2002/4/22
ロッテルダム・マラソン翌日の日記
最も印象的だったのは大南敬美選手の表情


 えーっと、4月22日の日記を書いていたら長くなってしまったので、独立させました。別にすごい情報とか、すごい意見とかではありませんので、念のため。

 昨日(4月21日)のロッテルダム・マラソン。寺田が一番(かなり個人的に)印象に残っているのは、日本の上位独占でも、2時間23分台の優勝記録でもなく、大南敬美(UFJ銀行)選手のフィニッシュした際の表情でした。まさに歓喜の表情と言うのにピッタリで、何度も両腕でガッツポーズ。男子選手の力強いガッツポーズとは違い、女性らしいガッツポーズという印象でした。彼女のあんな喜び方は見たことがありません。
 大南姉妹はキャラクター的に、どちらかというと“感情を表に出さないタイプ”と思っていました。当たり前ですが、過去のレースであそこまでの表情が絶対になかったと、証明することはできません。2位となって世界選手権代表を決めた昨年の名古屋国際女子マラソンでは、あそこまでの表情はありませんでした。それは確かですが、東海銀行が全日本実業団対抗女子駅伝に優勝したときがどうだったのか、淡路島女子駅伝で連勝していたときがどうだったのかは、取材に行っていませんし、仮に取材に行ったとしても、特定の選手の表情に注目しているわけでもありません。ただ、陸マガ編集者だったころ(2000年3月に退社)、その大会を担当すれば、カメラマンが撮影してきたフィルムの全コマに目を通すわけです。それらの中で、大南姉妹が今回ほどの表情をしていた記憶はありません。

 それだけ、会心のレースだったということでしょう。大南敬美選手は駅伝での全国優勝はあっても、個人での全日本クラスの優勝はなかったと思います(間違っていたらご免なさい)。まして、勝った千葉真子選手は97年世界選手権1万m銅メダルと、かつては“雲の上の人”だったランナー。昨年のエドモントン世界選手権で、5人出場した日本選手全員が22位以内に入るなか、ただ一人37位と大敗したことも気持ちの中で引っかかっていたのかもしれません。
 それに加えて、2時間23分42秒という日本歴代6位の記録。「優勝したのはもちろんうれしいが、タイムがうれしくて仕方がない」というコメントを共同電が伝えています。確かに世界は2時間18分台に入っていますが、高橋尚子出現以前だったらこの記録でも大幅な日本最高更新ということになります。根拠があるわけではありませんが、2時間24分台と23分台では、選手にとって“数字の響き”が違うのではないでしょうか。

 これで、パリの松岡理恵(天満屋)選手が2時間24分台、ロンドンの土佐礼子(三井住友海上)選手が2時間22分台、そして大南敬美選手と4月の海外3レースで、昨年のエドモントン世界選手権代表だった3選手が好走したことになります。松尾和美選手が引退した点を考慮すると、4人中3人ということになります。残りの1人は、秋の海外マラソン出場を予定している渋井陽子(三井住友海上)選手で、鈴木秀夫監督や土佐選手の証言から、彼女も絶好調のことは確実です。エドモントン組はこの春、100%の確率で好調さをアピールしているわけです。
 それに反して、女子マラソンのシドニー五輪組は3人中2人が、いまだ復帰レースができていません。男子マラソントリオも五輪後にレースには出ていますが、会心の走りはありません。それだけ、オリンピックのプレッシャーが大きく、反動が大きいいうことかもしれませんが、なにせ、数が少なすぎるので、統計的に説得力のあるものとはいえないでしょう。つまり、単なる偶然で済ませられる数ということです。
 このことに関して小出義雄監督がどうコメントされるか、聞いてみたい気がします。他チームの選手のことまでコメントしてくれる指導者(コメントして許される指導者)は、日本に多くいませんから。

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