陸上競技マガジン2003年2月号
ニューイヤー駅伝2003
4位・NEC
エースの成長と新人の台頭、抜群の安定感で4位

 出入りの激しいのが全日本実業団駅伝の特徴だが、珍しい安定性を示したのがNEC。6回のタスキリレー中1回を除いて全て4位、フィニッシュもチーム史上2番目の4位だった。その安定性は、チーム全体がいい方向に回転し始めた結果だった。
 5月に山口洋司が、1万mで待望の27分台に突入。3年連続1区日本人トップ(うち1回は区間賞)と、“1区のスペシャリスト”として名を馳せてきた山口が、今回は2区を務める力を付けたのが、まずは大きかった。秋には新人の奥田真一郎が5000m・1万mで自己新を連発。東日本実業団駅伝では太田崇が1区区間賞と好調。
「ウチとしては100%出し切った。3区のシーブラーがヒザを痛めていて30秒悪かったが、1区の奥田は区間4位とよく走ったし、2区の山口はスタミナが心配だったが、上位で踏ん張った。4区の秋山(羊一郎)も直前にヒザの故障で練習ができなかったにもかかわらず、ごまかして上手く走ってくれた。大きかったのが5区。これまで5区で離されることが多かったが、1・2区を走れる選手ができたら、5区に太田をと思っていた」
 太田は前回2区を務めた選手。唯一、順位を上げることに成功し、4位から2位に進出した。6区が区間8位、7区が区間23位といまひとつだったにもかかわらず、4位というポジションを維持できたのは、5区で区間2位の快走を見せた太田の働きが大きい。
 太田は札幌学院大時代、1万mが29分32秒台の選手。大学の監督とNECの味澤**監督が知己の関係だったとはいえ、太田が卒業する年の採用選手はすでに4人が決まっていて“枠”はなかった。合宿などに参加して、いわば押し掛け入社。「高校では北海道大会で7番や8番でインターハイに行けなかったし、日本インカレは5000mで14位が最高。できればレベルの高いところで自分の力を試してみたかった」
 味澤監督は太田を採用した理由を「情熱だけです」と、笑い交じりに振り返る。「ここまで強くなるとは思わなかった」と言うものの、27分ランナーの山口も、明大時代はそれほど目立たなかった選手。こういった“叩き上げ”的な選手に加え、奥田と秋山の強力新人が加わったのが、今のNECの強さを支えている。
「今年は補強ゼロですが、奥田には山口に代わって“1区のスペシャリスト”に育ってほしいし、秋山は“化ける”と思う。つなぎの区間で終わる選手じゃないですから」
 味澤監督は、来季のチーム作りに手応えを感じているようだ。

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