陸上競技マガジン2012年8月号
ロンドンオリンピック直前スペシャル師弟対談
江里口匡史 × 朝原宣治
継承される日の丸魂

●北京で固まった決意
江里口 僕の北京五輪の印象は、単純にボルト(ジャマイカ)の9秒69を見て、「世界のトップはこんなに速いのか」と驚愕していました。でも一番の衝撃は4×100 mRの決勝ですよね。大学の寮で見ていましたが、フィニッシュした瞬間に日本が銅メダルとわかって、皆で歓声をあげていました。9秒台の選手たちがいるチームとあの場で戦うのは大変だということは、僕でもわかりました。朝原さんは4走でしたが、2走と4走は単純にスピードが求められます。そしてアンカーはチームの中でも一番信頼されていないと任されませんよね。それがオリンピックの決勝ですから、朝原さんのプレッシャーはどんなだろう、と想像していました。
朝原 江里口君とは北京五輪の年の日本選手権で一緒に走ったよね(朝原3位、江里口6位)。強くなりそうな学生だな、という認識は持っていたけど、自分が代表権を取ることに必死で、江里口君の走りまでは見ていなかった(笑)。
江里口 北京五輪は僕も目指していましたが、今考えるとどこまで本気だったのか。テレビで見ていても、そこに行って走るイメージは持てませんでしたから。そもそも自分には代表になるには足りないものが多すぎた、甘い考えが強かったと思い知らされました。でも4×100 mRを見てすごいと思ったし、代表になって世界の舞台で戦いたいと思い始めたのは確かです。決意、覚悟を固められたのが北京五輪でした。

●走る感覚の共有
朝原 江里口君を初めてじっくり見たのは、2009年の日本選手権だったね。10秒07で走ってすごいと思ったけど、条件が良かったのかな、とも思った。しかし9月の日本インカレでも10秒13で走ったと聞いて、そのあたりから気になって情報を集め始めたかな。2009年は自分が引退した翌年で、何にでも興味をもって、色々な世界に首を突っ込んでいた頃。「指導者で行く」という感じではなかったけど、江里口君を見て、本気で指導者になる選択肢も考え始めた気がする。最初は荒削りというより、綺麗な走り方をするな、という印象だった。
江里口 小さいのにどうして速いのか、とよく言われますけど、身長の割にストライドが大きいというデータは出ているんですよね(230p台後半)。一応、トップスピードも高い(10秒07のときは11.52m/秒)。その走りができる理由は自分でもわかりません(笑)。でも、速く走るというのは……(中略)
朝原 そういう感覚があること自体が特徴だよ。技術とひと言でいうけど……(中略)……その辺は僕と同じかな。全身を使って前に進むという感覚も、ない人にはわからない。そこがわかっている選手だから、「スタートをこうしよう」とか「接地を少し長めにしよう」とか、動きの変更をアドバイスできるんだよね。

●爆発のきっかけ探し
江里口 オリンピックでは予選、準決勝と2本、シーズンベストを出すつもりでいます。予選で10秒1台で走れば準決勝に進めますから。そして準決勝でも同じ走りをする。そのイメージをつくるため、春先から無風でも10秒1台を出すことを目標にやってきました。現状では決勝が目標とは言えませんが、決勝に行くための戦いを見るために、最低でも準決勝には行きたいと思っています。
朝原 そのためにはオリンピックまでに……(中略)……そこがしっかりとできればオリンピックの雰囲気とか、トラックの違いとかに惑わされずにすむから。(準決勝の)24人には問題なく入れると思う。
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