大会展望その2 区間エントリー決定
日本女子は前半で“先制攻撃”の布陣
孫1区、福士2区でアジア大会の再現はならず


 国際千葉駅伝の区間エントリーが、21日の監督会議後に発表された(参照)。日本女子は前半に大越一恵(ダイハツ)、福士加代子(ワコール)、小鳥田貴子(デオデオ)と並べ、前半でいいポジションをキープする戦略。エチオピアはウォルクがクマに変更され、5000mの平均タイムは15分05秒23と15分台に落ちたが、優勝候補筆頭であることに変わりはない。注目の女子長距離アジア大会2冠の孫迎傑(中国)は1区への出場になり、福士との直接対決、アジア大会の再現はならなかった。5000m世界選手権優勝のエゴロワ(ロシア)が2区で福士と対決することに。
日本チーム写真(左から大越、奥永、真鍋、小鳥田、高橋、福士)

「今日、試走をしてきました。平坦と聞いていましたが、若干、上っている感じです。(5km区間ということで)あんまり苦しまずに済むかもしれませんね」
 福士には孫の1区出場が決まる前に話を聞いたこともあり「孫さんはお疲れなんでしょうけど、それでも(2区だったら)15分を切ってくるでしょう。チームの足を引っ張っちゃいますから、別の方がいいですね」と、冗談交じりに話していた。とはいえ、現在の調子は悪くない。永山忠幸監督は「普通に走れば14分台では行けるでしょう」と、練習が順調に積めていることを明かした。
 日本は1区に、今季5000m・1万mで自己記録を大きく更新した大越一恵(ダイハツ)を起用。中国の孫迎傑、エチオピアのツルとのタイム差いかんで、2区・福士がトップに立つ可能性は十分ある。2区に福士を起用したことについて佐々木精一郎監督は「仮に1区で遅れても、2区で行くことができる。先制攻撃ですね。(5km区間に回せるのは)それだけメンバーが豊富だということです」と説明。
 要注意はロシア。1区に10km31分05秒のクリミナを起用してきたので、2区のエゴロワでトップに立つ力は十分……というよりも、順当なら2区でロシアがトップに立つ。だが、昨年のエゴロワは2区で17分03秒もかかって区間9位。今年も同じ事が起こる保証はないが、何が起きるかはわからない。

 3区以降の展開は本当に予想がつかない。その原因は、エチオピア・ロシアが額面通りの走りをするかわからないから。それに反して、日本チームにはプラスアルファが見込める。地元であることと、駅伝の走り方を知っているからだ。
 日本の4・5区は高橋教子(資生堂)、奥永美香(九電工)と、前半の3選手に比べるとやや経験の浅い選手たちを起用。4区の高橋が、いかに流れを生かす走りができるかが、ポイントとなりそうだ。アンカーには世界ジュニアやソウル・北京の国際駅伝を経験している真鍋裕子(四国電力)を据えた。若手期待の橋本歩(三井住友海上)は、足首の故障で補欠に。
 前半でいい流れに乗った日本が、後半もそれを維持できるのか。それとも、エチオピアの各選手が額面通りの力を発揮して独走するのか。現時点ではこの2チームが“本命と対抗”と言えるのだが、5000m平均タイムで日本を上回るロシア・ルーマニアが“2強”を上回らないとも限らない。

男子はエチオピア・ケニアが強力
日本は1区に“スペシャリスト”山口、アンカーに2年連続油谷

 男子はエチオピア・ケニアが2強。それに続くのが日本だろうが、2強の一角を崩すことは相当に難しそうだ。
 エチオピアは10km27分26秒のビルハヌが1区。2区に世界クロカン2冠、注目のベケレ(写真)を起用してきた。順当ならここでトップに立つだろう。3区のディンケサが3000m7分53秒7の記録しか判明していない選手。他国がつけいるとすれば、ここだろうか。4区・ゲブレナリアムは今年21歳、5区・シヒーンは今年で19歳の若手で、1万mがともに27分20秒台と日本記録を上回る。リードしていれば楽々逃げ切る布陣だし、リードされていても、多少の差なら逆転できる。
 エチオピアに勝つとしたらケニアだろう。日本の実業団在籍選手だけでチームを組んだが、それでも、この上なく強力だ。選手たちは大会前から連絡を取り合って区間配置を相談するなど、相当にやる気になっているようだ。
 1区はアラコのジュリアス・マイナ。中部実業団駅伝の3区で快走したばかり。2区のサイモン・マイナ(トヨタ自動車)に“マイナ・リレー”をし、3区は新人だが今季絶好調のカビル。4区のガチュウリ(愛知製鋼)と、ここまで全員が今季1万mで27分台を出している。そして5区が、メンバーの中で唯一、オリンピックにケニア代表として出場しているギタヒ(日清食品)という錚々たる顔ぶれ。

 日本は1区に“1区のスペシャリスト”、山口洋司(NEC)を起用した。2区・岩水嘉孝、3区・三代直樹と順大の後輩先輩のタスキリレーから、4区・佐藤敦之、5区・油谷繁の中国電力後輩・先輩コンビへとタスキをつないでいく。
「去年と同じアンカーですから、最低でも去年の(自分の)記録は上回りたい。今年はケニア・エチオピアが強いですけど、強いところほど倒し甲斐があります。タスキをもらうとき(エチオピア・ケニアが)前にいると思いますが、どこまでアンカーで対決できるか。確かに、トップ争いをギタヒとすることを想像したらきついものがあります。どこかから来るようなケニア人より、よっぽど駅伝を知っていますから。それでも、区間賞は狙っていきます。このメンバーで取れたら、ちょっとした自慢になりますから」
 アンカーの油谷(写真)のコメントが、今大会の日本が置かれている立場と、日本選手の意気込みを示していた。


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