2001/4/22
ロンドン・マラソン特集
レース後の一問一答
犬伏孝行 編
Q.ゴールして、どんな感じですか。
犬伏 きつかったです。40kmから左腿の裏がピクピク来ました。マラソン・レースでこうなったのは、ボストン(98年4月)以降はないですね。まあ、どうにか11分台で抑えることができました。秋にもう1回、どうにかマラソンをやれるかな。国内だけでなく、こういうメンツの中に身を置くのが大事だと思います。どうにか、世界の流れに入っていけるなと、感じることができました。
Q.ホッとした部分がある?
犬伏 少しはありますね。3月半ばまでトレーニング(が完全な状態で)できず、初めて40km走ゼロで臨みました。高地トレーニングもそうですが、新しい試みがプラスに作用すればと思っていました。
Q.高地トレーニングはどう評価しますか。
犬伏 トレーニング自体は帳尻合わせで、思ったほどやれていませんでしたが、11分台は自己3番目の記録です。やれていない割には、よしとしたいです。
Q.先頭から遅れたのは?
犬伏 タワーブリッジのあたりですから、20km付近です。橋に向けて一気に上るんです。そこは対応しましたが、そこで体に来ました。そこまで、ラビットのペースは思ったよりも遅かったんですが、エルムーアジスやピントなど、集団の中で有力選手の出入りがあって、ペースを上げたり下げたり、中で駆け引きをしていました。集団から遅れた後は、イギリス選手としばらく一緒でしたが、その選手が抜け出て、ワイナイナや黒人選手にも抜かれ、アントンが来て一緒に行きました。でも、アントンは前に出てくれず、25kmからはずっと1人で引っ張る形でした。
Q.20kmまでは楽に行けているように見えましたが。
犬伏 調整自体はまずまずでしたので、体には余裕がありました。でも、ペース変化が苦しかったですね。いつもならちょっと我慢すれば大丈夫なんですが、今回はかなり来ました。
Q.ボストン(98年)、ベルリン(99年)と比べて、印象は違いますか?
犬伏 メンツが、世界のトップクラスがほとんど出ているってことが、これまでの(海外の2レースとは)違います。何人か、ボストンに流れていますが、それでも、ピントやテルガトをはじめすごいメンツです。そういう部分で、マラソンの主流はロンドンになりつつあるのかな、と感じました。
Q.その中に入ったと言っていいわけですが?
犬伏 11分台で7番ですから、どうにかこうにかですね。僕が動くことでレースが動くようになれば、勝負はやりやすくなりますね。
Q.やっぱり、集団はピントが支配している感じでした?
犬伏 集団で走っていて、ピント、エルムーアジス、それにテルガトが中心だなって感じました。
Q.ピントをマークしていたように見えましたが。
犬伏 黒人だと、リズムが合いにくいんです。ピントとか、がっちりした白人の後ろの方が走りやすいんです。
Q.賞金は気にして走っていました?
犬伏 できれば、12分はかかりたくなかったです(2時間12分かかると、タイムボーナスが出なくなる。こちらに賞金額一覧表)。ハーフで体がきつくなって、どうなるかと思いましたが。風も向かっていましたし。
Q.風はきつかったですか?
犬伏 集団にいたときは気にならなかったんですが、1人になってからは気になりました。25kmからはアントンに後ろにつかれてしまいましたし。1回だけ前に出させたんですが。
Q.次のオリンピックに向けてつながりますか? どんな位置づけになりそうですか?
犬伏 つながるかどうかわかりませんが、途中棄権に終わったオリンピックの次の大会で、11分台でゴールできたのは、次のマラソンにつながると思います。当初は1月から、4〜5回こなす予定だった40km走が0回で、そういう流れで出した11分台ですから。
Q.マラソン出場を秋にずらすことは考えなかった?
犬伏 走れないことはないと思いましたし、いろんな人と契約の世界でやっている部分もありますし、ずらすことは考えませんでした。
Q.大塚製薬の後輩の岩佐敏弘選手が、40km走をほとんどしないで初マラソンに臨んだのが参考になった?
犬伏 岩佐とは練習の流れも、動きも違いますし、秋までトラックの選手とは比べられません。
Q.スタート前の精神状態は、これまでのレースと比べてどうでしたか?
犬伏 他のレースとはメンツが違います。これだけのメンバーですから、スタート前はかなりドキドキしました。
Q.オリンピックもすごいメンバーでしたが。
犬伏 オリンピックは、スタートラインに立つまで余裕がなかったですね。今、考えると、体調がよくて、1カ月前から入れ込みすぎていました。カリカリ、イライラすることが多かったと思います。今回、マラソンとしてはどうにか、現在の状態をベストに持ってこられたと思います。成功しても、失敗しても、新しいものは得られたと思います。こういう中に身を置いてやれたことはよかったと思います。
Q.オリンピックはもう、引きずっていない?
犬伏 レースは1つ1つ、全然違うものですし、マラソンは年に2本しか走れない。引きずっていても仕方ありません。オリンピックという場での途中棄権はなかなかリセットできませんし、悔いはありますが、リベンジとかは思っていません。1つ1つが挑戦です。いろいろな部分で。トレーニング、レース、海外。今後のビジョンはまだ明確になりませんが、今の時点では、秋のシカゴに出ようと思っています。