橋本康子、村田史、野口英盛
千葉県選抜選手、それぞれの“思い”

 ナショナルチームが覇を競うなか、千葉県選抜チームはややもすると地味に見られがち。とはいえ、せっかくの檜舞台を、自分の競技生活のプラスになるよう活用しない手はない。千葉県選抜選手にも、それぞれ胸に秘めるものがある。

 その代表が、サミーの橋本康子(1区)と、村田史(3区)だろう。昨年12月の全日本実業団対抗女子駅伝後に、今年3月いっぱいでの休部が決定。森岡芳彦監督とともに受け入れ先を探し、今大会の協賛社でもあるサミーに移籍。千葉市を拠点に活動を再開した。4月に千葉に移ってはいたが、株主総会で承認されたのが6月で、7月の札幌国際ハーフマラソンがサミーとしての第一戦。その後、合宿先のボルダーで3レース、帰国して鴻巣の記録会、全日本実業団、そして国際千葉駅伝出場となった。
 日本生命がなくなる際、陸上競技をあきらめ、会社に残った選手も多かったという。村田も、人生の選択を迫られた。
「日本生命がなくなる時点で、競技を続けるかやめるか悩みました。個人的には、そこが一番苦しかったように思います。故障もあって練習が積み重ねられず、千葉に来てから戻していきましたが、札幌ハーフもそんなによくなくて…(24位 1時間13分23秒)。夏のボルダー合宿も体が順応できず、練習が3分の2しかこなせませんでした。帰国してから走れるようになり、全日本実業団が思ったよりいい成績で(8位・32分23秒66)、気持ち的には楽になりました。今はマラソン練習に入っていて、体調的には落ちていますが、明日はそのなかでどのくらい走れるか、です」
 橋本は昨年の全日本実業団対抗女子駅伝1区で区間賞。「就職浪人してもいい」と、森岡監督とともに競技を続けることは、何の迷いもなく決断した。札幌ハーフマラソンで12位(1時間11分55秒)、全日本実業団1万mでは32分04秒27の自己新で6位。傍目には頑張ったと映った全日本実業団の自己新も、優勝を目標にしていた橋本自身はまったく満足していない。彼女の意識の高さを物語る部分だ。
「1区の中で、自分は8番目の持ちタイムのようなんです。今、マラソンを目指していてスピード練習はそれほどやっていないのですが、強豪選手たちの中でいかに粘れるか、自分の走りができるかを試したい。自分としてはあまり記録とか、誰に勝つとかは考えていません」
 森岡監督は「昆明合宿(12日間)では40km1本、1日2本の30km、1日2本の32km変化走と走り込んで、スピード練習はやっていません。その中でどれだけ走れるか。それでも、31分台では走ってほしい。下りとコーナーが多いんですが、どちらも橋本が得意としている部分です」と、トラックの自己記録を上回るタイムを期待している。取材中、森岡監督の話に「普通の人に評価してもらうためにも」というコメントが出てきた。橋本がテレビに映るのは、全日本実業団対抗女子駅伝以来、ほぼ1年ぶり。サミーをアピールする、絶好の機会でもある。
 もっとも、橋本自身はそれほど入れ込んだ感じで臨んでいるわけではない。
「全日本実業団みたいに結果を出さなきゃ、地元でもあるし、と力むときより、力まないときの方が結果がいいんです」
 ということは、それなりの記録が期待できるかもしれない。

 男子では、千葉県選抜1区に野口英盛(富士通)が起用された。昨年までの野口の活躍は、今さら記すまでもないだろう。順大の長距離キャプテンとして、岩水嘉孝らとともに順大クインテットの一員として、学生長距離界で勇名を馳せてきた。特に、箱根駅伝のあとの3月、びわ湖マラソンで2時間11分20秒と好走したのが評価されている。5月には世界ハーフマラソンにも出場した。
 ところが、初の実業団駅伝となった11月10日の東日本実業団駅伝で大失態。3区で区間27位。不調の原因は不明。富士通Bチームでの出場だったことが、モチベーション低下につながったのかもしれないが、そうだとしたら好ましいことではない。野口としては来週の1万m記録会でタイムを狙っている。今回の千葉県選抜チームとしての出場は「気持ちの整理」が目的。モチベーションの上がりにくい立場で、いかに気持ちを高め、きっちり走れるか。意外な状況で、野口が試されようとしている。
 国際駅伝ではあるが、千葉県選抜選手からも、目を離してはいけない駅伝なのである。

千葉県選抜・積水化学の3選手。右から山口麻衣子、那須川瑞穂、吉田香織。左端は解説の増田明美さん


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