2006/7/14 ローマ・ゴールデンリーグ
成迫50秒20、ヨーロッパ転戦の洗礼

 成迫健児(筑波大)が大きく失速した。バーション・ジャクソン(米)は元々前半が遅いが、5台目までは世界の強豪たちからそれほど遅れていなかった。だが、5台目を過ぎて見る見るうちに後退。最後の直線は千葉佳裕(トヨタ紡織)と日本選手2人が取り残された走り。50秒20と51秒67。成迫が予選・準決勝以外で50秒を要したのは、いつ以来だろうか。
「5台目まで行ったところで一杯になってしまい、途中からあきらめてしまいました。一番やってはいけないレースです」
 タッチダウンタイムを過去のレースと比べても、6台目からガクッと落ちている。歩数は聞いていないが、インターバルの13歩はいつもより1台少ない5台目までだっただろう。

成迫のタッチダウンタイム
06Roma 06大阪GP 06静岡国際 05国体決勝 05日本インカレ 04国体
1台目 6.04 6.04 5.86 5.86 1台目 6.11 6.11 5.91 5.91 1台目 5.95 5.95 5.87 5.87 1台目
2台目 9.85 3.81 9.59 3.73 2台目 9.87 3.76 9.55 3.64 2台目 9.69 3.74 9.62 3.75 2台目
3台目 13.75 3.90 13.30 3.71 3台目 13.59 3.72 13.34 3.79 3台目 13.47 3.78 13.34 3.72 3台目
4台目 17.66 3.91 17.15 3.85 4台目 17.36 3.77 17.17 3.83 4台目 17.34 3.87 17.13 3.79 4台目
5台目 21.65 3.99 21.02 3.87 5台目 21.27 3.91 21.12 3.95 5台目 21.22 3.88 21.07 3.94 5台目
6台目 26.05 4.40 24.98 3.96 6台目 25.26 3.99 25.18 4.06 6台目 25.38 4.16 25.18 4.11 6台目
7台目 30.62 4.57 29.25 4.27 7台目 29.67 4.41 29.44 4.26 7台目 29.71 4.33 29.44 4.26 7台目
8台目 35.19 4.57 33.61 4.36 8台目 34.12 4.45 33.72 4.28 8台目 34.07 4.36 33.82 4.38 8台目
9台目 39.97 4.78 38.01 4.40 9台目 38.78 4.66 38.15 4.43 9台目 38.63 4.56 38.41 4.59 9台目
10台目 44.66 4.69 42.58 4.57 10台目 43.78 5.00 42.73 4.58 10台目 43.15 4.52 43.12 4.71 10台目
フィニッシュ 50.20 5.54 47.93 5.35 フィニッシュ 49.49 5.71 48.09 5.36 フィニッシュ 48.35 5.20 48.54 5.42 フィニッシュ
全て寺田による手動計時

 すでにパリ、ローザンヌと海外トップクラスの試合を転戦。49秒台前半でタイムを縮めてきて、ローマではさらにタイムを縮められる感触もあった。しかし、大会2日前にローマ入りした際に、海外のグランプリ転戦の洗礼が待っていた。
 エージェントを付けずにヨーロッパ転戦を敢行している成迫は、自身で主催者サイドに話をしにいく。大会本部ホテルにチェックインする際に、成迫が部屋を確認しに行くと、別の選手の代理人が割って入ってきて大会役員と交渉を始め、挙げ句の果てに口論に。そのうち終わるだろうと思っていたが、延々と続く。成迫はそばで立ったまま待ち続けた。結局、3時間近くも立ち続けてしまい、面識のないアフリカ選手と同部屋に。夜の8時頃にホテルに着きながら、部屋に入ったのは夜中の12時。心身とも疲れ果ててしまった。
「試合前から弱気になってしまった。こんな厳しい試合は初めてです」

 機転を利かせられれば避けられたことかもしれないが、経験の少ない学生選手にそれを求めるのは酷というもの。まして、人の良い成迫である。こういった事態になったときの対処法は、一度はしてみないとわからない。伊東浩司、山崎一彦、朝原宣治、為末大といった海外転戦で成長した先輩たちは必ず、通ってきた道なのだ。
 将来、世界大会で結果を出した成迫が、「ローマの経験があったから今回も乗り切れた」と言える日が来ることもあるだろう。


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