2001/12/19
箱根駅伝展望 各大学最新取材
駒澤大 公開練習&共同取材 駒大公開取材写真集
1年生トリオの位置づけは?
そして、気になる区間エントリーは?

 優勝候補の一番手と、衆目の一致するのが駒大である。共同取材は12月19日に行われた。寮の食堂に、高橋正仁、神屋伸行、揖斐祐治の4年生3人と、松下龍治、松村拓希の3年生2人、そして太田貴之、塩川雄也、田中宏樹の1年生3人が集められた。
 選手はいくつかのテーブルに別れて座り、それぞれの周りに記者が集まって話を聞く形式。最初に食堂に来た、キャプテンの高橋から話を聞き始めた。


高橋「“勝とう”ではなく“絶対に勝つ”という意気込みでやっています。(どういったときに意気込みを感じるか?)練習が終わってダウンをしているときなど、自然に箱根の話になるんですが、どういうレース展開になるんだろう、その中で自分たちはどう走るか、というようなことを話すのですが、最後は“勝とう”いう話になります」

 ここまで話を聞いた時に、「1年生3人も話を聞いてやってよ」と大八木コーチが話ながら、1年生を連れてきた。
 4年生3人と松下は、12月4日に話を聞いているし、他の媒体でも露出度は高い。ということで1年生トリオに話を聞くことにした。
 3人の話の中で、印象に残った点を抜粋した。


1年生トリオのコメント

太田「春先は練習しすぎて、慢性的な疲労がありました。11月の府中から走れてきました。(走れるようになったのは)自分の身体のことがよくわかってきたからです。以前はただ、練習するだけでしたが、今はめりはりをつけて、落とす日は落とすようにしています。以前は普段の生活からきつかったのですが、今はようやく、練習でも余裕ができるようになりました。与えられた区間をきっちり走りたいと思います。優勝を狙っていますから、自分の任された仕事を優先して。将来的には2区を走りたいですけど」
塩川「夏と、1カ月前に走れない時期がありましたが、最近は体調が上がっています。夏は走りすぎではないと思いますが、ぎっくり腰みたいになってしまいました。1カ月前は軽いケガです。最近は練習ができています。(メンバー入りが決まったのは)府中に出ていないので、22kmのタイムトライアルを5人でやって、そこで2番に入ったからです。一番は河村(修一)さんでした。走りたい区間は特にありません。与えられた区間をしっかり走りたい」
田中「春先、思うように走れない時期がありましたが、環境の変化から疲れが出る時期だったのだと思います。8月の夏合宿からこなせるようになり、徐々に走れるようになって、思った記録もついてくるようになりました。1年目ですし、走りたい区間は特に沸いてきません。いずれは往路、…復路のエース区間を走りたいと思いますが」

 1年生トリオというと、2年前の駒大初優勝時を思い出す。
 3年前の99年大会は藤田敦史、佐藤裕之の2枚看板を筆頭に分厚い選手層を誇り、優勝候補の筆頭だった。しかし、順大に1年生カルテットが台頭して、復路の9区で順大が逆転優勝。駒大は前半から逃げるしかないと、佐藤を2区、藤田を2区に配して予定通り往路優勝は果たしたが、結局2位。
 2年前、つまり2000年大会は2年生クインテットと3年生の高橋謙介、4年生に前年の山登りで好走した佐藤功二らがいて順大が優勝候補の筆頭だった。だが、駒大が往路に島村清孝(1区)、布施知進(3区)、松下(5区)の1年生トリオを起用。順大・佐藤の区間12位というブレーキもあったが、松下が2人を抜いて往路優勝。揖斐(7区)、西田隆維(9区)、高橋正仁(10区)と3つの区間賞を取って復路も制覇して逃げ切った。

 しかし、2年前とはチーム状況は異なる。2年前は、前年の主力がごそっと抜け、1年生を起用しないとどうしようもない、という状況だった。大八木コーチ自身「1年生3人の起用は、賭けの部分があった」と認めている。今年のチームは、前回2位のメンバーが9人残り、1年生に頼る必要はなかった。微妙に意味合いが違うのだが、そこは後で紹介する大八木コーチのコメントから感じ取って欲しい。

 30分しか時間がなかったため、あと1人、松村にちょっと話を聞いた。12月初めに取材に訪れた際は、故障をしているという情報もあったからだ。


松村「11月の大島合宿で左足底の側面に痛みが出てしまい、10日間走れませんでした。府中と日体大の選考レースにも出られず、1週間ほど前には熱も出してしまい、本当なら替えられても不思議ではないくらいです。12月8日に府中に出ていない5人で22kmのタイムトライアルをやって、4番目でメンバー入りができました。河村さん、塩川、島村、僕で、5番目の布施がメンバーから外れてしまいました」

大八木コーチとの一問一答

 このあと、練習の撮影取材に移った。その間、多摩川の堤防で、大八木コーチに話を聞くことができた。
Q. 強いて不安を挙げるとすれば?
大八木コーチ やはり、風邪とか、ケガとかでしょう。あとは1・2区の流れです。そこでどういうふうに来るか、気がかりと言えば気がかりでしょう。ほとんどの大学が往路で勝負に来るでしょう。往路がどのくらいでゴールできるか、でしょうね。
Q. 特にどこか怖いチームが?
大八木コーチ 往路は法政が怖いですね。もしかすると、法大が往路優勝するかもしれない。法大、山梨学大、順大、ウチ、中大……中大より、神奈川大が前かな。1・2・5区にはいいメンバーが来そうですからね。山梨学大の外人は、1・4区でしょう。1・2区よりも、その方が怖いですね。
Q. 1・2区でマークするのは有力チームだけですか?
大八木コーチ 優勝争いをするチームですね。1区で黒田(法大)がポンとトップに出て、徳本(一善・法大)に渡ったら、どうなるか。
Q. 内田(直将)君では厳しいですか?
大八木コーチ 今のところ、内田(直将)はやられてばっかだし。トントンで行ってほしんですけどね……1区は内田と決まっているわけじゃないですよ。松村も1区候補です。
Q. カリウキ(山梨学大)は2区なのでは?
大八木コーチ 1・2区で差をつけられなかったら、逆に苦しくなります。2区は徳本と岩水でしょう。
Q. 往路はトップでなくてもいい?
大八木コーチ いい…かな。トップと1分半から2分の差で来てくれればいいでしょう。

Q. 復路はどうしますか?
大八木コーチ ******************************************************。(この部分、レース後用にネタをとっておきます)
Q. 島村君は?
大八木コーチ 島村もいいですよ。秘密兵器。1年生も島村も、みんな秘密兵器。1年生が3人、メンバーに入ってくるかもしれません。
Q. そうなると、あとは山の登り下りだけですが?
大八木コーチ スペシャリストがつくれれば、面白いですね。そこそこ手応えはあります。松下ですか。何かあれば松下の起用もあり得ますが、そうでなかったら、もったいないですよね。
Q. 5区だったら1時間11分、6区なら59分台で走れれば目安に?
大八木コーチ どうでしょう。そのくらいが1つの目安になるとは思いますが。
Q. そのタイムで走れる選手が出てきた?
大八木コーチ ご想像にお任せします。この顔を見れば、わかるでしょう(笑)。それよりもつなぎの区間が可哀想ですよ。1つの区間を3人で争うケースもあるんです。
Q. エースは2区を走らせますか。
大八木コーチ そうです。チームの中で、大変な時期を“この選手で”とやってきた選手というのがいます。そのチームでは、その選手がやるべきです。ウチだったら、2区と4区は神屋か松下です。
Q. 2人とも2区にこだわりがあるのでは?
大八木コーチ 松下は、そんなにないんじゃないですか。ウチのチームの2区は大変ですよ。優勝争いをするチームの2区ですから。多少なりとも気持ちが座らないと、難しいですよ。

Q. 去年よりも、余裕があるのでは?
大八木コーチ 精神的にはありますね。故障者が出たら厳しくなりますが、中堅選手の故障なら今年は対処できる。そういう部分の底上げはできたと思います。以前は、11番目の選手を使うと不安があった。去年は島村が故障で使えず、最後(10区)に層の薄さが出た。3年前は、(大西)雄三が使えなかったのが響いた。今回は、主力が故障したら痛いですけど、8、9、10番目の選手と同じレベルの選手はいます。
Q. 底上げができていると実感したのは?
大八木コーチ 10月くらいですね。1年生が上がってきた頃から感じました。夏までは、まだまだでしたが。
Q. 1年生を、今の3・4年生が1年生だった頃と比較すると?
大八木コーチ 松下の時代くらいまでは来ていると思います。神屋は、もうちょっと上だったかな。自分で言うのもなんですが、いいチームができてきたと思います。

 選手から聞いた話とは、微妙に食い違う点も出てくる。例えば、神屋自身は「2区にこだわりはない」と話していたし、むしろ松下の方が、1年前からエース区間を希望しているニュアンスだった。そういった部分が“個性派揃い”と言われる部分なのかもしれない。

 1年生の部分であるが、2年前は、松下ら3人が1区や5区など、ポイント区間でそこそこ走らなければ、どうしようもない状況だった。だが、今年は、つなぎの区間でつなぎの役割を果たせば、1年生としての役目は果たしたことになる。「与えられた区間をきっちり…」と、今年の1年生が異口同音に言うのは、そういう意味だと思う。
 その点、駒大は上級生になったら走りたい区間を口にする(松下のように)。駒大というチームは、それをわがままとは受け取っていない。選手が自分の力を知れば、自分の役割も自ずとわかってくる。自分の希望区間を口にするのなら、下手な走りはできない。一種の“背水の陣”にもなる。「上級生になったら…」というセリフを、今年に限らずこれまでも何回か、駒大選手の口から聞いた記憶がある。
 今年は、上級生の頑張りで勝つべきチームのような気がする。

 これで記事が終わらないのが、本WEBサイトの特徴である。
 最後に、内田の話を聞くことができた。


内田は1区なのか!?
神屋9区の可能性もありか?


内田「どこを走るのか決まっていませんが、チームにいい流れを作れるような走りをしたいと思います。その区間の役割を果たしたい。(仮に1区になったら?)最低でもトップと何秒差と自分で決めて、無謀なことはできませんが、全日本のようにならないようにしたい。去年は1年生ということでプレッシャーなく走れましたが、今回は行けるところまで走らないといけない、と感じています。でも、この1年間でスタミナが去年よりも付いたと思います。夏の練習もしっかりできました。あとは、大八木さんにも指摘される、気持ちの面がしっかりすれば…」

 ということで、駒大のメンバーを予想してみた。

1区 内田or松村
2区 松下or神屋
3区 太田or北浦or田中or松村
4区 神屋or松下or高橋
5区 北浦or木綿or吉田or河村or太田or田中
6区 塩川or吉田or北浦or河村
7区 揖斐
8区 河村or島村
9区 高橋or神屋
10区 島村or河村or北浦or太田or田中

「2区と4区は神屋と松下」「復路の重要区間は7・8・9、それに10も」と言う大八木コーチのコメント、「往路で負けていても7・8・9区で逆転できる」という揖斐のコメントなどから推測した。神屋が「高橋を4区に起用したら、当然、自分のところではリードしている」と、以前に話していたことがあるから、高橋を9区と決めつけずに、4・9区を神屋・高橋で担当する可能性も考えた。
 島村と河村は、調子のいい方が8区だろう。
 山登りと山下りは、上記の大八木コーチのコメントと、いくつかの他方面からの情報を照合して、このメンバーを予測した。「登りは3人が走れる」とのコーチのコメントもある。それは、万が一の時に松下を起用するということだろう。北浦と吉田は逆の可能性もある。
 1区は内田だと思うのだが、大八木コーチが松村の可能性もあるというので、一応、付け加えて置いた。また、「1年生が3人とも出場するかもしれない」というのだから、太田と田中のうちどちらかが10区ということも考えられる。その選手の調子がものすごく上がってきた場合だろうが。
 ここまで書いてきて、島村と河村にも山の登り下りの可能性があることに気がついた。塩川と同じ日にタイムトライアルに河村が参加しているのは…。

 これじゃあ、予想になっていない? まあ、仕方ないですね。これ以上は、わかりません。やっぱ、箱根のメンバー予想って、やっても意味ないですね。ホント、何十通りも考えられますから。
 完璧に予想できる方法が1つあるんですが…。

※区間エントリーは12月29日まで正式決定ではありません。区間に言及している部分もありますが、あくまでも現時点での予想であり、変更されることもあることをご了承ください。