2002/7/5 パリ・ゴールデンリーグ
特集 パリの日本人
3人目 為末 大
「前半を意識的に遅くしたんです。理想のレースパターンを1回壊して……」

 パリで新しいスタイルを試したのが為末大(大阪ガス)だった。
 レースを見た場所がフィニッシュ正面のカメラマン用ひな壇の上。フィニッシュの写真を撮るにはいいポジションだが、レース展開は見にくい。だが、いつもの為末の展開と違うのは、なんとなくわかった。前半で世界の有力選手を従えてハードルを跳び越えていくのが“いつもの光景”だが、この日は明らかにリードできていない。4コーナー近くになると遅れているのが明白となった。
「今日はへんてこりんなレースでしたね。前半を意識的に遅くしたんです。2〜3台目でフェリックス(・サンチェス)に行かれているのがわかりました。理想のレースパターンを1回壊して、別の方向からも攻めてみたんです。去年だったら絶対、前半型を譲らなかったと思うんですが、今年はどんなことをしても、グランプリ・ファイナルに出たい。タンクが切れちゃいそうで“前半型を貫けない”、という判断もあって、アップのときに決めました。雨も降っていましたし、ここはローザンヌほどファストトラックじゃありませんし」
 前半型を壊したといっても、それは為末の中でのこと。他の多くの選手と比べれば、為末が前半型であることに変わりはない。9台目までは3〜4番手につけていたはずだが、そこからやや順位を落としたのは、ある意味やむを得ない。48秒88で3位。
1)47.91 サンチェス(ドミニカ)
2)48.26 ローリンソン(英)
3)48.28 ディアガナ(仏)
4)48.49 モーリ(伊)
5)48.54 カーター(米)
6)48.88 為末 大(大阪ガス)
7)49.28 テイラー(米)
8)49.49 MYBURGH(南アフリカ)

 上位3人には差をつけられたが、4位以下とのタイム差が少ないのが救いだった。
「モナコだけは前半から行きます。全部、勝負するのは厳しいですけど、1回は狙っていきたい」
 下位の方でもとりあえずはポイントをキープしておき、モナコでは大きくゲットする。GP転戦中に、そんな戦い方に変更していくのを決めたのが為末のパリだった。

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