2002/1/19
全国男子駅伝区間エントリー決定
大混戦予想だが福岡が大牟田高トリオで優位に立つか
高校生充実の愛知と、中国電力コンビの広島が追う
埼玉、岐阜、兵庫、熊本も有力候補
高岡、尾方、糟谷が追加エントリー
区間エントリー一覧は中国新聞サイトで
1月10日の記者発表時点のメンバーから、何人か追加された有力選手がいる。また、区間エントリーの結果、有力選手が外れたチームもあった。ざっと見て気づいたのは以下の通り。
福島:小川(日清食品)外れる
愛知:糟谷(中京大中京高)追加、岩水(順大)外れる
広島:尾方(中国電力)追加、徳本(法大)外れる
山口:高岡(カネボウ)追加
熊本:増山(千原台高)&吉野(菊陽中)外れる
優勝候補の中では、岩水嘉孝と徳本一善の学生大物2選手が外れた。
だが、広島はニューイヤー駅伝1区4位の尾方剛が加わった(3区)ので大きな戦力ダウンはない。アンカーは世界選手権マラソン5位の油谷繁。このところ、駅伝でも安定した強さを発揮している。今大会の一般選手では、ともに五輪1万m2大会連続出場の高岡寿成(山口・カネボウ)と花田勝彦(滋賀・エスビー食品)がいるが、2人トータルで見た場合、広島の中国電力コンビが最も強力そうな気がする。
ただ、今年の広島は高校生がやや、例年に比べて落ちる。5000mのタイムは14分39秒〜14分45秒の選手ばかりで、他の優勝候補チームの高校生に10〜30秒のビハインドは覚悟しなければならないだろう。逆に言えば、広島が勝った場合、「高校生が予想以上に頑張った」と評価される可能性は高い。地元でもある。頑張り甲斐があるといえば、ある。
前回優勝の愛知は新規に補填したメンバーでなく、元々メンバーに入っていた前田貴史(アラコ)、藤田幸則(トヨタ自動車)を投入してきた。藤田がニューイヤー駅伝6区4位。順位はともかく、11.8kmの距離で区間賞の松宮祐行(コニカ)と57秒差。これをどう評価するかだが…。
当初メンバーに入っていなかった糟谷悟(中京大中京高)が加わったのは、かなりのプラス材料。昨年1区で区間3位と好走して愛知をいい流れに乗せた選手。トラックシーズンはインターハイに顔を出していないことから、故障をしていたと思われるが、00年には2年生ながらインターハイ5000m4位、国体5000m8位(14分14秒37)に入っている。1年前の糟谷のような存在が、鷲見知彦(豊川工高)だ。前回5区2位、国体では14分09秒04で5位。全国高校駅伝1区は29分49秒で9位。鷲見知彦(豊川工高)と愛知の高校生2枚看板は他県の驚異となるだろう……とは誰でも思うことであるが、もう1人の高校生、中尾勇生(中京大中京高)もインターハイ5000m11位、ベスト記録は14分12秒5と強い。トラックのタイムだけでなく、前回4区2位の実績もある。
糟谷のメンバー入りで高校生3区間は前回とまったく同じ1区・糟谷、4区・中尾、5区・鷲見の布陣ができた。これは、1万m29分5秒台3選手の福岡にも引けをとらない(ような気がする)。
中学生2人はともに3000m8分44秒台だから、ポカさえなければ差をつけられることはない。問題は、前回3区区間賞で大会最優秀選手に選ばれた前田だ。ニューイヤー駅伝は3区区間25位と絶不調だった。前田も前回同様3区の起用。愛知2連覇のカギは、前田が握っている(ような気がする)。
優勝候補の一角に挙げられていた熊本は、全日中3000m優勝者で中学歴代2位の8分26秒92の記録を持つ吉野将吾(菊陽中)と、インターハイ&国体ともに5000m4位の増山和哉(千原台高)がメンバーから外れた。中学生区間は3kmと短いとはいえ、本来ならライバルチームに10〜30秒差をつけられた選手。
痛いといえば痛いが、あとの中学生2人も8分47〜49秒台の選手。箱根駅伝4区区間賞の松下龍治(駒大)と阿部祐樹(三菱重工長崎)の鎮西高OBコンビ、中山慎二郎(1区10位)と一井裕介(3区区間賞)の全国高校駅伝2位の九州学院高コンビと、駅伝の強豪校が多数ある熊本県らしい陣容。増山の代わりに1区を務める本田慶太も鎮西高の選手で、九州高校駅伝1区2位の実績もある。
増山&吉野欠場とはいえ、優勝候補の一角はいぜん維持している。
広島、愛知、熊本の他では、埼玉、岐阜、兵庫が本命・福岡に対抗できる戦力だ。
埼玉は1区に佐藤拓也(埼玉栄高)を起用。暮れの全国高校駅伝ではカビル(仙台育英高)に潰された形となったが、今度は留学生はいない。そして2区の中学生は高橋和也(加須平成中)。高橋尚子(積水化学)と同じ姓だから強くなれるというものでもないが、ジュニアオリンピック3000m2位と期待の選手。前回は2年生ながら6区で区間1位(=区間新)。2区終了時点で埼玉がトップに立つ可能性は高い。
3区は加藤俊英で、同じホンダの池谷寛之に代わってメンバー入りした。ニューイヤー駅伝3区7位だが、上り調子なのだろう(池谷が悪いだけなのかもしれないが)。
埼玉の強みは、高校生・中学生とも駅伝の全国大会に出場していない学校の選手が、県代表に名を連ねている点。正直言って、全国大会に出場した選手は、そこでホッと一息ついてしまう傾向がなきにしもあらず(好成績で波に乗る選手もいるが)。
そういえば、アンカーの堀口貴史も、箱根駅伝に出られなかった国士大のエース。言ってみれば埼玉は、“晴れ舞台”への出場を渇望していた選手たちばかりなのだ。思わぬパワーが爆発するかもしれない。
岐阜もいい。1区は加藤直人(土岐商高)で、全国高校駅伝1区で2位(29分21秒)と、こちらは“波に乗っている”選手。3区の揖斐祐治(駒大)とは、土岐商高の先輩後輩コンビとなり、1区2位というのも同じ。
2区と6区の中学生区間には双子の大西智也、大西一輝兄弟を起用。藍川東中は、あの高橋尚子の母校でもある。金メダリスト同じ中学だからといって強くなれるわけではないが、意識を高く持ちやすくはなるだろう。智也の方は資料がないが、一輝は野球から転向して1年ほどだという。これは、県岐阜商高時代に1万m27分台選手・早田俊幸(ホンダ)と似ている経歴だ。だからといって強くなれる保証はないが、意識を高く持ちやすくはなるだろう。ちなみに高橋は、県岐阜商高で早田の4学年後輩になる。
話が変な方向に行ってしまったが、アンカーは早田である。ニューイヤー駅伝ではエース区間の2区で13人抜き(区間5位)と、かつて駅伝で“ハンター”と言われた頃を彷彿させる走りを見せた。4区に起用された高2の森勇基(中津商高・5000m14分19秒82)も上り調子だとのこと。「過去最高が7位それ以内。他県のチーム状況にもよるが3位。」という目標は十分達成可能と見た。
兵庫は昨年好調だった家谷和男(山陽特殊製鋼)と西脇工高のエース・熊本剛が外れてしまった。高校生は国体5000m9位(14'11"63)の森本直人(報徳高)を1区に、5000m14'21"0の小林賢輔(同)を4区、全国高校駅伝1区12位(29分53秒)の稲垣晃ニ(西脇工高)が5区。こうして書きだしてみると、福岡や愛知と比べると確かに見劣りがする。が、そこを走ってしまうのが兵庫の高校生なのである。説得力に欠ける書き方だが、その傾向は確かにあるように思う。
一般は3区に中馬大輔(NEC)で7区が藤原正和(中大)。中馬はニューイヤー駅伝4区で途中脚を引きずるシーンがあったし、藤原は区間賞が確実視されていた箱根駅伝5区で“まさか”の区間3位。やや不安のある今年の兵庫の布陣ではある。
ちなみに中馬は報徳高、藤原は西脇工高OB。家谷や坪田智夫(コニカ)がメンバー入りしなかったため、高校生以上は報徳高&西脇工高連合軍となった。それが今さらなんだと言われそうだが、兵庫は報徳高&西脇工高以外の選手も頑張っていると言いたかっただけである。
さて、やっと本命チームについて述べたい。
優勝候補筆頭は福岡とした。
1区・大津 聖(大牟田高)
2区・足立芳之(比良松中)
3区・木野行純(九電工)
4区・村上孝一(大牟田高)
5区・土橋啓太(大牟田高)
6区・爪丸晋吾(八屋中)
7区・大津 誠(トヨタ自動車九州)
トラックのスピードランナー揃いの陣立てである。大牟田高トリオは12月に全員が29分05秒台と、高校長距離史上の快挙ともいえるレースをしたが、この3人はただペース走が速いだけではない。大津弟は5000m、村上は1500m、そして土橋は3000mSCで全国大会3位以内に入っている。スピードの変化にも対応できる選手たちだ。
木野も高校時代にインターハイ1500m2位の実績があるし、大津兄は昨年1万mで28分20秒05まで記録を伸ばした。足立は全日中3000m7位入賞者。トラックが強ければ駅伝も走れる、というものでもないが、ここまで揃うと壮観である。
広島の中国電力コンビと比較すると一般がどうかな、と思う方も多いだろう。だが、愛知と比べたら遜色ない。それでたぶん、高校生トリオで広島に1分半〜2分の差をつけ、愛知にも45秒は勝てるという皮算用だろう。土橋も全国高校駅伝のようなことはないはずだ。それよりも、都大路の3区・大津と7区・村上の走りは鬼気迫る凄味があった。高校史上最強トリオ(と言っていいのかな)の最後の舞台となる可能性もあり、たぶん、彼らの頑張りが福岡を2度目の優勝に導くだろう。
と書いておいてなんだが、高校生3区間で仮に2分勝っても、一般2区間で2分以上の差が付くことはざらである。ということは、高校生(全国高校駅伝で敗れているので)、一般ともプレッシャーの大きい状況ということになる。
うーん、やっぱり駅伝はやってみないとわからないでしょう。
この他、個人的に注目される選手は以下の通り。
秋田7区・高橋正仁(駒大)箱根駅伝9区区間賞
静岡2区・佐藤悠基(清水南中)3000m中学記録保持者
三重7区・吉村尚悟(神奈川大)箱根駅伝5区区間2位
大阪3区・野口英盛(順大)箱根駅伝5区区間賞
和歌山7区・浜野 健(トヨタ自動車)前回7区区間賞
鹿児島7区・永田宏一郎(旭化成)
佐賀7区・前田和浩(九電工)
長崎7区・前田和之(亜大)
富山7区・西村哲生(YKK)
群馬1区・斎藤弘幸(農大二高)インターハイ5000m2位
香川1区・三津谷 祐(尽誠高)国体5000m3位
京都1区・稲井義幸(立命館宇治高)インターハイ5000m3位&国体5000m6位