陸上競技マガジン2014年4月号
日本選手権20km競歩
鈴木雄介 1時間18分17秒=日本新
史上最高レベルの戦い! 鈴木、高橋が1時間18分台


学生3選手がハイペースの飛び出し
 男子20kmWの昨年の日本新2連発(日本選手権&全日本競歩能美大会)は、鈴木雄介(富士通)個人の頑張りに負うところが大きかった。だが今大会では、競歩界全体のレベルアップが日本記録更新という形になった。
 レース展開にそれが現れていた。
 飛び出したのはモスクワ世界選手権6位入賞の西塔拓己(東洋大)で、高橋英輝(岩手大)と松永大介(東洋大)が横に並び、学生3人が引っ張る形で進んだ。
 西塔は「積極的なレースをする」と話していた通りの展開。12月に10000mWで日本新を出した高橋は、「代表になる前に、まずは西塔君に勝ちたい」と、同学年へのライバル意識をモチベーションに歩いた。そしてジュニアの松永も、「後ろについてしまったら(気持ちで)タレてしまう。横につけた方が歩きやすい」と積極策に出た。
 学生3人が横一線で最初の1kmを3分51秒で通過。このハイペースに、藤澤勇(ALSOK)こそ3人の後ろにつけていたが、鈴木は3〜4秒後方の大集団を歩いていた。
藤澤の予想外のペースアップ
 しかし1km以降はペースが落ち着き、鈴木も4kmまでに先頭に追いついた。集団は5人。
「学生たちが最初に行くのは予想していましたが、そこで自分は行き過ぎず、1周(2km)7分50秒イーブンで行こうと思っていました」(鈴木)
 ペースは落ち着くかと思われたが、藤澤が5km付近で先頭に出た。学生勢の飛び出しの影響で5km通過は19分32秒。かなり速い展開(表参照)の中で前に出た理由は何だったのか?
「久しぶりに体が動いて、気持ちが乗って出てしまいました。前が学生たちでしたから、“速くない”と思いたかったのかもしれません」
 ロンドン五輪代表だった藤澤だが、昨年は世界選手権代表から外れ、記録的にも同学年の鈴木に1分半の差をつけられていた。その藤澤が奮起し、6〜7kmは3分52秒。再び日本記録更新のペースに戻った。
史上最高レベルのマッチレースに
 藤澤が一時は数mリードし、そこで松永は後れたが、藤澤もそれ以上は行ききれない。間もなく集団に吸収された。意外だったのは9km付近で西塔が後れ出したこと。
 10km通過は鈴木、高橋、藤澤の3人が39分02秒。西塔も39分22秒と自己新ペースだが、1kmの間で20秒も離された。そして10kmを過ぎると藤澤も後れ、鈴木と高橋のマッチレースに。
 実績で劣る高橋だが、「何がなんでも日本一になりたかった」と、一歩も引かない。
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