陸上競技マガジン2002年7月号
陸マガ独占インタビュー
綾 真澄
66mが出た瞬間“ヤバイ!”と思いました。

 綾真澄(グローバリー)が5月12日の中部実業団対抗で66m23、同25日の中京大土曜記録会で66m27と、日本新を連発した。昨年10月の国体で自身がマークした64m43を大幅に更新し、来年の世界選手権B標準(64m00)を軽く突破。アジア記録(66m97)にも迫る快記録だったにもかかわらず、フィールドの綾は、嬉しそうな表情一つ見せなかった。カメラマンからガッツポーズの注文があっても応じない。しかし、その姿にこそ、綾の今年の成長があったのである。

「第三段階までやった結果右足の接地が上手くいき、日本新が出ました」
◆3月に中京大を卒業。社会人となった今季の綾は、表のように群馬リレーカーニバルが第1戦で、中京大土曜記録会が第4戦。どのような流れで、試合を消化してきたのだろうか。
 群馬では63mが出ました(63m28の自己2番目の記録)が、やらないといけないことが頭の中でゴチャゴチャになっていて、全然ダメでした。6投目だけちょっとよかったんですが、やけくそで1つだけ(ポイントを)やってみた結果です。
 織田記念では滑るサークルに対応できませんでした。逆のことをやってしまっていました。61mという結果は自分の中では最低の記録。どちらかというと滑らないサークルの方が得意なんですが、どちらでも投げられるようにしないといけませんね。
 中部実業団では2投目まで、基本プラス第二段階までやってみて、3本目から第三段階までトライしました。2投目までは、第三段階までやれる自信がなかったんです。3投目で、右足の接地を直す狙いで、第三段階までやってうまくいきました。
◆女子ハンマー投が行われた中部実業団2日目は、女子投てき3種目の日本記録保持者が登場したが、これといった記録は出ず、淡々と競技が進行していた。そこに突然、綾の気合いの入った声が響き渡った。
 「66mいった」というのがわかったわけではありません。1・2投目は思い切り振り切れなかったのが、3投目は右足の接地がうまくいって思い切り振り切れたので、自然と声が出ました。1・2投目は右足の接地が遅かったのですが、そこが決まったから「いってくれー」という感じで。
 ところが4・5投目はまた、やることがゴッチャになってしまいました。6投目にまた「少しできたかな」という投てきでしたが、64m台でした。もう1本65m台が欲しかったですけど、次につながる投げだったと思います。
◆中部実業団で成功した技術が、土曜記録会では1投目から出せたという。
 中京大ではトライアルの時点で、中部の2投目までのことがクリアできていたので、1投目から第三段階までやってもいいと感じていました。2投目で4cm(日本記録を)更新でき、3投目以降も第三段階までやっていたのですが、動きが変わってしまいましたね。それでも、5投目に65m台が出たのは、私の中では大きなことです。合宿中の試合で、前日に少し休んだだけの調整でこの記録が出たのは、自信になります。
「“肩抜き”が上手くいくと回転が大きくなるので、相対的に右足の接地が早くなります」
◆第一段階から第三段階とは、具体的にどんなことなのだろうか。
 第一段階は、「左手一本の回転と加速」です。ハンマー投は左半身に軸を作って回転しないといけないんですが……

※この続きは6月14日発売の陸上競技マガジン7月号をご購読ください。

この続きの内容(見出し)は以下の通り。
「昨年は“感覚”に頼った投げでした。“ここをこうすれば、絶対にこうなる”というものがなかった」
「“アジア記録(66m97)はいきたい”気持ちはありますが、世界選手権でどう戦えるのかまでは、まだ考えられません」