2001/10/13
七種競技の日本新記録内訳を見て感じたこと
なぜか100 mHと走幅跳を兼ねる選手が日本には多い。世界では…?


 10月7日に七種競技の日本記録が更新された。中田有紀(東海デカスロンチーム)が5862点をマークし、今年6月の日本選手権で佐藤さよ子(日立土浦)が出した5713点を大きく更新した。中田は昨年5642点の日本を今回と同じ松任で出している。日本記録を1学年下の佐藤から奪回したことになる。エドモントン世界選手権の参加B標準が5820点なので、もしも日本選手権でこの記録を出していたら、93年のシュツットガルト大会以来の混成競技選手出場が実現していたかもしれない。
 というほどの大記録なのだが、世間的にはヌデレバ(ケニア)による高橋尚子(積水化学)の世界最高記録更新の陰に隠れてしまった。

 今回の快記録に関する考察はISHIRO氏のWEBサイトhttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Olympia/8676/diary-110a.html に掲載されているので、そちらをご覧願いたい。重要な部分は引用させていただいた。

 寺田が感じたのは、ISHIRO氏も指摘しているが、100 mHと走幅跳が日本でもトップレベルにあるという点。多くの陸上ファンが感じていることだと思うが、この2種目で活躍した選手はかなり多い。思い出すままに名前を列挙すると、100 mHで何回も日本記録を更新し世界選手権東京大会に出場し、走幅跳でも6m40を跳んでいた佐々木あゆみがその代表。
 高校生でも多く、埼玉栄高関係では城島直美と近藤昭子がそうだった。添上高では宮本早紀子が該当し、最近では馬場貴子選手が99年岩手インターハイ2冠をやってのけている。
 前日本記録保持者の佐藤さよ子はやや走幅跳の方のレベルが高いが、該当しているといえなくもない。そして、現在最も注目されているのが、その2種目で学生記録を持つ池田久美子だろう。

 ところが、外国選手には不思議と、この2種目とも世界のトップレベルというケースがない。日本と世界ではレベルが違いますし、世界で2種目トップレベルというのは他の種目でも難しくなるわけで、当然といえば当然かもしれない。つまり、池田が2種目で学生記録を持っていても、世界選手権に出られるのは走幅跳だけ、という状況である。
 外国選手と比べるなら、その選手が国内の2種目でどういうポジションなのかを調べないといけない。例えば走幅跳世界選手権優勝のメイ選手が、イタリア国内で100 mHがトップクラスなのかどうかを調べて比較する必要があるわけだ。

 それはともかく、どうして日本ではこの2種目を得意とする選手が多いのか。以前、走幅跳の踏み切りと100 mHの踏み切りの感覚が近いのではないか、と考えたことがあった。記憶がやや不鮮明だが、ある指導者にそのことを話したら、同意してもらえなかった。
 もしかすると流行なのかもしれない。流行という言葉を使うと、軽々しくとらえているように思われてしまうかもしれない。だったら、伝統という言葉に置き換えたい。男子400 mHで世界的な選手が続いて現れるのも、かつて三段跳で世界のトップを維持できたのも、日本選手の間ででその種目が流行していたからだと思う。

◆ISHIRO氏のWEBサイトから引用
中田有紀さん(東海デカスロンチーム)が5862点の日本新記録を出しました。
中田さんは去年、5642点の日本記録を出したけど、今年の日本選手権で佐藤さよ子さん(日立土浦)が5713点と更新。
今回は、それをさらに大きく更新する快記録でした。
この日本新って、けっこう意味があると思うんですよ。
エドモントンの世界選手権のB標準が5820点だったので、それを超えている。
つまり、もし日本選手権までにこの記録が出ていれば、七種で初めて世界選手権に出られたわけですね。
今まで七種は世界レベルに遠いって言われて、アジアレベルの大会でも選手派遣が少なかったり見送られたりしてたし、強化の面でも常に後回しにされているところがあったんです。
それがやっと、世界に近づいてきた。日本の女子選手でもやればできるっていうことが証明された気がします。

ちなみに、中田さんの今回の内訳は、
100mH=13秒78、走高跳=1m73、砲丸投=11m10、200m=25秒36
走幅跳=6m29、やり投=46m23、800m=2分23秒42
100mH、走高跳、走幅跳は日本選手権で入賞できる記録。やり投も日本インカレなら入賞できる記録です。

七種の国内トップクラスの多くの選手は、単独種目でも国内で上位に入るレベルにあります。
7種目分の練習をしなきゃいけなくて、専門的な練習が決して十分できない七種の選手が、その種目を専門にしている選手と対等に戦ったり、勝っちゃったりするケースが少なくないんですよ。
そういうのを見るたびに思うんだけど、女子の陸上選手って、みんな七種の練習をやってみたらどうでしょうかね。
走、跳、投にバランスよく取り組むことは、どの種目をやるにしても、土台作りとして大きな効果があるように思います。
日本の女子はだいたい、体格や体力・筋力で世界から大きく遅れているんだから、そのくらいやるべきだと思うんだけど。
中田さんだって167cm、57kg。もともと体格的に恵まれてたわけじゃないのが、ここまで来たんだしね。