陸上競技マガジン2014年3月号
日本選手権20km競歩展望
六甲アイランドに世界が注目!
空前のハイレベルレースは必至

●「世界選手権入賞より難しい」
「今年の日本選手権で勝つのは、世界選手権で入賞するよりも難しい。そう感じています」
 モスクワ世界選手権6位の西塔拓己(東洋大3年)のコメントからも、2月16日の日本選手権競歩がすごい戦いになることが予想される。
 男子20kmWでは昨年、日本の競歩レベルが上がったことを証明する話題がいくつもあった。先陣を切ったのは11年世界選手権8位入賞者の鈴木雄介(富士通)で、2月の日本選手権で13年ぶりに日本記録を更新すると、3月の全日本競歩能美大会では日本人初の1時間18分台に突入した。
 能美で出した1時間18分34秒は2013年世界2位のタイム(表1)。世界選手権は12位と失敗したが、日本の第一人者という評価を得ている。
 続いたのが西塔で、日本選手権で鈴木の学生記録を破ると、8月の世界選手権で6位と健闘。全種目を通じての日本人過去最年少入賞者となった。今回の日本選手権は、20kmWの世界選手権入賞者同士が初めて対決するレースでもある。
 10000mWでは12月に、高橋英輝(岩手大3年)が森岡紘一朗(富士通)が持っていた日本記録を39分06秒87と更新。高橋は10月の全日本競歩高畠大会にも優勝。同学年の西塔に勝つことを目標に、地方国立大ながら高い意識で競技に取り組み力を伸ばしてきた。
 鈴木と西塔のリターンマッチ、高橋の西塔への挑戦が今回の日本選手権の焦点だが、見どころはその2つにとどまらない。ロンドン五輪代表の藤澤勇(綜合警備保障)は昨年こそ調子を落としたが、1月の宮崎合宿では鈴木と同じ練習をこなしたという。50kmW代表の森岡、谷井孝行(SGHグループさがわ)、荒井広宙(自体学)も1時間20分台で歩いてきそうだ。
 西塔は「松崎(鷹樹・東洋大3年)も10000mWで39分台を出し、1時間20〜21分の手応えを持っています。松永(大介・東洋大1年)は体力面が課題ですが、スピードはあります。化ける可能性は一番ある選手」と、東洋大勢の充実をアピールした。
「僕自身は世界選手権入賞者と言っても、記録的には過去の五輪、世界選手権だったら入賞できないレベル。まだまだ未熟なので、いつもの積極的なレースをするだけです。それでも最近は“強さ”を求めるようになってきました。壁は厚くて高いですけど、そろそろ勝ちたいと思っています」
 表1のように2013年世界30傑に入った日本選手数は6人で、これも史上最多だった。中国には及ばないが、ドーピング禍に揺れるロシアの5人を抑え世界2位に躍進した。大会別の人数で見ても日本選手権(神戸)は6人と、中国選手権に続いて2番目に多い。
 全世界が2月16日の神戸に注目している、といっても過言ではない。
この続きは陸上競技マガジン 3月号でご覧ください。

●西塔の同学年、高橋の台頭
●鈴木の意識は「試合で力を出す」
●50km勢とジュニアのレース展開は?
●20kmW盛況の意味するところ
と続きます



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