2002/5/3
高岡のヨーロッパ遠征は1万mプラス
2万mと1時間走の日本記録更新が目標


 高岡寿成(カネボウ)が6月2日のGPUヘンゲロ大会で1時間走と2万mの日本新を目指すことが、5月3日、カネボウ関係者の話で明らかになった。ロンドン・マラソン後、ゲブルセラシエ(エチオピア)がここで1時間走の世界記録を狙うと表明。高岡もそこに参戦するわけである。
 日本記録は1時間走が96年に櫛部静二(当時エスビー食品)がマークした2万0410mで、2万mは瀬古利彦(同)が85年に出した57分48秒7。1時間走の記録は2万mを58分40秒で通過すれば出せるタイムなので、高岡なら余裕をもって更新できるレベル。問題は2万mの方だ。57分48秒7は1万m平均28分54秒3で走り通さないと出ない計算となる。これも、めちゃくちゃレベルが高いわけではない。
 むしろ問題は、ゲブルセラシエ(とそのラビット)についていくかどうか、だろう。世界記録は1時間走が2万1101mで、2万mが56分55秒6(1時間走の途中の正式計時)で、91年にA・バリオス(メキシコ)がマークした。1万mを28分27秒8で2本、走り通さなければいけない。
 この日の静岡国際のレースもそうだったが、外国選手のハイペースについていき、後半で引き離されても、そのままずるずる後退しないのが高岡の特長。ゲブルセラシエについていくことは十分考えられるが、ゲブルセラシエは日本にいる外国選手よりも、1枚も2枚も力は上。判断が難しいところだ。第2集団にもラビットが付けば問題ないのだが。

 高岡はその9日後、ブラチスラヴァ(スロヴァキア)のGPU1万mで、自身の日本記録更新を狙う。
 織田記念の際に高岡は、次のように話していた。
「ロンドンのようなレース(14分台のスプリットで展開)が理想。そのために、これまでトラックにこだわってきたんです。去年までは、短い方からアプローチした1万mでしたが、今回は長い距離からアプローチする1万m。それでもやれることを見せたい。目標は大きく、27分20秒です」

GPUヘンゲロ大会とゲブルセラシエとヘルメンスについて
 舞台となるのはオランダのヘンゲロで行われる国際GPU・ファニー・ブランカース・クン・ゲーム。クンは1948年ロンドン五輪で4冠(女子100 m・200 m・80mH・4×100 mR)となった伝説のスプリンターだが、この大会はゲブルセラシエ(エチオピア)の代理人ホス・ヘルメンスのお膝元ということで、長距離種目にもいい選手が集まる……というか、ゲブルセラシエがよく出場する。
 1万mの現世界記録26分22秒75は98年のこの大会で出されたものだし、95年の大会でも世界新が誕生している。実は、現在でこそ代理人として名を馳せているが、ヘルメンスはかつての名ランナー。バリオスの前の1時間走と2万mの世界記録は、ヘルメンスが持っていた。
 つまり、ヘルメンスは自分のマネージメントする選手に、世界記録を取り戻させようとしている……のかもしれないが、ゲブルセラシエが強く望んだのかもしれない。ゲブルセラシエといえどもさすがに、5000mと1万mの世界記録更新は厳しいと判断した可能性がある(シドニー五輪後に脚を手術しているし)。だからといって、次のマラソンまで試合に出ないのでは、練習に張り合いがなくなる。だったら、1つでも多く世界記録を出しておきたい、と考えたのかもしれない(この段落は全て推測です)。


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