敗北の中の収穫
その2★最強エチオピアと内容的には互角のレース★

 今回のエチオピアは、“勝ちに来た”顔ぶれだった。昨年、トラックの平均タイムで上回るメンバーを送り込んでも、日本に返り討ちにあった。今回は、昨年をはるかに上回る選手構成で臨んできたのである。
 バルセロナ&シドニー両五輪に昨年のエドモントン世界選手権と、1万mで金メダルを取っているツルを筆頭に、シドニー五輪5000m7位のキダネも来日。そして、意気込みを感じさせたのがデファーとデババ、今年7月の世界ジュニア5000mの1・2位を送り込んできたこと。ジュニアといっても、デババなど5000mのベストは日本記録を上回る。シニア大会の実績組だけでなく、伸び盛りの若手有望選手を混ぜることで、チームを活性化させてきた。
 記者発表の段階では14分56秒99だったが、その後一部選手の入れ替えがあり、エチオピアの5000m平均タイムは15分05秒23。日本は15分24秒99でルーマニアにも負けて3番目。ロシアとも大差ない状況だ。

 その日本チームが4区までエチオピアをリードし、最終的にも35秒差しかつけられなかった。1区はツルに孫迎傑(中国)という世界でもトップを争える顔ぶれだったが、日本の大越一恵は「プレッシャーはありませんでした。そういった選手と肩を並べることに意義がある、と考えました」と、まったく臆することなく食い下がった。
 2区の福士加代子は期待通りトップに立ち、3区の小鳥田貴子もエチオピアとの差を広げた。4区以降はさすがに力の差で逆転されたが、日本選手たちは3区までの流れを精一杯維持しようと頑張り、逆転されてからも粘り、最後まであきらめずに前を追った。
 今大会の日本は、一口で言うなら“駅伝をやりとげた”といっていい。そうでなければ、差はもっと広がっていたはずである。5000m平均で20秒差なら、42.195kmで2分40秒以上の差がつく計算となる。トラックのタイムが同レベルだったルーマニア、ロシアはまったく寄せ付けなかった。外国チームと比べ、日本の選手が駅伝をよく理解し、実践したからに他ならない。
「11連覇はできなかったが、内容的にはエチオピアと互角のレースができた」と、佐々木監督。勝つことはできなかったが、“駅伝”という競技の見本を、世界に示すことができた。この伝統がしっかり受け継がれていけば、相手が最強のエチオピアやケニアといえど、いつかはチャンスが巡ってくる。
※その3に続く


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