2002/10/27 日本選手権リレー最終日
福島大が3年連続2種目制覇
マイルでは学生記録に迫る好走
どうして福島大勢はピークを維持できるのか?

 日本選手権リレー最終日の女子4×400 mRは、福島大が3分38秒05の大会新で優勝。前日の女子4×100 mRと合わせて3年連続2冠の快挙を達成した。日本選手権リレーの女子2冠は過去、福島大以外では東女体大が1981・88年の2回、埼玉栄高が90年に達成しているだけ。昨年の“2年連続”もすでに史上初だったが、今年の“3回目”は史上最多回数だったのである。
 惜しくも日本インカレで出した学生記録、3分37秒66には届かなかったが、3分38秒05は大会新。学生チームには記録はインカレでしか出せない、という傾向がある。シーズン最終戦となることの多いこの大会で、チームのシーズンベストを出すのはまず不可能。10月末でレースが夕刻となれば、気温も下がる。大きく記録が落ち込むのが普通なのだが、福島大はインカレの記録に0.39秒と迫ったのだから大健闘と言っていいはずだった。だが、レース後の福島大のメンバーは、記録的な不満を口にした。

02日本インカレ 02日本選手権
選手 lap 通過 選手 lap 通過
坂水 00:54.9 00:54.9 久保倉 00:54.63 00:54.63
木田 00:53.6 01:48.5 坂水 00:54.70 01:49.33
竹内 00:55.0 02:43.5 竹内 00:55.03 02:44.36
久保倉 00:54.16 03:37.66 木田 00:53.69 03:38.05
※日本インカレは陸上競技マガジン計測、日本選手権は福島大撮影のデジタルビデオのカウンターから算出。ともに公式計時ではない(が、正確度は高い)

 個々のラップタイムを見ると、「こんなに遅いのー」という落胆の声がいくつも挙がった。アンカーの木田真有は、6月の日本選手権(2位)、7月の南部記念(学生新で優勝)、8月のアジア選手権、9月の日本インカレとワールドカップ遠征(スペイン・不出場)、10月のアジア大会、そして直前の国体(2位)と、初めて経験するハードスケジュールだったはずだが「ラップ自己新の52秒9では走りたかった」と言うのだ。レース前の目標は3分35秒台だったという。「特に個々のタイム設定はしていませんでしたが、自己記録マイナス0.8〜1秒を考えていました」と、OBで400 mH日本記録保持者の吉田真希子コーチは明かした。

 他チームが軒並み記録を大幅に落とす大会で、福島大の選手たちはどうして、ここまで調子とモチベーションを高く保てるのだろう。国体で自己記録を54秒57に縮めたばかりの2走・坂水千恵に聞いてみた。
「どの試合でも記録を狙っています。毎回、普通に自分の走りをしようとしているだけです」
 どうしてそんな質問が出るのか、わからなかったかもしれない。それは当然のこと、という表情で話してくれた。吉田コーチにもう少し詳しく、解説してもらった。彼女自身、連戦をこなしても記録が下がらない選手の代表といえる存在だ。
「試合が練習よりも全然、楽だからでしょうか。みんな、“あと1本で冬期練習に入っちゃうんだ。寂しい”という気持ちだったと思います。
 何より、川本(和久)先生のコンディショニングが上手いからでしょう。トレーニングの流れで、調子が下がらないんです。そうすると、狙っていける気持ちが続きます。
 あとは、目標の設定の仕方。ただ走っても面白くないですから、難しい目標を設定します。今回で言えば優勝や学生新は当たり前で、3分35〜36秒を狙っていました。そういう目標を達成するのが楽しいんです」
 吉田コーチの話にも出てくる“トレーニングの流れで調子が下がらない”という部分の具体的な練習内容は常々、川本監督が「企業秘密」と話している点。そう簡単に話してもらえないとは知りつつ、ちょっとトライしてみたが、ああえなく失敗……でも、ちょっとヒントもあった。それは、機会を改めて。


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