マリンコース注目のランナーB
山口洋司(NEC)
1区のスペシャリストが求める“新しい強さ”
11月23日の国際千葉駅伝(特別協賛:ライフ)の出場選手が決まった。今回の日本代表には、いろいろなタイプの選手がいる。国際舞台を経験している選手もいれば、新人選手もいる。そして、再起のきっかけや殻を破るキッカケとしたい選手も。2002年の千葉マリンコース、注目の日本選手を紹介していく。
人呼んで“1区のスペシャリスト”。山口洋司は全日本実業団対抗駅伝の1区で、3年連続日本人トップ(うち1回は区間賞)を続けている。トラックでも27分57秒74と、日本を代表するレベルに到達した。それでいてなお、「自分に強さはない」と、言い切る。
「現時点の自分に速さはあっても、強さはないと思います。他人に付くレースなら結果を出しているんですが、1人で走っても結果を出せる力を身につけたい。国際千葉駅伝では新しい強さを見せられるように頑張ります」
1区やトラックは、全員が“ヨーイドン”で一斉にスタートを切る。他人が作るペースに合わせるのが得意な選手は、ついていけばエネルギーのロスを防ぐ走りができる。
「ある意味、無駄がないというか、楽をしている部分もあります。苦しんで強さを身につけないと、これから先、ワンランク上がることは難しくなる。いつかは、引っ張る展開も試してみたいんです」
1人で走ることには、苦手意識があったと言う山口。11月10日の東日本実業団駅伝では3区(12.6km)に出場、1位でタスキを受けて終始独走。本来、苦手とする状況でも、大物新人・徳本一善(日清食品)を抑え、区間賞を獲得した。
「8km地点からきつくなってしまいました。遅いと感じて踏ん張りましたが、上手く走れなかった。バテてしまって、リズムを刻めませんでしたね。長距離選手が走っている途中でバテるのは、好ましいことじゃないんです。それではいくら区間賞を取っても、レベルの違う選手と走ったら、簡単に負けてしまいます。国際千葉駅伝は、そういう意味でもシミュレーションになる、数少ないレースだと思っています」
入社5年目の27歳。国際千葉駅伝は初出場だが、日本チームの中では最年長だ。今回のエチオピア・ケニアのメンバーを見たら、10km区間を走って負けた場合、200 m、300 mと差を広げられる可能性すらある。それがテレビに映されたら、格好のいいものではない。だが、山口は長い距離(10km・12.195km)の区間を希望する選手がいなければ、そこを走るつもりでいる。強さを身につけるための、国際千葉駅伝出場なのだ。ひるんでいるときではない。
「1区に行け、と言われれば行く覚悟はありますが、どこの区間でも走ります。自分の課題を考えたら、タスキを受け取って渡す区間を走りたい。トップで受けたらそれを死守する、負けてきたら逆転する、そういう走りをしたいと思います」
“新しい強さ”、それは集団の中で速く走る能力でなく、1人で走っても最後まで持たせるスタミナである。それは、今後の山口にとっても重要。来年の世界選手権に1万mでの出場を目指しているが、そのためには「4月にA標準(27分49秒00)を切り、6月の選考会に勝ち、8月の本番を走りきるスタミナ」(山口)が要求される。千葉のマリンコースをどう走るかが、重要な意味を持ってくる。
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