ATSUYAなメール
その20
2005年6月29日

インターハイ予選の地区割りについて

寺田さんへ、こんばんは。

この話題が出ることを今か、今かと待っていました。兵庫を四国に組み入れるというウルトラCも含め、「さすが、寺田さん!」と思わずうなりました。
兵庫で育ち、兵庫で陸上を担当した私が思うに、近畿2府4県で1種目6人というのは、あまりにもひどい状況です。6府県で地区大会を行うのは、近畿と東北(6県)だけ。大阪、兵庫、京都が入っての6府県なんて冗談じゃない、という感じです。

やはり、現状での最大にして唯一のメリットは、本当ならかなりのレベルにあるのに近畿で落選し、「何くそ」との思いで将来、一線級になる選手がいるということでしょう。
しかし、兵庫を例にとると、5000mではなくても県大会の予選、準決勝、決勝と息つく暇もなく戦い、さらにハイレベルの近畿で3本。夏場ということもあり、少々の精神力と体力では乗り切れません。高校生に求めるものとしては、限度が超えていると思います。
インカレなどで彗星のようにデビューを飾った高校時代に無名だった選手が「インターハイは2年続けて予選落ちでした」などと話しているのを雑誌などで読むと、「兵庫ではありえない」とため息が出ます。確かに種目にもよりますが、兵庫から2年続けてインターハイに行くような選手は予選落ちしませんし、仮に予選落ちすれば「まさか」と扱われるでしょう。

近畿大会までに消耗してしまい、全国で力を発揮できなかった選手を何人も見てきました。「それも実力のうち」と思う人もいるでしょうが、やはり過酷です。
しかも、問題はその後です。疲労感だけを味わい、高校で陸上をやめてしまうアスリートも少なくないのです。いわゆる「燃え尽き」ですが、いちがいに本人や指導者の責任にできないほど、兵庫の置かれた状況は過酷なのです(大阪なども同じでしょうが)。
こうしたトップ級の選手だけでなく、中級の選手にとっても今の状況はよくありません。寺田さんも細川選手を例に挙げ、「こんなケースはまれ」のように書いてらっしゃったと思うのですが、まさにその通りで、他の地区ならインターハイに行けたであろう、本番は予選落ちレベルだろうけど…という「高校時代はあと一歩選手」が、化けることなく消えていくケースも多いのです。取材を通して学んだのは、大舞台の経験というのが、いかに将来に役立つかということ。
何くそと頑張った細川選手や坂本直子選手なんかは本当に偉いのですが、兵庫の全国レベルにある選手たちに、もっと大舞台を経験させてあげたいと思います。兵庫の場合、全日中を経験した選手が多いため、余計に「まあ自分もここまでか」と考えてしまうのではないかとも思います。

さらに、大学の推薦入試などで「全国大会出場」や「インターハイ〇位」などを設定しているところも多く、大舞台の実績では大学に入れないため、希望する大学を申し込み段階で断念するケースも出てきます。そうなると、@高校進学時に兵庫を出て行く(これはとても多いです) A高校2年で陸上をやめて勉強に専念する B陸上の強い大学をあきらめる−といったケースが出てきますが、AとBの場合は将来ある選手が早くから陸上を断念してしまうことになります。

「狭き門」が兵庫をはじめ近畿のレベルをより向上させているのは確かだと思いますが、度が過ぎると弊害ばかりになります。近畿2府4県を3つずつ2地区に分けても、あまり怒られないように思いますが。あるいは、兵庫の場合(どこもそうなのでしょうか?)、県大会前の地区予選では、プラスα制度があります。正規に県大会出場を決めた選手以外に、県全体で自己ベストの記録のいい順に数人が県大会に出られます。このプラスα制度をインターハイにも導入すれば、もう少しモチベーションが上がると思うんですけどね。

そうはいっても、私が一番好きなのは、近畿大会決勝で7位に終わった選手を見ること。フィールドよりトラック種目の方がいいです。ゴール後、それぞれに歓喜に浸る1−6位の選手の傍らで一人、ひざをつき、呆然と宙を見つめる。団体競技のように一緒に泣く仲間はいない。あと一歩のところで夢を逃し、どうしていいのか分からないといった表情を見ていると、こちらも涙が浮かんできます。トラックに突っ伏したまま、起き上がれない選手もいます。
「青春やなあ。いいなあ」とマゾヒスティックな感動も味わえます。今年は行けませんでしたが、そんな光景がタダで見られるインターハイ近畿予選は、実は私が一番好きな大会です。

それでは、また。
暑い日が続きますが、お体に気をつけて締め切りを守ってください。

K新聞社社会部 O原A也


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