敗北の中の収穫
その3★日本男子に見る“対外国選手”の意識★
エチオピアが“勝ちに来た”のは、男子のメンバーからも明らかだった。当初発表された1万m26分台のメゼグブ(シドニー五輪1万m銅メダル)こそ入れ替わったが、女子同様ゲブレマリアムにシヒーンと、世界ジュニア1万mの1・2位を送り込んできた。そして、世界クロカン2冠のベケレという、切り札まで。ゲブルセラシエの後継者とも言われる男だ。
そのベケレが2区ですごい走りを見せた。1区ではケニアに3秒差と食い下がられたが、ベケレがあっと言う間にS・マイナ(ケニア・トヨタ自動車)を置き去りにした。13分07秒は従来の記録を9秒縮める区間新。5kmの距離で区間2位に51秒差をつけたのだから驚異的である。
「1番で来たのでのびのび走れた。駅伝は初めてだが、つながりがあるから面白い。人の力を借りて走ることができる。13分00秒が目標タイムだったが、最後、スピードを上げることができなかった。今年は故障をしてトラックの記録を残せなかったが、来年は1万mで26分50秒台、5000mで12分50秒台を出したい」
エチオピアは1・2・3・5区と区間賞。佐藤敦之(中国電力)が4区で一矢を報いたが、“完全優勝”に近い内容だった。その結果、11年ぶりに大会記録を更新した。
日本は1区の山口洋司(NEC)こそ区間8位と出遅れたが、2区以降は区間2・2・1・2位と全員が区間2位以内。女子同様、力を出し切ったレースだった。最終区でケニアに追いつき見せ場を作り、区間順位だけでなく、レース内容も評価される。
そのケニア・チームは全員、日本の実業団チームに在籍する選手たち。ふだんのトラックや駅伝のレースぶりを見たら、ちょっと歯が立ちそうにないメンバーだった。
「ニューイヤー駅伝では3年連続1区で、外国選手相手に離されない走りをしてきた」(1l区・山口)
「サイモンは同じトヨタ自動車の選手。練習ではどうあがいても勝てないが、相手もどこかでヘマをするかもしれない。今日、最後まであきらめずに頑張ったら、勝つことができた」(2区・岩水)
「僕は駅伝ではいつも、対外国人の区間。日頃からそういう戦いをしているので、昨日オーダー表を見たときも、そんなにビックリしなかった」(3区・三代直樹)
「自分たちの世代は高校時代からケニア人留学生が相手。引っ張られて記録は出せたが、勝ちに対するこだわりが希薄だった。まず、そこから打破しないといけない。今後のレースもそういう苦手意識を乗り越えることを心がける」(4区・佐藤)
「力がすごいのはわかっていたが、同じ土俵に上がったからには、相手が誰であろうと負けるつもりはなかった。最後、離されたのは気持ちがまだ弱いということ。反省点です」(5区・油谷繁)
駅伝というチームの戦いになることで、こういった気迫がより発揮しやすくなる。個人の戦いになっても、対ケニア・エチオピア選手への気後れがなくなれば、今回の戦いは無駄ではなくなる。“意味のある3位”にできるかどうかは、今大会を経験した選手たちの、今後の頑張りいかんである。
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