2002/10/19 箱根駅伝予選会
前回2区途中棄権の法大が無事3位通過
個人では土井がトップ
土井、徳本、成田監督のコメントで法大の1年間を再現?
予選会成績は西條さんサイトで
前回の本戦で2区のエース徳本一善(現日清食品)が途中リタイア。上位候補の1つに挙げられていた法大が、予選校に転落した。それから10カ月余。法大は悲壮感なく予選を通過した。9区で区間3位相当の走りをした土井洋志は、日本インカレのハーフマラソン優勝に続き予選会でも1位。
取材した成田道彦監督、徳本、個人トップの土井洋志のコメントから、法大のこの1年間を紹介する。といっても、完全に再現できているとは思わない。たかだか、数十分の取材である。
前回の箱根駅伝
土井「(徳本の途中棄権は)寮のテレビで見ていました。年末からちょっと危ないのはわかっていましたので、“あーっ”とは思いましたが……。徳本さんがかわいそう、という気持ちよりも、“オレ、明日何しに行くんだろう”と思いました。でも、1日ありましたから、切り換えることができました。
当日は(徳本が走った場所とか)特別な思いはありませんでした。来年、出られるとは限らないので、“最後かもしれないから楽しもう”という気持ちでした。タスキが途切れてしまったものは仕方ありません。みんなで暗い顔をして走っても、面白くありませんから。特に8・9・10区の3人で話をして、8・10区の2人は4年生でしたし、最後だから楽しもうと心がけました」
成田監督「ウチの選手に“徳本ショック”はあったのかな、というくらい(に立ち直りが早かった)。普通、ああいうことになったら2日目の選手が走れないと思うんですが、そういう(走れる)キャラクターだったのかな、と思います。2日目の選手が集まって食事会を開き、明日は自分のために走ろう、と確認し合ったようです」
※実際、2日目の8・9・10区の選手は好走した。1日目の3・4・5区は区間11位・9位・9位相当で、2日目の6〜10区は区間15位・11位・6位・3位・8位相当だった。
箱根駅伝後
徳本「2カ月間はかなり落ち込みましたが、周りの後輩が****で、自分も見つめ直すことがちょっとずつでき、ちょっとずつ楽になってきました。大学4年生のときは、父親のように強い叱り方で後輩たちと接してきましたが、今年は母親役というか、怒るのではなくて悩みとか聞いたりして、接してきました。4年生のときに今のような考え方が少しでもできていたらと、気づかされました」
土井「(すぐに予選会のことは)全然、考えませんでした。とにかく、一区切りがついたわけで、何も考えなかったと思います。予選会のことを多少は考えたかもしれませんが、慣れていますから(今回で3回目。2年前も3位と日本人トップ)」
成田監督「みなさん“徳本ショック”ということを言われますが、選手にはそれほどなかったように思います。スタッフには、尾を引いた部分がありましたけどね。それも今日で、区切りがついたと思います」
徳本「僕が箱根でああなって、すごい責任を感じていましたが、周りが自分自身のこととして、悔しく感じてくれた。僕のことというよりも、自分のこととして受け止めてくれた。1人のことでなく、10区間のこととして感じ、(自分と)同じように成長してくれました。これほど強いものはないと感じました。特に土井なんか、箱根の要素を全て経験して、強くなって帰ってきてくれました」
予選会前
土井「(全員がオレンジに髪を染めたのは)みんなで、法政にしかできないことをやろう、と話し合ったんです。メンバーだけでも、髪の毛を明るい色にしようと。(1つになろうとか)それほど深く考えていたわけじゃありませんが、とにかく法政にしかできないこと、ということで。ウチだけですよね、こういう話題を提供できるのは。
(腰の喪章は)寮で飼っていたプリンちゃんという犬が、10月に車に轢かれて死んでしまったんです。もう15年とか16年、寮で飼っていて、誰もどういう経緯で飼うことになったのか知らないんですけど、寮に入ったときからいるのが当たり前の存在でした。みんな愛着を感じていた犬だったんです」
成田監督「土井の調子が心配でした。9月中旬の合宿で練習ができない時期があり、その後10月10日まで練習やって最終調整をしましたが、その最終調整で4日間、腹痛が出てしまいました。10月10日に多摩川で全員が20km走をやったんですが、13kmで走れなくなってしまいました。それから、眠れない日々が続きました。だから今日は、好きに行っていいよと言いました。まあ、抑えて入りなさいと指示しましたけど。60分30秒でいいよと言いましたから、59分47秒はビックリです」
予選会当日
徳本「15kmの一番きついところと、ラスト1kmで応援しました。土井は名実ともにナンバーワン。それを今日、証明したと思います。安心して、落ちついて見ていられました」
土井「5位くらいでいいかな、と思っていたのでトップを取れたのは上出来。予定以上ですね。1位は取りたかったですけど、そう簡単に取れる人は少ないでしょう。
1位になれてよかったですけど、展開的には悪かったですね。1人で悪い展開にしてしまった感じです。最初は前にいて引っ張る感じでしたが、しんどくなって後ろに下がったら開けられてしまって、ずっと追う展開でした。2周目だったと思いますが、10m以上は開いたと思います。追いついたらまたペースが上がって離れてしまって…。無理して潰れないようにしたというより、常に潰れてるような状態で、余裕が持てませんでした。本当は前にいて、対応できる範囲で進めたかったんですけど。今までで一番アホなレースをしてしまいました
全カレにしても今日にしても、自分が離したというよりも、相手が離れていってくれた感じで、自分がすごいわけじゃない。仕掛けたというより、追いついてそのまま行っただけ。ゴール前で後ろを見たら(写真)いなくて、勝ったという感じ。自分なんか、1人で何をしていたんだろう、というレースでした。適当に走っただけ。こんなもんじゃ、坪田(智夫・コニカ)さんや徳本さんには、まだまだ届いていません。満足なんてしていられません」
成田監督「終わってみれば予定通りでしたが、何とも言えない緊張感がありました。土井の走りを見ていたら、10kmでは第2集団まで下がってしまうと感じたんですが、15kmでは追いついていました。我慢強さもあるし、集中力もあるんでしょう。たぶん、本人も嬉しいと感じていると思いますよ。徳本みたいに表にうまく出すタイプじゃありませんが。本人は勝てると思っていなかったでしょうし」
箱根駅伝本戦に向けて
土井「出るからには、2区を走りたいと思います。(区間賞は)できれば狙いたいですけど、ずっと勝てる人というのはいないと思いますし、狙おう狙おうとすると硬くなります。走りはレース展開によって変わってくるので、展開も(区間順位に)影響します。取れればいいな、というスタンスです」
徳本「僕はあおるだけで、やらなきゃいけないのは選手たち。上の方の選手は箱根に向けて意識は高いので、あとは下の方の選手に渇を入れるだけです。(1年前に練習しすぎて失敗したが)ホントにパフォーマンスを上げる部分は、とことん追い込んで初めてわかります。たぶん、故障していなければ一番いいパフォーマンスができたと思います。選手本人が納得できる練習をするしかないと思いますし、体調は選手自身が管理すること。僕が(とやかく)言うことはできないでしょう。
(前日の)ニューイヤー駅伝が僕にとっての山場。どうしてもやらないといけない試合の1つです。箱根の前日ですし、徳本健在を示さないといけない」
成田監督「最低でも6位には入りたい。せっかくここまで走れるようになったわけですから、9位とか10位を狙うわけにはいきません。やれるんだから、上を狙おうと思います。土井には、坪田や徳本と同じ働きを期待しています。(キャラクターは違っても)やることは一緒。坂を走れるかどうか、などと言われたこともありますが、札幌ハーフで日本人3番になって自信を持てました。2区も大丈夫です。最初からボンとは行けないかもしれませんが、トータルでは走ってくれるはずです」
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