2001/4/17
週刊ポストの「女子マラソンの暗部」記事に異議
というか、このような記事が出ないような
オープンな価値観をつくろう
週刊ポストの記事は、ダイハツと旭化成における、選手と指導者の不和・軋轢を記事にしたものです。2、3事実関係や解釈の誤りも感じましたが、それはさておいても、見出しの付け方がとにかく扇情的です。
「元五輪選手 小鴨由水が衝撃の実名告白」「私はマインド・コントロールされていた」「イジメ・監督との関係・摂食障害」
「千葉真子が宗監督と離反」「『小出監督に弟子入り』で怨念バトルぼっ発」
人間関係のこじれを、売り物にしようという意図が明白です。
人と人との不和・軋轢は、有史以来、人類が克服することのできない問題です。問題というより人間社会の現象なのです。
で、この手の記事を書かせないようにする方法が、1つあるのです。
結論を簡単に書くと、堂々と、「あのコーチ(選手)とは上手くいかないので、たもとを分かちました。今度は、このコーチの元で(あるいは自分1人で)頑張ります」と言える雰囲気を作ればいいのです。実際、千葉真子選手の行動は、堂々とそれを実行していますし、小鴨由水さんも、それを実行したわけです。
選手側に被害者意識があると、今回のような記事になりがちですが、選手は堂々と、「あのコーチとは合わない」と言っていいと思います。ただし、「コーチの指導法が間違っている」と言うと、軋轢が生じます。小出監督も言っているように、100人のコーチがいたら100通りの指導法があるのです。実際、過去に小出監督と合わずに、ダイハツに移籍した選手もいるのですから。
注意しなければいけないのは、「間違っている」と「自分には合わない」の違いを正確に世間に理解させることです。そこをしっかりやれば、三行半(みくだりはん)を突きつけられたコーチ側も、面目を保てるはずです、ある程度は。指導力ではなくて、あくまでも相性が理由なのだと。
一般的には選手の方が立場的に弱いことが多いのですが、逆に、会社が選手側に立ち、コーチの首を切る例もあります。コーチが本当にどうしようもなくひどいのなら、毎年のように選手が離反を続けてチームが弱体化すれば、当然、そのコーチも職を失うわけです。なんでもオープンにやった方が、市場原理が有効に働き、健全な形になると思われます。
もちろん、宗茂監督が指摘しているように、実業団チーム間の引き抜き合戦的なことは避けなければいけないので、何年間か実業団の試合に出られない措置は、仕方がないことです。実業団関連以外の試合には出られるわけで、選手を陸上界から締め出すわけではありません。そうなると、実際に雇う実業団がなくなって引退に追い込まれるという意見もありますが、それは違うと思います。頑張っている選手の例は、いくらでも挙げられるでしょう。
問題は世間に、「師弟間には全幅の信頼があって当然」、という意識があることです。確かに、その方が競技力は向上し、好成績をあげてマスコミにも師弟関係が取り上げられることが多いでしょう。だが、外国ではコーチを変えて成功した例も多いような気がします。あのモーリス・グリーン(アメリカ)が最たる例です。
世間にそういう「師弟間には全幅の信頼があって当然」という意識があると、関係者は事実を隠そうとします。そうするとなお、選手側の不信感が強くなるのです。
「私、コーチを変えました」
「俺は今度、別の選手を育てる」
これでいいじゃないですか。それが当然の風潮になれば、今回のようなことも、記事にする意味はなくなります。
以上の書き方で意を尽くせているかどうか、多少の不安はあります。ダイハツと旭化成に不和・軋轢が多いと言っているわけではありません。読んでみて、そうとる人はいないと信じています。あくまで、人間社会にはどこにでもある現象で、それを色眼鏡で見る世間の風潮こそ、悪しきものだと言いたいのです。