2002/9/6 日本インカレ2日目
100 mの難しさか?
10秒20にとどまった末續の日本インカレ100 mを、ちょっとドキュメント風に
レース中に感じていたことや9秒台に関することなど、末續のコメントを中心に

 9秒台が期待された末續慎吾(東海大)。準決勝後に不安が生じた関東インカレと違い、脚の状態はまったく心配なかった。レース直前、いつものようにフィニッシュ付近のスタンドに姿を現した高野進コーチは、「アップの動きにもまったく不安材料はありません。10秒03くらいは……」と、愛弟子の状態に満足している様子だった。この日は+0.2から1.0くらいの風がホームストレートにあった。「風が±0だったら?」と質問すると、「10秒05くらい」との回答。それ以上はあえて聞かなかったが、仮に男子100 mの時だけ2.0に近い追い風だったら……。

 100 mスタート前の静けさはどの大会も独特だが、今回はいちだんと静まりかえった。号砲一発。フライングはなく、一発でスタート。末續5レーン。関東インカレではスタートで一気に飛び出したが、今回は横一線、に近い状態。

「前半、立ち上がりが遅かったですね。頭が上がるのが早かったかもしれません。スタートしてすぐ、“あれっ”と思いました。“あっ、ズレた”って。前半でぶっちぎるつもりが、思った以上に悪かったですね」

 しかし、中盤からは末續が抜け出す。

「後半は頑張りました。去年までは、最初で失敗すると、そのままバラバラになることが多かったんですが、まとめられるようにはなってきました」

 ただ、力任せという印象もあった。

「力みましたね、結構。途中から無理に立て直しましたが、走っている最中も力が入っているのがわかりました。走り終わった後、疲れていましたから。去年の世界選手権の準決勝とか、こんな感じだったんですよ」

 それでも、力の差を見せて、後続を約2〜3m離してフィニッシュに向かう。田島宣弘(日体大4年)が欠場したが、今の学生選手なら、2位が10秒2台で走る可能性はある。微妙な差ではあるが、9秒台もあるかな、と感じた。末續のフィニッシュと同時に、国立競技場の全員が一斉にタイマーに注目した(と思う)。

「タイマーを見て、“エーーッ”ですよ。“02”かな、と思ったら逆でしたから。走り自体はよくなかったですけど、それでも10秒0台は出てるかなと。勝ちましたけど、嬉しさ半分、悔しさ半分ですね。9秒台を狙っていましたから。調子がよかっただけに、かなり悔しいですね。失敗しました。頭で描いていた走りと実際が、かなりギャップがありました。つまり、狙いすぎていました。甘い世界じゃありませんでしたね。(100 mは)あとは国体っすね」

 レース後の末續は、悔しかったのだろうが、表情や態度はいつもの“快活な青年”のまま、4×100 mRに向かった。1走・宮崎久とのアジア大会を想定したバトンパスは、末續がスタート直後に「よろけた」せいでやや詰まったものの、バックストレートで圧倒的な走りを見せてチームを2連勝に導いた。

 4×100 mR後、記者団とのやりとりの中で、前日のこと、それと関連して9秒台についてのコメントが聞かれた。

「9秒台は、昨日だったら出せていたかもしれません。その力はついている気がします。(高野コーチはまだ出てほしくないようだが?)自分も早いと思いますが、自分で自分が楽しみという部分もあります。出るときは9秒99ではなく、97や95まで行きそうな気がします。昨日のように、1日で2本目という時がいいかなと。
 春先は9秒台が出たらケガをするかな、という感覚でしたが、今は抑えられています。このへんとかあのへんとか、コントロールできていますね。昨日なんかも、全然言うこときいてくれました。上半身も、下半身も、まとまっていましたね。足首を捻挫して1回、練習をやり直して、夏に練習して、そこにスピードを加えていきました。その間に、それ(春先にやばいと感じたもの)に耐えうる身体ができたんでしょう。
 残念ですね。アップのときも問題なかったし、狙えるときに狙おう、というのがあったんですが…。100 mはこういうのがあるんでしょう」

高野進コーチのコメント
「出る雰囲気は、あるにはありましたが、狙いすぎたんでしょう。今日はアップも入念で、彼の中では狙っていたんだと思います。若いし、チャンスはいくらでもあるんですが、本人はやっぱり、今、出したいのでしょう。関東インカレは脚の状態が悪く、一か八かというところもありましたが、今回は全てがうまくきて、本人が期待過剰になっていたのかもしれません。
 こういうこともある、ということ。100 mはデリケートですから。まだまだ若い、ということでしょう。こういうチャレンジを何回かしていって、どんな精神状態でも出せるようになるんじゃないですか。ピークパフォーマンスがどう出るか、わかってくるんだと思います。
 まあ、記録は条件もありますし、失敗レースというわけでもない。インカレはこれが最後なんで、きっちり勝てればいいと思います」

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