8月のテグ・ユニバーシアードは個人種目ではなく、4×100 mRと4×400 mRの両リレーに出場。最終日の両決勝を40分間隔で2本走り、4×100 mRは2走で金メダル、4×400 mRは3走で4位という成績。4×400 mRのラップは45秒7だったという。今大会は前日に日本選手権の4×100 mRを予選・準決勝、この日が200 mの予選・決勝、その後に4×100 mR決勝というスケジュールだった。脚に不安もあり、4×100 mRは結局、準決勝のみの出場にとどめた。

 決勝は6レーンの川畑が前半をリードして直線に入ってきたが、高平も大差なく続いていた。後半に強い高平が150m付近で川畑を抜き去りトップでフィニッシュ。20秒63と予選で出した自己ベストをさらに短縮したが、惜しくもA標準には0.04秒届かなかった。
「20秒63は上出来です。脚が痛かったのでタイムは考えずに、完走することを考えていました。コーナーで川畑さんが前にいて、やばいと思って予選より早めに上げましたが、それがよかったのかもしれません。(脚の痛みというのは)両脚の大腿裏の張りです。予選が終わってアイシングをしました。アップもスパイクを履かずにやったんです」
 世界選手権代表選手たちが秋は調子を落としていたのは確かだが、高平は今回の記録と、最近の200 m2試合(スーパー陸上と群馬リレーカーニバル)で日本人トップだったことから、アテネ五輪候補に躍り出たと言っていいだろう。まだ大学1年生のジュニア選手。20秒63は大前祐介(早大)の20秒29、高橋和裕(添上高)の20秒57に次ぐジュニア歴代3位のタイム。この冬の成長が楽しみとなる。
「(冬のテーマは)最低200 mを走れる力をつけることです。まだ、全部が全部、走れていません。前半からどんどん行っても、後半失速しないようにしたいですね。でも、やることは基礎練習を多くしようと思っています。北海道にいたときと変わらないような。7割北海道という感じで、4年生になったらこっち(のやり方?)でバリバリできるようにしたい」
 冬期はまだ、昨年までのやり方を基本にする方針だが、アメリカで合宿する予定もある。まだ正式に決まった話ではないが、行くとしたらトム・テレツ氏のところで、高平自身、積極的に考えている。
「3月にはアメリカでやったユニバー候補合宿に参加していますし、元々、海外で陸上競技の勉強をすることに興味がありました。大学に入るときも、そういう考えを持ってくれる大学を選んだのです。遅かれ早かれ、海外に行くチャンスはあると思っていました。アメリカもそうですし、色んな国に行ってみたい」
 種目も100 mから400 m、さらには400 mHにも可能性を感じさせ、年齢的にもこれからという19歳。春秋に富むスプリンターが、秋に飛び出してきた。

佐久間コーチ・コメント
「日本には少ない四肢の長いタイプの選手」

「外国選手には見られますが、日本には少ない四肢の長いタイプの選手。大腿などの羽状筋が長く、この筋肉が長いと大きな力を発揮できると言われています。サイズが長いですからてこの原理がきいて、腰を支点にダイナミックな動きができるのが特徴です。大きい割に素早い動きもできます。180cm以上の選手であれだけ機敏な動きができる選手もいないでしょう。
 その辺が上手く噛み合って、スピードが出ているのだと思います。ウインドスプリントをやると、勝手にスピードが上がっていってしまいます。7〜8割のウインドスプリントができませんからね。
 今はまだ、1本1本が、いっぱいいっぱいの状態です。中途半端な走りができなくて、加速していって、出し切ってしまうのです。質の高いトレーニングができる選手ですが、積み重ねという部分がまだできていません。ただ、寒い中でも身体づくりなど、基本的なことはしてきています。目的意識が高かったのでしょう。
 アテネ五輪は個人では200 mで目指して、リレーは付随的になりますが、狙うとしたら4×400 mRの方でしょう。
 これからは“身体づくり”と“心づくり”です。計画的な筋力トレーニングをすること。心の部分では、自分より上の選手と練習をしていくなかで、そのなかでも冷静な走りを覚えていくこと。
 今の高平は毎日が成長している感じですが、世界選手権に出た選手たちはシーズンオフのような気持ちでしょう。彼らに勝ったからといって、すぐには評価できません」

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