陸上競技マガジン2003年4月号
日中対抗室内横浜大会女子800 mで
2分00秒78!!
室内アジア新・世界選手権B標準突破
杉森美保[京セラ]
1分台へのカウントダウン
「勝ちたいと思ったことあるの?」と言われたこともある。杉森美保(京セラ)は試合前でも穏やかな笑みをたたえ、競技者特有のピリピリしたところがない。しかし、その穏やかな外見とは裏腹に、屋外日本記録を1秒以上も上回る室内アジア新を“通過点”と言い切る激しさも、その内面に秘めているアスリートなのだ。「高い目標を掲げて挑戦するのが好きなんです」。彼女の目は今、日本人初の女子800 m1分台突入だけを見据えている。
◆室内アジア新のレースとペースを振り返って◆
――2分00秒78は表1のようなペースで達成したわけですが、今回のように最初から独走するケースでは、走る前に「200 mを何秒で行くぞ」とタイムでイメージして走るのですか。
杉森 タイムではなくて、最近の練習の中でできた感覚です。“この感覚で行ったら、保(も)つか保たないかだな”というところで。何が何でも400 mをこのタイムで通過する、という意気込みではありません。実際はタイマーを横目で見たり、友だちに200 m毎のタイムを読んでもらって確認はしていましたけど。自分のイメージと実際が合っているな、って。
(中略)
――マラソン選手が1km毎や5km毎のタイムをイメージするように、800 mをフィニッシュタイムでなく、100 m単位、200 m単位に区切ってイメージすることはありますか。
(中略)
◆練習における具体的なタイムは?◆
――昨年の夏には、練習の600 mをいい記録で走って1分台を目標にできたと聞きましたが。
杉森 8月のアジア選手権前は600 mは1分27秒台、1000mは日本記録を上回る2分40秒台が出ていました(6月に杉森が出した日本新は2分41秒08)。それも、余裕を持って走り切るやり方で、最後の200 mをペースアップするんです。それが1分台を目指す目安になりました。アジア選手権は勝負優先で2分3秒台(自己記録に0.03秒と迫る2分03秒59で優勝)、9月のワールドカップは故障で練習不十分でも自己新(2分03秒22)が出て、その感覚がベースになりましたね。1分台は高い目標ですけど、そこにチャレンジしていく気持ちを強くしました。
――11・12月は駅伝の練習をこなし、それもプラスになったと思いますか。
(中略)
――600 mや1000mの練習もレベルアップしましたか。
(中略)
◆室内はあくまで通過点◆
(中略)
――急きょ、世界室内選手権(3月14〜16日・英国バーミンガム)にも出場することになりましたが。
杉森 トップ選手と走れるので、いい経験ができます。それをきっかけに練習で600 mと1000mを、余裕を持って走り切る感覚を身につけて、1分台を目指したいと思います。そうすれば世界選手権も見えてくるし、世界選手権を経験することでオリンピックも見えてきます。ちょっと前まで“日本人が1分台なんて”と思っていましたが、今は日本人初の1分台を絶対に出したい。日本人でもやれることを見せたいですね。
※この続きは3月14日発売の陸上競技マガジン4月号(ベースボール・マガジン社・定価950円)をご購読ください。