スポーツ・ヤァ!011号
別大マラソン
藤田の駒大1期後輩の西田が挑戦!
取材:1月22日
箱根駅伝のスター選手が、必死で何かを探り当てようとしている。
「別大での目標は自己新です。本当はもう少し上の目標を言いたいところですが、去年のびわ湖マラソンが30`以降まったくダメでしたし、練習も中断していた時期がありましたから」。
控えめに語る西田隆維(エスビー食品)だが、正真正銘、日本期待の選手である。
西田は、昨年12月に日本最高(2時間06分51秒)を出した藤田敦史(富士通)の、駒大の1年後輩にあたる選手だ。2人の足跡は似ている点も多い。藤田が大学3年時に30`の学生最高を出すと、翌年の同じ大会で西田がそれを更新した。藤田は4年時の箱根駅伝4区で区間新を出して往路優勝を決定づけたが、翌年の西田は9区区間新で総合優勝を確固なものとした。
当然のように、藤田が学生最高記録を出した箱根駅伝2カ月後のびわ湖マラソンに、西田も挑戦した。だが、30`過ぎのペースアップについていけず、2時間13分46秒で13位。学生選手としてみれば悪い結果ではないが、前年の藤田とは3分39秒、距離にして1`以上の差があった。
「練習は前年の敦史さんと同じ流れで、同じようなタイムでこなせていたんです」
マラソン練習には、ポイント練習と呼ばれ、負荷の高い内容をこなす日が、2〜4日間隔で設定されている。続けて設定されていないのは、毎日全力で走っていたら疲れがたまる一方だからだ。そのポイント練習では、藤田と同じレベルだったわけだ。
だが、結果は大きく違った。
「違ったのは、普段の生活と休養的練習日のジョッグなんだと思います」
マラソン練習の難しさのひとつに、西田のいう“つなぎの練習”のこなし方が挙げられる。疲れをとるのも目的だから、やみくもにスピードを上げるわけにはいかない。だが、そこで距離を踏むことも必要だし、ジョッグの最後だけスピードを上げるような工夫もすることができる。そのさじ加減は、指導者が指摘できる場合もあるが、選手が自分の体調を判断しながら行う必要がある。
「びわ湖では経験するだけでつかむものがなかったけど、別大では2〜3年後の自分を見据えるための手応えをつかみたい」
藤田にアドバイスもしてもらい、「なんとなくわかってきた」(西田)点もあるという。前半から先頭集団を引っ張ることはなさそうだが、30`以降で西田がどんなレースをするかで、この1年間、考えて練習してきたことの成果がわかる。
王国・旭化成からはシドニー五輪代表の川嶋伸次、前回優勝者の榎木和貴、地元大分出身の真内明が出場する。マラソンは個人種目ではあるが、旭化成はチームとしての強化を重視している。チーム内の相乗効果により2時間10分未満、いわゆるサブテン選手を次々に(なんと9人も!!)輩出し、シドニー五輪代表男子3選手中、2人を旭化成が占める結果となった。
ところが、シドニー五輪を前にして、旭化成には故障者が続出。そのためとは必ずしもいえないが、シドニー五輪の日本男子は大敗した。今年に入っても元旦の全日本実業団駅伝で、旭化成はチーム史上最低順位の8位に終わっている。
川嶋、真内、榎木の3人は、元旦の駅伝には出場せず、別大に向けて練習を組んできた。そういえば、97年に旭化成選手として6年ぶりに2時間10分を切り、王国復権の旗手となったのが、当時中堅選手に過ぎなかった真内である
「なんとか再上昇のきっかけとなるレースにしたい」。宗猛副監督の言葉に、切実さと希望を託す様子がうかがえた。
そして、一昨年日本最高記録を出し、シドニー五輪代表になった犬伏孝行を生んだ大塚製薬から、スピード豊かな岩佐敏弘が初マラソンに挑む。今回は結果を求めないというが、「2時間5分台を将来狙える素材」と、河野匡監督は期待を寄せている。