Stories of CramerJapan
第4回 女子選手が
安心して競技が
できる環境を
盗撮行為&透過撮影の防止、
撲滅への取り組み

                                    @日本インカレでのキャンペーン
A透過撮影対策はインナーで

クレーマージャパンの取り組み
 日本学連から盗撮・透過撮影の問題を聞いたクレーマージャパンの対応は早かった。繊維メーカーと協力して、透過撮影を防ぐ製品の開発にいち早く乗り出したのである。
 しかし、チーム・ユニフォームはメーカーとの契約になっているケースがほとんど。単独メーカーが開発しても、採用されにくい現実があった。そこで、インナーウエアで防ぐことを考えたのである。
 そのためには材質が問題となった。赤外線を通さない粒子を生地に特殊加工することで、透過撮影防止が可能となるが(下図参照)、肌触りがごわごわして着用感が良くなかった。直に肌に触れるウエアである。やわらかく、伸縮性がなければならない。試作品を何度も製作し、検討に検討を重ねた。その期間は1年以上。2007年5月の「ショットガードインナーシリーズ」発売まで約2年を要した。
 日本インカレの会期中は、第4コーナーのスタンド裏にブースを出し、商品展示と選手へのアピール活動を行なった(写真上)。原田康弘副社長(200 m&400 m元日本記録保持者)と青葉貴幸営業推進部部長が各大学を回り、盗撮と透過撮影対策を訴えた。「問題になっているよね」「女子選手に声をかけていかないといけない」という反応が多かったという。

選手の意識を高めることが重要
 指導者層の認識が高かったのに比べ、選手たちの反応はいまひとつ。前述のように、被害にあった選手や、その周囲の問題意識は高い。だが、高校を出て数年という学生女子選手はまだ、そこまで認識していないのだろう。インナー製品ということもあってか、ブースの商品を手に取る選手は多くなかった。
 日本学連がインカレ会場でキャンペーンを行うのは、そういった選手たちの問題意識を喚起する狙いもある。定時のグラウンドコンディション通告の際、キャンペーン中であることを場内にアナウンスした。同時に、電光スクリーンにも表示を出した。「私なんか、そんな対象じゃないですから」と話す選手も多いというが、その意識を改めてほしいのである。
 梶原女子委員長は、選手が現状を認識した上で、自己防衛対策の重要性を訴える。
「フィニッシュ後に寝ころんだり、腰を下ろしたときに無防備な姿勢をとらないことです。着替えも、撮影されてしまう場所は避けないといけません」
 組織としての課題も多い。日本インカレでは地区学連の役員にも巡回監視に加わってもらい、現状をしっかりと知ってもらった。各地区学連主催の試合でも、積極的に対策がとられていくようになるはずだ。
「カメラ機材の持ち込み制限はなかなかできませんが、水泳やスケートなど、実施している競技団体もあります。陸上でも父兄には撮影許可のIDを発行して、それ以外は認めない陸協もあると聞きました。陸上界全体としての取り組みも必要です」
日本学連女子委員長の梶原先生。手にしているのはフリーペーパーのP-damage PRESS。女性の人権侵害の代表例である盗撮・盗聴・ストーカーなどは、プライバシー・ダメージと呼ばれて社会問題になっている
 クレーマージャパンの「ショットガードインナーシリーズ」の製品化は、その活動の一環として高い評価を得ている。選手の不安が軽減されているのは確かである。前述の青葉部長の話を聞くと、透過撮影防止の取り組みを同社は、ビジネスというよりもスポーツメーカーの社会使命ととらえているようだ。
「他のメーカーもいずれは、ユニフォームなどに標準装備するようになる。選手が意識しないで身につけられるようになるかもしれません。その火付け役に“ショットガードインナーシリーズ”がなるのであれば、それは我々の行動に1つの価値があったということだと思います」

社会問題としてアピールし続けること
 前述のベテラン選手は被害にあった選手の気持ちを考えたら、法整備こそが緊急課題だという。
「ネット上の画像が、プライバシーの尊重ということで規制できないのなら、選手にとっても名誉や人権に関わる部分なんです。そういったところの法整備が進んで、選手の立場を強く言うことができる機関が必要だと思います。防ぐだけでなく、選手の名誉を取り戻す方法が確立されたら、もっと嬉しいですね」
 法律は社会の上部構造。実社会に合わせて変わっていくもので、現状とはどうしてもタイムラグが生じてしまう。選手たちがアピールし、社会問題として取り上げられ続けることが、社会を変えていくことにつながるはずだ。
 @で盗撮・透過撮影に対する具体的な措置は難しいと書いたが、明らかに不快感を覚える撮られ方をしたケースは、毅然とした態度で接していい。それは、人として当然のことだから。
 負けるな、女子選手たち!


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