サンデー毎日増刊「女子駅伝2001公式ガイドブック」
SPECIAL INTERVIEW
[弘山晴美の理由]
走り続ける気持ち
資生堂の過去最高順位は1996年の16回大会における5位。東日本大会は92年と96年の2度優勝を達成しているが、全国の壁に跳ね返され続けた。昨年、三井海上が優勝するまで東日本のチームで全国も制したのは、リクルートただ1チームだけ。東日本では勝てても、ワコールやリクルート、そして沖電気宮崎といった強豪チームに比べると、選手層が見劣りしたのは事実だ。
弘山 これまで全国で勝とうという雰囲気はなかったですね。監督やコーチも何も言いませんし、駅伝とマラソンを別れてやっていたような感じで、チームとしても1つになれなかった。駅伝の時期って東京国際女子マラソンと重なりますよね。そこに出る選手も多かったですから。まず、個人で結果を出そうという雰囲気がウチの部にはあります。駅伝に「優勝するぞ」と言って臨んだことは一度もなかったですね。実業団駅伝は10kmをきちんと走れる選手のいるチームが強いじゃないですか。今まで、私くらいしかいなかったんです。マラソンは走っても、みんな駅伝の10kmは走りたがらなくて…。
それが今年はエスタ(エスタ・ワンジロ=日立から移籍)と加納(由理=立命大卒)が入ってきて、駅伝で上位を目指そうという雰囲気になってきました。プレッシャーがかかると思っているのか、コーチたちもまだ誰も口には出していませんが、年上の私が言わないからかも。そろそろ、私が言い出さないといけないのかな、と思っています。
弘山は1500m、3000m、5000mの日本記録を持ち、5000mでアトランタ五輪、1万mでシドニー五輪に出場。ワンジロはケニア代表として出場したシドニー五輪マラソンで4位、さらに3区の区間記録保持者でもある。加納は日本インカレ1万m2連勝&同種目ユニバーシアード銀メダリストという学生トップランナーだった。そして今年、高橋教子が5000mで15分29秒87と日本のトップレベルに進出。山内美根子は近年マラソン中心に出場しているが、高校・大学時代にはトラックで全国タイトルを手にしているスピードランナーだ。
弘山 これまで全日本実業団駅伝は全て3区(1年目は2区だが現コースの3区にあたる)に出ているんですが、私が3区じゃない可能性も出てきました。ただ、エスタが今のところ本調子ではないし、加納も全日本実業団で走れていませんでした(1万m34位)。その2人がどう、上がってくるかですね。明るい話題は高橋と佐藤(由美)。本人は距離に対して自信がないようですが、高橋は10kmも無理じゃないと思います。佐藤(学生時代に15分22秒86の学生歴代2位)は故障して太った状態で入ってきてんですが、今年やっと気持ちも前向きになり走れる状態になってきました。本人もそのつもりだと思うんですが、駅伝でかなり走ってくれそうです。
こうして見ると確かに人材はいるんですが、それは他チームも同じ。三井海上、積水化学、東海銀行、それにワコールも前半は強いし、グローバリーも真木(真木和コーチ=1万m元日本記録保持者)ちゃんが復活してきたら、強いと思いますよ。
ですが、ウチも今年は気合いが違います。まとまりが今のところまだないんですが、できるだけ一緒に練習します。駅伝で上位を目指そうという雰囲気はできつつあるので、あとはいかに体調を上げて、本番できちんと走れるかだと思います。
弘山は全日本実業団駅伝に91年から連続出場し、1回だけ(97年)チームが欠場した他は全て3区を走っている。94年大会は22位から5位に進出し、当時の“ごぼう抜き記録”の17人抜きを達成。しかし、意外なことに区間賞は96年大会の1回しかない。
弘山 17人抜きのときは途中、何人抜いたか数えていなくて、あとで聞いて「すごい人数だったんだ」と自分でも驚きました。でも、「それだけ抜いても区間賞を取れないんだ」って思ったことを覚えています。
区間賞と17人抜きのどちらが嬉しいかと聞かれたら、区間賞ですね。区間賞はいつも狙ってはいるんです。3区はアップダウンもあるし向かい風のこともあって、難しいコースです。体調が万全でないこともあるし、集団から離れて一人で走らないといけないこともある。狙っていてもなかなか取れませんね。区間賞が取れてチームの順位もいいというのが、一番いいんですが。
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