大学駅伝2013-2014決算号
“大迫世代”は学生史上最強だったのか?
設楽兄弟、服部、矢野、窪田、油布がチームの優勝に貢献
10000m27分台3人は学生史上初!

 実業団の指導者間でも「強い学年」という評価が出ていた今季の4年生。東洋大、駒大、日体大の箱根駅伝上位3校は、日本のトップレベルの4年生がチームを牽引した。そして1万m日本人学生最高記録(27分38秒31)を樹立し、モスクワ世界選手権にも出場した大迫傑(早大)の存在。“学生史上最強”という声も出ている今年の4年生の強さを、いくつかの角度から検証する。

●1万mのレベルは過去最高
 1万mのレベルは今季の4年生が、学生では史上最高だった。
 学年の看板である大迫傑(早大)が1万m日本人学生最高記録(27分38秒31)を樹立し、設楽啓太・悠太(東洋大)も27分台をマークした。表2に示したように、1つの学年で3人が27分台をマークしたのは学生長距離史上初めてである。
 さらにいえば、同一シーズンに27分台を学生3選手が出したことも初めてであり、双子という特殊性があったとはいえ、同じ大学の2選手が同一シーズンに27分台を出したのも初めて。また、大迫が2年連続27分台で走っているが、これも学生では初の快挙だった。
 設楽兄弟自身は「箱根は通過点」という点を強調しているが、東洋大チームとしては箱根駅伝を目標としたトレーニングの流れを組んでいる。酒井俊幸監督は次のように話した。
「一緒か別かと聞かれたら、設楽兄弟も箱根の強化と一緒ですね。距離や設定タイムが違ってくることはありますが、トレーニングは他の部員と同じです」
 学生の27分台はこれまで、早大のエースか佐久長聖高OB、あるいは一匹狼的な選手が出すもの、という雰囲気があった。東洋大の選手が27分台を出したことは、箱根駅伝への取り組みがレベルが高いものになっていることを示している。
 表1に大迫世代7人の4年間の成績をまとめたが、4大学のうち東洋大、駒大、早大で1万mのチーム記録が更新されている。唯一できなかったのが日体大で、07年に北村聡(現日清食品グループ)が出した28分00秒22を更新できなかった。4月に服部が28分22秒79を出して射程圏内と思われたが、その後腰を痛めたり、教育実習も入ったこともあり実現できなかった。
 日体大の別府健至監督は「服部は27分台を出す力はあったと思います、十分に」と言い、4年生についても、「服部を中心に周りも一緒に成長した。一番強かった学年」と認めている。

●全てがナンバーワンの学年ではない
 そんな大迫世代だが、過去の強かった学年と比べ、すべてがナンバーワンだったわけではない。
 国際大会の成績は、大迫が世界選手権21位と健闘したが、95年世界選手権の渡辺康幸(早大。現早大監督)は12位だった。27分台で走った回数も渡辺が3回で、これも大迫を上回る(表2参照)。瀬古利彦(早大)はそれ以上のレベルで、優勝したDNガランは現在のダイヤモンドリーグであり、27分51秒61は当時の世界記録に約30秒と迫るタイムだった。
 マラソンは窪田忍(駒大)が昨年3月のびわ湖で挑戦したが、2時間15分48秒(28位)と学生歴代25位前後と良くなかった。今後2月、3月に出場する選手が出てくるかもしれないが、現時点での情報はない。
 2年前に卒業した学年にも、1万mの学生日本人最高を出した鎧坂哲哉(明大。現旭化成)、箱根駅伝5区を4年連続区間賞で走った柏原竜二(東洋大。現富士通)と、トラックと駅伝に強力な選手がいた。特に12年箱根駅伝は柏原が1時間16分39秒の区間記録を出し、総合でも4年生4人が走った東洋大が10時間51分36秒という驚異的な大会記録で走破した。
 大迫世代も箱根駅伝の区間賞の数は多いが、区間記録となると設楽悠太が2年時に7区で出した1つだけ。その点、09年大会で4年生だった佐藤悠基(東海大。現日清食品グループ)と竹澤健介(早大。現住友電工)の学年は、4年間で佐藤が3個、竹澤が1個区間新をマークした。2区で2回区間新を出したモグス(山梨学大)を加えれば6個になる。
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●大迫、設楽兄弟が活躍した1、2年時
●3年時に日体大のサプライズ優勝を実現させた服部と矢野
●全日本3連勝の駒大に陸上界から高い評価
●大迫世代の卒業後は?
と続きます



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